猫少年Z

XV.初めての・・・





月のない夜、猫は少年に変わる。

愛しい少女を抱きしめる為に・・・…。

(つーか、今回間男です、はい)




今夜こそ、絶対、ぜーったい……!!


こんな鈍くさい女、いつまでたっても埒があかねぇ!

アンジェリークには、事後承諾って事で……ヤってやるっ!!!





 レースのカーテンごしに、星のきらめきがさし込むだけの、薄暗い寝室。

 そう、居心地いい自室で、安らかな眠りに落ちたはずのアンジェリークだったのだが……。

 夢を、見ていた。

 そう、夢。

 いつか、ゼフェルにつけられた、首筋の痣が燃える様に熱くなって……そこに、あの時のままに、ゼフェルの濡れた唇の感触を感じた。

 ゼフェルが、また、己の烙印を残そうとしているのだ。

 そう思った。

 抵抗する事もなく……素直に、それを受ける自分がいた。

 ――アンジェリーク……。

 熱い吐息と共に、少し掠れたような声で、何度も耳元で囁かれて……不思議と体中が熱病にかかったように熱を帯びた。

 肌をなぞるゼフェルの手が、その熱を掻き回して……痺れるような感触の波を、全身に広げた。

 そして、自覚もしないままに、身体をくねらせて、吐き出す息に甘い喘ぎを混ぜていた。

 それは、夢。

 そう、夢。

 そのはず……だった、けれど……。

「……?」

 アンジェリークの意識は、ゆっくりと現に戻される。

「………………?」

 ―――なんだろう? 身体が……?

 身体が、妙なのだ。

 なにか……寒いし、でも、妙に熱いような、気もする?

 そう、熱にでもうかされている時みたいに、自分の息遣いが妙に荒いのを感じた。

「……っ、あっ!?」

 意識が現に引き戻されるにつれ、身体の感覚も戻ってきて……。

 そしたら……。

「……っ……あああっ! いっ、いた……!」

 痛みが、襲った。

 びくん、と身体を仰け反らせ、アンジェリークは目を見開いた。

 そして……はだけられた自分の胸と、脚の間にいる、人間姿のゼフェルを見た。

「……!! な、ななな、何、何をしてるの!? …………っ、きゃぁん、痛い、痛ぁい! 何を………あああ、動かないでぇ!」

 何をされているのか………漠然と、分かった。

 分かって、アンジェリークは顔の色を青と赤とにめまぐるしく変化させた。

「やめ……やめてっ! やあっ、やだあっ!!」

 そして、アンジェリークは、痛みに顔をしかめたまま身体を起こすと、ゼフェルを思いきり突き飛ばして、痛みから開放された。

「…………っ、てぇ……。おめー、何すんだよ!」

「あなたこそっ! 人が寝ている間に、何をしてるのっ!?」

 ネグリジェをかきよせて、はだけられて顕になった胸を覆い隠した。

 アンジェリークに突き飛ばされたゼフェルは、ベットから転げ落ちて頭を打ったらしく、顔をしかめて頭を抱えていた。

 やっぱり、全裸なゼフェルに気づいたアンジェリークは、とっさに枕を投げつけ、顔を逸らした。

「いつもおめーがいい所で抵抗するからだろーがっ! オレだって、大概我慢の限界なんだよ!」

 とりあえず、投げつけられた枕で、隠すべき部分を隠して、アンジェリークに答える。

「なっ、な、なっ、なっ……何っ!?」

 動揺しまくっている。

「以前も、言ったろ? おめーにオレのガキを孕んでもらわなきゃ、オレは人間に戻れねぇって。おめーさ、オレが人間に戻れるなら、どんな手助けでもしてくれんだろ?」

 一瞬、凍りつく空気。

「何、何よ、何よ、それっ!?」

「おめー、確かに、言ったぜ? 嘘、ついてたのか?」

「じゃ、なくて……! 子供を……孕む!? それって……私が……妊……!!!?」

「オレ、言ったろ? つーか、言ったぜ!」

 自分で呟いて、事の真相にやっと気付くアンジェリーク。

 そういや、いつか、ゼフェルがコウノトリやらキャベツ畑やら……交尾やら、と、言っていたような……いなかったような……。

 それって、もしかして……!?

 と、思い至ったのだろう。

 がっ、自分は了承していないし………よりによって、こんなどさくさにまぎれて………。

 「おめぇも、協力する、ってその前に言っているしな! ……女に二言は言わせねぇぜ。さぁ、自分の言葉に責任を……っ!」

 言い終わる前に、今度は、枕もとの目覚し時計が飛んできて、ゼフェルの額を直撃した!

