俺のねえちゃん

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 その日、夜、母親が帰ってきて、父親も帰ってきて、食事が終わって……ごく普通の家庭の一家団欒。
 ねえちゃんも、以前通りの明るい笑顔を見せてくれる。

 うん、幸せだなぁ、なんて、噛み締めた俺は、ほくほくした気分のまま、その日一日の汚れと疲れを落とすべく風呂に入っていたんだけどぉ……。



「つ、く、し?」

 風呂場、すりガラスの向こうからねえちゃんの声。

「何?」

 何気なく返事する俺に、弾んだねえちゃんの声が響いて……。

「背中、流してあげるね♪」

 ……って、ちょっと……!?

 俺、返答に困った。
 いや、もう、一緒に風呂に入っていたのは、5年も前の話。
 この年齢でねえちゃんと一緒に風呂に入るなんて……絶対、ご遠慮申し上げるっ!!

「いい、いいよっ! いいから、入ってこないでよっ!!」

 焦りながら言う俺を気にすることなく、ねえちゃんは……。

 うわぁぁ!?

 扉が開いて、あわあわ慌てふためく俺にお構いなく、風呂場に入ってきた。

「一緒にお風呂入るの、久しぶり〜」

 なんて、すっげぇうきうきと…………………。

 いや、その……身体にバスタオルは巻いていたんだけどさ……俺も、さすがに、慌てて隠す場所は隠したけどさ……。

 いや、でも、バスタオルの下は、勿論裸なわけだろ!?
 つか、バスタオルから延びるすらりとした四肢や、その肌の質感や……かすかに覗く胸の膨らみ……その谷間っ!
 完全に女性の体……。

 いくら、血の繋がった姉だとはいえ、それは、若い俺には刺激的すぎるってぇぇ!!

「ねえちゃん!?」

 ああ、また、声が裏返っちゃっている。
 情けない、今日の俺。

 それにしても、ねえちゃん、一体どういうつもり!?
 ひたすら慌てまくる俺に構う事なく、にこにこ笑顔のねえちゃんは、にこにこ笑顔のまま俺の背中に近づいてきて。

「うふふ……尽、随分逞しくなっちゃったね。そっか、もうすぐ中学生だもんね。うん、なんだか、尽がどんどん成長するの、とっても嬉しいな、私」

 ひたすら嬉しそうに言いながら、硬直する俺の背中を洗い始めてくれちゃうんだけど……それだけならいいんだけど……。

「うふっ。あ、こっちも……成長してるカナ?」


 うわあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?


 隠すところを隠していたタオルを、思いっきり捲り上げてくれて……見られた…………。

 見られたぁ……。

 ねえちゃんの素肌見て、ちょっと元気になっちゃってるのも、完全に、見られた……。

「ばっ、ばかっ!」

 慌てて、タオルを取り返して隠しはしたけど……ううううっ、完全に見られたよぉ……。

「ねえちゃん、何考えてるんだよ!?」

 怒り、というより、羞恥に顔を真っ赤にして怒鳴ったら、ねちゃんは屈託ないにっこり笑顔で、オソロシイ事を言い出し始めた。

「私ね、ふっ切ったの。あんたの言葉のおかげで。だから、ね……もう、諦めない」

 ふっ切った? 諦めない?
 多分、今日の俺との会話のことだろう。
 けど、なんで、それとこれが関係あるんだ!?

「あんたも、言ってくれたよ、ね? 私みたいな人に告られたら、嬉しいって……。だから、ね、告白、します」 

 嫌な予感。

 とっても、嫌な予感。

 いや、悪寒といってもいいものが、俺の背中を駆け抜けていった。


「私、あんたの事が好き。弟とか、そういうんじゃなくて……男の子として、好きなの」



 …………っ!?



 うわあああっ!!!!?

