11111hitのカウンターリクエストで差し上げた創作です


天使の実を手にする者4

−4−

「ねぇ、リモージュ知らない?」

 朝、自分の隣のベッドに、この10日ほど、自分より早く起きた事のない同室者がいない事に気付いたアンジェリークは、男性陣の部屋に顔を出した。

「え? リモージュ? 来ていないけど?」

 早朝ランニングから帰ってきた所らしいランディが、首に巻いたタオルで汗を拭きながら首を傾げた。

「ん?……リモージュがどうしたんだ!?」

 ついさっきまで眠りこけていたくせに、“リモージュ”という言葉に反応してか、オスカーが勢い良く起き上がった。

「朝から……騒々しい……。彼女だって、たまには早起きしてるのかもしれないよ……?」

 セイランは、柔らかく艶やかな髪を乱して、やっと半眼開いた状態で少し不機嫌そうに……けれど、声にはどことない心配げな響きを含んで起き上がった。

「だって、おかしいのよ! 30分やそこら前にベットを抜け出したんじゃないし、あの娘のドレスもないのよ! こんな朝早く、あの服着て、あの娘はどこに行ったっていうの!?」

 アンジェリークは、そう言いきって、手を自分の髪の中に突っ込んで、くしゃくしゃにする。彼女の柔らかな直毛は、すぐに乱れて絡まるが、そんな事気にしている余裕なんてなかった。

「今日で、一週間。もう最後。約束の日……もしかして、ひとりで……?」

 アンジェリークの取り乱した様子に、皆、眉根を寄せる。顔色が変わってきている。リモージュの事が心配になってきているのだ。

「……まさか……ひとりで、帰ったっていうのかい……?」

 ランディが、呆然として呟くのを、オスカーが首を振って否定する。

「いや、そんなはずはない。あのお嬢ちゃんが、誰にも黙って姿を消すはずなんて……」

 しばらく考え込んでいたセイランもまた、ゆっくりと口を開いた。

「そうだね……。そもそも、こんな時間に船はまだ航行していないだろうし………」髪をうるさげにかきあげながら、布団から起き上がる。「………何か、あった、か?」

 セイランの不安をさそう言葉に、不意をつかれたように……いや、皆も同様の不安を感じていたからこそ、押し黙ってしまった。

 最初に口を開くのは、ランディ。

 当初、言い出しあぐねていたものの、きゅっと眉根を寄せて、重々しく口を開た。

 そう、二日前の、あの出来事を。

 ランディが話すごとに、皆の顔色が変わっていき……真っ先にオスカーが口を開いた。

「なんで、そんな事黙ってたんだ!?」

 激しい剣幕で、アイスブルーの瞳を激しく憤らせる。

「皆に心配かけたくないと、彼女が言っていて、それで……」

 次第にランディはしろどもどろになってゆくが、それでも……。

「俺、探してきます!!」

 顔をキッと上げて、言うが早いか部屋を飛び出ようとした。

 が……。

「きゃぁ!?」

 ランディが、飛び出した途端、少女の悲鳴がした。

 一瞬、皆がリモージュが帰ってきたものと、ランディを押しのけて部屋の外へと出たが、そこにいたのはリモージュではなく……宿のメイドの少女だった。

 例の青い髪のメイドの少女が、ランディが勢い良く開けたドアに驚いて、座り込んでしまっていたのだ。

「ああ……君は……」

 ランディを始め、皆、少々がっくり来ているものの、オスカーが条件反射のように、少女の手を取って優しく抱き起こした。

 抱き起こされたメイドの少女は、皆の異様な様子に、青い瞳に疑問を浮かべながらも、彼らに用件があったらしく、エプロンのポケットから白い封筒を取り出した。

「あの……これ、預かったのですけれど……?」

「えっ!? リモージュから!?」

 と、異口同音に叫ばれて、メイドの少女はきょとんとし、小首を傾げる。

「あの、金の髪のお嬢さまからではないですわよ? こちらのお客さまではない……黒づくめの男性の方からですが……」

「……………!!!!」

 先程、ランディから聞いたばかりの、リモージュを襲った男が思い出され、アンジェリークはひったくるように、その封筒を取り、封を破り開ける。

 メイドの少女は、異様な彼らの様子に訝しげな表情を押し殺しつつ、その場を後にした。

 そして、アンジェリークは、その内容を一読して……顔を、真っ青にした。

「…………やられた、わ……」

 脱力したアンジェリークの手から落ちそうになる便箋を取り上げて、セイランがその内容を見、その背後から、ふたりの男が覗き込む。

 そして、皆が皆……顔を青くした。

『女は預かった。

おまえらが天使の実を持っているのは分かっている。

それを持って埠頭まで来い

皇帝

 最悪、だった……。

 ――そんな彼らの打ちひしがれた様子を、廊下の向こうから見て、唇の端を吊り上げているメイドの少女に、気付きもしなかった。

 


 

「皇帝……ふざけた名前だね。けど、どこかで聞いた事がある……」

「ああ……そうだ。恐らく、あの“皇帝”だろう」

「だとしたら、厄介だわね……」

「え? 皇帝って、なんの事……?」



 


<言い訳>

あははは〜。GW終わってしまいましたね(^^;)。

いつも通り(?)有言不実行。

GW中、イロイロございまして・・・・・・完全復帰はムリですが、

どうにか復帰しかかっているので、後はホントに、早い目にUPしていきます。

今回は短め。

次回、長すぎ。

区切る場所が見つからず、そんな中途半端な事に。

続きは、週末にUPします。