「いっ、いてー!! てめー! ん、だよ! こんなもん、投げんな! へたすりゃ、大怪我だぜ! ちょっと、おい、オレの額、ぜってー青痣になってんぞ……。まじで、いてぇ……」

「そんなの……! そんなのっ! ……っ、つっ」

 キッとばかりにゼフェルを振り向いたアンジェリークの緑の瞳には、大量の涙が満たされていて、彼女が表情を崩したとたん、大粒の涙となって頬を滴り落ちた。

「うっ……わああああああん! ゼフェルの、ゼフェルのばかぁ!」

 で、慌てるのはゼフェルである。

「お、おい! ちょっと、コラ! なんで、泣く!?」

 慌てふためいて、ベットによじ登って、アンジェリークに近づいた。

 べっドに突っ伏していたアンジェリークは、嗚咽交じりに言葉を吐き出す。

「だって……だって………ゼフェルってば、勝手に、私が寝てる間に、私の……初めての、私の………」

「初めてって………まだ、だぜ?」

「………うそっ! だって、あんなに痛かったのにっ!」

 顔を上げて、しれっとしているゼフェルを見て、視界の隅に元気なままのゼフェルのナニを認めて……再び、ゼフェルを突き飛ばした。

「ばか、ばか、ばかぁ!!」

 そして、再びベットから転げ落ちるゼフェル。頭から激突は避けられたようだった……けれど……。

「ゼフェルの、おお馬鹿者ぉーー!!」

 今度はアンジェリークのお友達、テディベアのくまちゃんが飛来した。それを顔前で捉えて得意げに笑おうとしたゼフェルの顔面に、第二段、何故か国語辞典が飛んできて、顎を直撃した。

「………おめぇ……」

 もしかして、自分の方がかなり、酷い目にあっているのではないかと、思うゼフェルであった。(二度もベットから突き落とされた上、目覚し時計が額にぶつけられるわ、国語辞典が顎を直撃するわ……………何より、治まりきらない熱情をもてあましているのが、辛い)

