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俺のねえちゃん ねえちゃん、やっぱり、様子がおかしい。 家にいる時、みょーに元気がない気がするぞ!? なんでだ!? 俺も、ねえちゃんも、それぞれの入学式まで半月くらいある長い春休み。 俺は出かけることや、ダチを家に連れて来る事が多かったんだけど、ねえちゃんはほとんど出かけず、家にいる事が多い。 これって、引きこもりってやつ!? ヤバくないか!? さっすがに、心配になって、俺……雰囲気壊す能天気な両親もいない、ふたりきりの時にねえちゃんに声をかけてみた。 リビングのソファの上で膝をかかえ、ぼーっとした虚ろな眼差しで、テレビを見るともなく見詰めているねえちゃんに向けて。 「ねえちゃん、心配事あるんなら、俺に話してみたら少しはすっきりするかもよ? 恋愛の悩みなら、相談に乗ってやるし」 すると、ねえちゃん、すっごく、すっごく、遣る瀬無さそうに笑うんだ。 うっ……なんか、大人の女な雰囲気。 我が姉だけれど、妙に色っぽい気もする……。 「ん……」 瞳を細めて、じっと俺を見詰めてくる。 ううっ……我が姉なのに……見詰められると、俺、なんか、どきどきしてきちゃったよ。 でも、そんなの、絶対にねえちゃんに感づかれたくなくて、俺、精一杯平静を装って、頑張った。 だって……実の姉を意識するなんて、気まずいにもほどがあるだろ!? つか、性格から日常生活のアレコレから、身長体重に3サイズまで、何もかもを知り尽くして(普通の弟は、身長体重3サイズは知らないもん?)……いるつもりの実の姉にときめく自分に、自己嫌悪! 「あ、あのさ、もしかして、悩みの原因って、卒業式の日にあったりする?」 とにかく、ねえちゃんの口から何か聞き出さないと……じゃないと、ねえちゃんは、ずっと黙んまりを通しちゃいそうだ。 でもって、黙んまりの、その遣る瀬無い眼差しを受けつづけるのを、俺は拒否する! 俺の問いかけは、結構核心をついていたらしく、ねえちゃんは、くすっと笑って俯いた。 「うん……そうかも……」 静かに、切り出した。 「葉月に、何か言われた?」 原因として一番有り得る事態かも。 いや……あの葉月が、いくらふられたからって、ねえちゃんを傷つけるような事を口にしたなんて思えないし思いたくないんだけど……葉月自身が意識してなくても、傷つけちゃう時もあるかもしれないし……。 ねえちゃん、少し間を置いたあと、小さく息を吐いて、観念したように口を開いた。 「葉月くんは、関係ないの……ううん、葉月くんに告白されて……それで、私が気付いちゃっただけで……本当の気持ちに……」 俯いて、自分の膝に顔を埋めている。 のろのろと言葉をつむぐねえちゃんのペースを崩さないように、俺は、その場に座り込んで、ねえちゃんの告白を聞く事にした。 「本当の、気持ち?」 言葉を続けやすいように、そう促してやる。 「うん……私、好きな人がいたんだ、って、葉月くんに告白された時、気付いたの。でも、それは葉月くんじゃなくて……自覚した時、とってもショックで……」 ああ、なるほど。 葉月に告白されたけど、本当は別に好きな奴がいたんだ? でも、それって、ダレ? 姫条か? 鈴鹿か? 三原?? 守村?? 日比谷ぁ?? ショックを受ける、つー事は、多分、その相手が既に他の女のものになっていた、とかでか? 「……だって、私が自覚した好きな人って……」 すうっとねえちゃんが大きく息を吸い込む気配がした。 そして、顔を上げる。 何々? 好きな奴を告白するのか? 俺を見詰めてくるねえちゃん……俺は、できるだけ、無責任な好奇心を顔に表さないようにして、ねえちゃんを見詰め返した。 ねえちゃん、俺の眼差しに苦笑を返して、今度は、何もない自分の目の前に視線を移した。 「好きな人って……すっごく、無謀な相手、だったから……」 あら、拍子抜け。 誰か、までは言わないのか。