 俺、瞬間フリージング。

「葉月くんに告白された時に、ね、私、あんたの顔が浮かんで、頭から離れなかった。尽が、好きだ、って実感しちゃったの。しばらく、本当に悩んでたたのよ? もお、どうしよーか、って。諦めなきゃ、って。でも、ふふっ。あんたの言葉のおかげで、ふっ切れたの。私、諦めないっ! 尽に今、特別に好きな人がいないっていうのなら、でもって、年齢差を気にしないっていうのなら……私、絶対、尽を振り向かせてみせるもんっ! それに、私、別に尽の好みの範疇から離れてないのよね〜? うふふふ……」

 って……って……。

 年齢差とかそういうのは気にしないけど、けどぉ、もっと、気にしなきゃらならん事、あるだろぉ!?
 ねえちゃんっ!!!!

「大丈夫、大丈夫♪ 父さんたちを心労で倒れさせるわけにはいかないから、ふたりの前ではちゃんと姉弟でいるもん」

 そういう問題でもないって!!!

「なに? 尽、私の気持ち、めーわく?」

 …………………………。

 …………ねえちゃん、ズルイっ!
 ここで、迷惑だなんて、言えないって!!

 俺が、ひとりで困惑して、わたわたしていると、ねえちゃん、にっこり、にっこぉりと、本当に幸せそうに笑う。

「尽が、ね、もうちょっと大人になるまで、私、ちゃんと待ってるから……だから、ね、尽も、私の事……ねえちゃんじゃなく、好きになって、ね?」

 言いながら、硬直する俺の背中を洗うのを再開しつつ……。

「あ、あれ? やだ……」

 お約束……………ねえちゃんの体に巻かれたバスタオルがはらりと……。

「………っ!!!?」

 …………………………。

 …………………………。

 まじ、鼻血出ました。
 俺……一体……。

「えっ!? あ、尽、大丈夫!? のぼせちゃった!?」

 のぼせたとか、そーゆうんじゃなくてさぁ……。
 俺、どーすりゃいいんだよぉぉぉ!!!?

「尽? 尽ぃ? どうしたの? 大丈夫!?」

 柔らかい胸の感触に抱きしめられて、俺……本気でのぼせる寸前っ!!
 頭がぐるぐるで、身体もぐるぐるで……。
 俺、夢見てるわけじゃない、よな!?
 けど……身体に当たるねえちゃんの柔らかい胸や素肌の感触はホンモノで……。

「ねえちゃん……」

 唸るように呟く俺。

「なぁに?」

 かわいい声で応えてくれちゃうねえちゃん。

「頼むから、出てってくれよぉ〜!!」




 結局……風呂から出てくのを盛大にごねたねえちゃんに、背中だけ洗ってもらう、ってトコで妥協してもらって、背中を洗い流してもらった後、まだ何か言いたげなねえちゃんをなんとか風呂場から追い出すのに成功はしたんだけど……ねえちゃんの気持ちを断る手立てが見付からず……。

 だって、いっくら俺が「俺たち、姉弟だよ、な?」って、繰り返して確認しても「そんなの、今更言われなくても分かってわよぉ」って、けらけら笑われるだけで……暖簾に腕押しって言葉、あったよな? いや、糠に釘、って言葉もあったかと思うけど……そんな感じで、俺だけが疲れていって……脱力して、それ以上言う言葉が見付からなかった。

 で……俺の受難は、その日を境に始まったのだった……あああっ。
 ねえちゃんに、押されて、押されて、押されまくって…………俺の平穏な日々よ、カムバーック……ッ!
 

 その後、俺とねえちゃんがどーなったかは……機会があれば、また……はあぅ……。





おわり



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<言い訳とか>

と、いうわけで。

尽主のお話って、どうしても、尽から姉への片恋から始まる、
ってイメージがあるんで、
たまにはねえちゃんから尽への片恋もあってもいーんじゃないかと思いまして。

書きたかったの〜、このシュチュエーション。
ただ、どーしてもコメディに寄っちゃいましたが(^^;)。
ねえちゃん、ヘン!!

でも、尽もまんざらでもなさそうよね。
ねえちゃんの事、意識しまくっているし。

続きは……できれば書きたいです。
……裏話として(苦笑)。
相変わらず、お約束はいたしかねますが(^^;;)。

つか、尽の年齢低すぎだよねぇ……マズイかなぁ。あはは。

R-13くらいの内容なら、表に置くんだけど……指の滑り具合(^^;)