 真っ赤になった顎をさすりながら、ゼフェルは体勢を立て直して、再びベットに突っ伏して泣きじゃくるアンジェリークを見て、息をついた。

「……あのなぁ、アンジェリーク…………」

「ゼフェルのばか!」

 釈明をしようとしたゼフェルの声を打ち消すアンジェリーク。

「だからな……」

「ゼフェルなんか、嫌い!」

 なかなか、ゼフェルの言葉を耳に入れようとはしてくれない。

「おめー、いい加減、オレの話を……」

「ゼフェルの、変態!」

「…………………」

 さすがに、変態とまで言われては……。

「おお、どうせ、オレは変態だぜ」

 居直るしかなかったようだ。

「そりゃ、オレは、猫人間で、変態だがな……あンな、おめー、そんなにっ、オレが嫌いか?」

 アンジェリークに突き飛ばされないように、今度はちゃんといまだ元気さを失わない己を布団で隠し、アンジェリークの傍ににじりよった。

「………まぁ、寝込み襲うようなマネをして、悪かったよ………でもなぁ、オレは、その…………おめーの事が、さ………………」

 言いよどむ。

 アンジェリークは、さっきからずっと同じ姿勢のまま、ゼフェルの言葉を聞いている。

 彼の、言葉を待つように……いつか、お風呂場で熱く囁かれて、彼女を混乱させたあの、言葉を。

「…………………あの、なぁ……だから、その……初めて、会った時から、おめーだから、オレは……………」

 さらに、言いよどむ。

 行動には移れても、言葉で表現するのが苦手らしい。

 なんだか、根本的に間違っている。

 けれど、ゼフェルだって、勝算のない賭けはしない。

 アンジェリークの彼女自身未認識の想いを、感じては、いるから行動に移ったのだ。

「…………………おめーだってさ、その……」

「…………猫の……」

 突っ伏したまま、アンジェリークがぼそりと言う。

 煮え切らないゼフェルに痺れを切らしたように。

「アンジェ?」

「猫の、ゼフェルは……大好きだよ……」

『猫の』っていうことは、『人間の』ゼフェルはどうなのだろうか。

 と、思ってゼフェルは耳をそばだてるが、続きはなかった。代わりに。

「………………してない?」

「あ?」

「本当に、まだ…………してないの?」

 何をか……ゼフェルは、こくこく頷いた。

「お、おう。まだ、してないぜ。だから、おめーは、まだ、ちゃんと、処女だろ?」

 はっきり言い過ぎである。

 おかげで、今度は、突き飛ばされはしなかったものの、顔面に勢い良くクッションを押し付けられた。

「でも………その……痛かったん、だけど………………」

 やっと顔を上げたアンジェリークは、真っ赤な顔のままゼフェルを見上げた。

「ああ……そりゃ、頭は入ってたからな」

「………………え?」

「先っちょだけは入ったからな」

「…………は?」

「でも、あんくれーじゃ、膜は破れねーみてーだよな」

 いいながら、笑うゼフェルの言葉を理解できずに数秒―――――理解できて、瞬間。

 ゼフェルの頬にビンタが炸裂した。

「やっぱり、ゼフェルなんて、変態よっ!!」

「ってぇ……………。おめー……あんなっ! 男があそこで留まれるってな、かなり忍耐力が必要なんだぜ!? 寝てる間は、あんなかわいい声で鳴いてたくせによ、起きたおめーときたら……」

 今度は、往復ビンタだった。

「寝ている間に、女の子襲うなんて、最低だわっっ!」

「しかたねーだろ! そうでもしなきゃ、おめーは、ガードが堅すぎんだよ!」

「この年齢で、子供なんて産めないわよっ! ゼフェルが常識なしなんだわっ!」

「じゃ、オレに、あと何十年も我慢しろってのか!?」

「何十年なんて、言ってないじゃない! 今は、私はまだ高校生なのよ!?」

「じゃあ、おめーが卒業したら、いいのか?」

「そういう問題じゃないでしょ!? そもそも、子供を作るって事は、結婚して、夫婦になって……」

「だーっ、もう! だからおめーはかてーって、言うんだよ! ん、なの、今時マトモに考えている奴ぁいねーぞ!?」

「うるさいわね! 私の夢なのよ……!」

 ふたりの一見激しく、実は非常に低レベルな言い争いはしばらく続くかのように思われたが……。

「……しっ……」

 ふいに、ゼフェルがアンジェリークを制した。

「……え?」

 次の言葉を続けようとしてたアンジェリークは、気勢を削がれて、口を閉ざした。

「誰か、近寄ってくんぞ?」

 確かに、ふたりが押し黙って静寂がきた途端、きしむ廊下の音がした。

 そして、その音は部屋の前で止まって……。

 トントントン

 ドアがノックされる。

「アンジェリーク? どうしたの? 開けますよ?」

 母親の、声だった。

 そりゃ、そうだろう。

 アレだけ派手に言い争いはするわ、物をぶつけるわの物音に、いくら(超が2、3コつくくらい)鈍くさい両親でも気づかないはずがない。

 が、そう落ち着いて判断を下している場合ではない。

「ゼフェル! ゼフェル! 早く、早く、猫に……!」

「―――お、おい、慌てさせんなよ!」

 あたふたして、手首に巻き付いている首輪を取るのにさえ戸惑ってしまう。

「アンジェリーク?」

 ドアの向こうから父親の声がして、遂には、ドアノブを回す音が………ゼフェル、ピンチ!