往生際の悪いねえちゃんだな。 「無謀な相手……って?」 氷室か? 天之橋のおっちゃん? まさか、花椿とか!?(それは、ちょっと嫌だ) メールの君とか?(でも、あの"ちはる"ちゃんは女の子だったんでは?) うう〜ん……ワカンナイ……。 つか、氷室にしても天之橋のおっちゃんにしても、無謀というほどではない気もするし……そこまでねえちゃんと親しくなかった気もする。 「うん……無謀だから……絶対、告れないし……だから……諦めるの……そう、しないといけないの……なのに……」 ふうっ、と、今度は深刻なため息を吐き出して、また顔を膝にうずめてしまった。 すっごい、深刻……。 なるほど……ねえちゃんが悩んでいたわけ、分かった。 けど……無謀な相手、か。……妻子がいるとか、同性とか、そういうんじゃない限り、大丈夫だと思うんだけどな、俺。年齢差なんて、関係ないと思うし……。 俺、口を開いて、そう言った。 そしたら、ねえちゃん、目を丸くして俺をじっと見た後……苦笑に唇をゆがめて、また膝に顔を埋めて……くぐもった声を出した。 「ん……そうだね……年齢差……だけなら、いいんだけど、ね……」 年齢差?? あるのか。 「氷室か天之橋のおっちゃん……??」 反射的にそう突っ込んだら、ねえちゃん、くすくす笑った。 あ、違うのか。 つか、なんか、名前まで告白する気はないみたいだな……。 もしかしたら、俺の知らない相手、かもしれないしな……うう〜ん……。 首をかしげる俺に、今度はねえちゃんから話し掛けてきた。 「ね、尽は、好きな人、いるの?」 あ、今度は俺の告白ですか? まぁ、落ち込むねえちゃんの相手になってやるか。 「うう〜ん……好きなやつ……今はいないよ」 「あれだけ、彼女いるのに?」 「うん。だって、ひとりだけを贔屓するわけにいかないだろ?」 俺の言葉に、ねえちゃんはくすっと笑う。 「尽らしね。でも、その中で"特別"な子とか、いるでしょう?」 「いないよ」 断言。 そりゃ、みんなカワイイ子たちだけど……特別に好きとかそういうのは……。つか、どっちかつーと、俺の好みはむしろ年上のおねぇさんかも……いや、俺、まだ年上のおねぇさんに相手にされるくらいのイイ男になっていないだろうから、今はまだそれって無謀、なんだけどな。 けどさ、望みは高く持った方がいいよ、うん。そうする事で、自分自身が高まっていくんだ、きっと。 「いないんだ……そか……」 ねえちゃん、ほうっとため息。 なんで? 「ねえ……尽?」 え? え?? ねえちゃん……。 顔を上げて俺をじっと見る。 けど、なんか……その……その眼差し…………。 ………………………………………………。 ………………………………………………。 うわああっ! なんで、俺、ねえちゃん相手にどきどきしてんだよぉ!! かっこ悪ぃ!! 身内を意識するなんて……俺、どうしちゃったんだ!? けど、けどけど、ねえちゃん、すっげぇ色っぽいんだよ。 今まで、こんなねえちゃん見たことない。 これが、恋に悩む女の色気ってやつ!? うわぁ、マズイなぁ……ねえちゃん、いつの間にこんなイイ女になってるんだ……。 俺、さすがに居たたまれなくて、さりげなさを装って、視線をそらす……時計に向けて。 「あ〜……もうこんな時間……見たいテレビ番組あるんだけど、チャンネル変えていい?」 もしかして、俺、顔赤くなってるか? ううっ……もう、ちょー格好悪いっ! ねえちゃん、気付いているかな? でも……なんか……ねえちゃんに視線を向けられない。 だって、俺がねえちゃんの事意識してるの気付かれたら、すっげぇきまり悪いし。 ううっ……イイ男への道のりは、まだ遠い、かなぁ? テレビつけて、正直あんまり見たくもない番組に視線を向ける……まだ、ねえちゃんの方を見る勇気は、ない……。 けど……テレビ画面が暗転した時に、そこに映るねえちゃんの、顔。 ねえちゃん、テレビ画面越しに俺を、見てる……また、あの眼差し、だ。 