 アンジェリークは、とっさにゼフェルを突き飛ばしてベットから落とすと、彼に抗議する間も与えず、その上に布団をかぶせた。

 ゼフェルを突き落としたさい、ぐわっ、という、蛙を潰した時の声のようなものが聞こえたが、アンジェリークは一切関知しない。

「パ……パパ、ママ……………」

 ドアが開いて、ひどく心配気な両親が顔を覗かせた。

「アンジェリーク? あなたの部屋が、ひどく騒がしかったんで、様子を見に来たんですが……」

 父親が、部屋の中を見まわしながら言うのに、アンジェリークは引きつった笑いを見せた。

「どうしたの? アンジェリーク?」

 布団がベットの下に落ちているのを見つけた母親が、訝しげにそちらを見つめながら言う。

 さて、どう返事をしたものか………アンジェリークもピンチ。

 だが、さすがに女の子は強かである。

「あ、あのぉ……その、ゼ、ゼフェルが………………そう、ゼフェルが、急にじゃれついてきて…………」

 冷や汗を浮かべながら、作り笑い。

「そうなの? じゃ、ゼフェルは……その布団の下かしら?」

 母親は、ほっとした表情をして、アンジェリークの部屋の中に足を踏み入れ、布団に手を、かける……。

「……………!!!」

 アンジェリークは、真っ青になった。

 こんな夜に、少年が部屋にいる所を……しかも、全裸の少年を見られた日にゃ、どんな誤解をされるか分かったものじゃない。

 娘に甘い父親なんぞ、きっと、ぶっ倒れて熱を出すだろうし、母親はにっこり笑って説教を始めるに違いない。

 少なくとも、娘が女になった記念にと、赤飯を炊いてくれるくらいの気前良さは持ち合わせていない。

 アンジェリーク、人生最大のピンチ…………かも。

 目を閉じ、手を組み、ただ祈るアンジェリークの耳に、母親ののんびりした声が届く。

「…………あらあら」

 めくられた布団の下から、現れたのは……猫のゼフェルだった。

 どうやら、首輪装着に間に合ったようだ。

 アア〜ン

 一声鳴いて、ゼフェルは、ぴょんとベッドの上に飛び乗った。

 ほうううっ……。

 深く溜息をつくアンジェリーク。

「ねえ、アンジェリーク、それじゃ、今晩はこの子、私達が預かりましょうか?」

 にっこり、非常に嬉しそうに母親は笑うのだが……。

 ―――結局、母親もゼフェルに甘いのである。

 が、当のゼフェルは、てくてくベットの上を軽い身のこなしで歩いて、アンジェリークの体の陰に隠れるような位置に座り込んだ。

「あら? ゼフェル??」

 非常に残念そうな母親。

 そして、苦笑したアンジェリーク。

「騒がしくしてごめんね、パパ、ママ。大丈夫よ、ゼフェルももう落ち着いたと思うから、ここに置いとくね」

 アンジェリークの言葉に、ちょっと拗ねたような顔をした母親と大あくびをした父親は自分たちの寝室に帰ったいった。

 で……それを笑顔で見送ったアンジェリークは………。

 ゼフェルの頭を軽く小突いた。

「ゼフェルの、ばか」

 対するゼフェルは、据わったよな目でアンジェリークを睨み上げた。

 尻尾がぱたぱたと左右に動いている。

「もう、二度とあんな事、しないでよね! でないと、今度こそ、私の部屋に出入り禁止なんだから!」

 言いながら、手はゼフェルの頭を優しく撫ぜている。

 柔らかな猫の毛の感触が、アンジェリークは大好きだった。

 ゼフェルは、ふてくされたように彼女に背を向けると、そのままそこで、丸くなった。

「今晩は、もう、許してあげるけどね……」

 あくびを漏らして、布団を元の位置まで引き上げると、ふたりは……いや、ひとりと一匹は、再び眠りにつこうとする。

「……あら? ゼフェル、もしかして、頭にこぶ出来てる? さっき、突き落とした時の??」

 頭を撫ぜて、気づいた。

 後頭部にかすかなふくらみが……。

 ゼフェルは、それに、激しい尻尾の動きで応えた。

「あはは、ごめんねぇ。でも、あの場合仕方なかったでしょう? 本当に、ごめん。今日は、お詫びに、同衾を許してあげるから、ね?」

 顔を上げて、アンジェリークを振り向いたゼフェルの瞳は……やっぱり不機嫌を表わしていたものの、尻尾のぱたぱたはおさまっていた。

 ま、これで、お相子、という事なのだろう。

 が………。

 ゼフェルは、暖かなアンジェリークの温もりに包まれて、決心をせざるを得なかった。

 ―――いつか、この女、孕ませてやっからな……!

 いささか下品な決心だったが、発情期を迎えたオス猫に、理性はないのである。

 我が身がやせ細るまで、ロクに食事もとらず、メスを追いかけ追いかけ……交尾を果たそうとする、野生の本能!

 これから発情期を迎えるゼフェルに、果たしてアンジェリークが太刀打ちできるのか!?

 それは、神のみぞ知る…………かもしれない。

 

 

  




<言い訳>

やっと、胸を張って13禁でございます(笑)。

っても・・・これって、13禁で大丈夫でしょうか?

お馬鹿なシーンだけに・・・13禁っぽくない気もするし、

やってる事は、13禁以上かもしんないし・・・。

ま・・・大丈夫・・・でしょう(^^;)。

――所詮、自主的なR指定・・・。

こちら、猫Zの中でも、一番最初に書いたシーンでございます(^^;;)。

いや、もう、このお話に繋げるために、これまで書いてたのですね〜。

っつても、それほど大したシーンではないのですが・・・。

次回は・・・多分、指が滑らなければ、栗色の仔猫が登場する・・・かも。