ううっ……なんだってんだよぉ……。 「尽?」 「っ! あ、うっ……な、なに!?」 声、裏返ってたぞ、俺。 何やってんだ、俺っ! 「私、その人の事、諦められると、思う?」 なっ、なんでそういう返答に困るムズカシイ事聞いてくる!? しかも、俺、その相手の事、何にも知らないのに〜! 変に期待持たせてもなんだし、かと言って、きっぱりダメだとも言えるわきゃないし……。 ううっ……。 俺、言葉に詰まる。 けど、俺の沈黙の間に、ねえちゃんは何の言葉も続けない。ひたすら、俺の言葉を待っている。 答えないわけにはいかない、よな? 「……ねえちゃんが諦めたいなら、諦める努力をするのもいいかもしれない……けど……もし、諦めたくないなら、ぶつかってみるのも、手かもしれないし……。その……俺さ、相手がどんな奴かさっぱり分からないけど……でも、ねえちゃんみたいないイイ女に告られて、嫌な気持ちは絶対しないと思うから……」 答え、失敗してない、よな? 恐る恐る、ねえちゃんを振り向いた。 ねえちゃんは……小首をかしげて、微笑んでいた。少し嬉しそうに。 うっ……俺の言葉、成功で、いいんだよ、な? 「本当に、そう、思う?」 俺の科白のどの部分を指して言っているんだろう。 けど……さっき言った事は、全部俺の本音だから……。 「相手に、もし、他に好きな奴いたり、付き合っている奴いて……ねえちゃんの想いを断るとしても、さ……ねえちゃんの気持ちは嬉しいと思う。俺だって、もし、ねえちゃんみたいな人に告られたら、年齢とか関係なしに嬉しい……」 ……って、何言ってるんだ、俺!? 馬鹿じゃないのか!? なんで、自分の事引き合いにだすんだ、俺っ!! うわぁ、もう、今日の俺、最悪……ペース乱されまくりじゃん。 自分自身に突っ込みいれながら、顔が赤くなっていくのを感じた。 ねえちゃんの反応が怖いな……。顔、マトモに見られないよ! 「ふふ……」 ねえちゃんの、小さな笑い声にドキリとする。 慌てて振り返って……とても嬉しそうに笑うねえちゃんを、見た。 「すごく、嬉しいよ、尽。私……これで、決心がついたかも。ありがとう」 久しぶりに見るかもしれない、ねえちゃんの本気の笑顔だ。 俺まで、なんか、嬉しくなった。 自覚してるってゆーか、さっきも散々自分で突っ込みいれてたんだけど……俺って、やっぱり、ねえちゃんに弱い、よなぁ……。昔からねえちゃんっ子だったかもしれないけど……もう、この春には中学生なのに、これでいいのかなぁ……。 シスコンな自分を、ちょっと、反省。 でも……まぁ……ねえちゃんのこの笑顔の為なら……それも、いいかぁ……。 ――あ、でも、ねえちゃん、一体なんの決心つけたんだろう? 俺が、それに気付いてねえちゃんに聞こうとしたとき、もう、ねえちゃんはリビングから出て行ってしまっていて……俺は、その答えを聞けなかった。 で、俺は、その時に、ねえちゃんになんで即行突っ込み入れとかなかった、ってそこから数時間後に深く後悔する事になった……。 俺の受難は、その日を境に始まった。 いや、受難か? これって、受難なのか!? 見る人が見たら、すっげぇ羨ましがられるカモ……いや、どうなんだろう? ……どーなんだろう……(悩)。 つづく
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<言い訳とか>
ねえちゃんが思い悩む原因は、無謀な相手への想い……。
無謀な相手って誰!? ……バレバレでしょうか?(^^;)
ねえちゃんを意識しちゃう初々しい尽…
たまにはこんなかわいー尽も良いですねぇ。
まだ小学生ですものね。
つか、本人自覚する以上にかなり重度のシスコンですねぇ。
いや、確かにゲーム中の尽って、「普通の弟」じゃ有り得ないくらいに
すごいシスコンっぷりを発揮していると思うのですが…。
次回、決心をしたねえちゃんが……。
尽、受難の日々の始まり?