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まえがき
ラブラブです。極甘いです。とりあえず、前半は。
後半はちょっぴりエロ入り(笑)。
葉月のキャラクターと口調が掴みきれないまま書き上げまして
……ううむ、葉月、難し。
このお話の葉月は、勿論、かなりなんちゃってです。

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Intersection of their mind
--前編--



「退屈、しないか?」

「ううん、全然」

 私、神無が珪くん……葉月珪の自室に、足を運ぶのは一体何度目だろうか。

 珪くんに微笑むと、私、くすっと笑う。

 高校の入学式で出会って以来、どこか気になって、知れば知るほど放っては置けない気のする、この人……珪くんと、何時の間にか付き合い出して、恋人のような(そこまで至っていないような)関係になって……一年足らず。

 ふたりの関係は、やっぱり、恋人のような、そうではないような関係のまま続いている。

 そして、今、三年の春の日の休日、名目は受験勉強、と、なってはいるけど、実際は……。

「そうか……」

 私の様子にほっとしたらしく、瞳を細めた珪くんは、再び机上に視線を落した。

 彼は、受験勉強をしているのではない。……と、いうか、彼には受験勉強をする必要はないのだけれど。

 そうではなくて、彼が視線を落したものは、スケッチブック。
 そこには、指輪や、ペンダントトップ、あるいは、ブレスやバックルなどが鉛筆で書きなぐられている。

 そう、珪くんの夢、宝飾のデザイン。

 彼の好きな弦楽メインのクラッシックがかかる部屋でも、私は退屈しない、時折珪の真剣な顔を見ては安堵した気持ちになって、参考書に向かい合うの。

 珪くんにとって、このクラッシックと私のいる空間は、α派がよくでる落ち付きの空間となるのかな? 普段の常に眠そうな彼から想像できそうにないくらい、真剣にスケッチブックにペン先を走らせている。

 うん、私も、珪くんの傍にいる事がいつの間にか、当たり前の安心空間になってしまったみたい。
 ふたり、一緒にいる事が、自然になりすぎている。

 それは、幸せな事なのだろう………きっと。



 お互い、キリがつくまで集中して、それから、ティータイム。

 留守がちな珪くんのお母さんは、今日もいない。

 だから、勝手を知った葉月家のキッチンでお茶を入れ、茶菓子を用意するのは、私の役目になっていた。
 トレイにハーブディの入ったティーポットとカップ、それから、出来合いのお菓子を入れたお皿を乗せて、珪くんの部屋に運ぶ。

「お待たせ」

「ああ……」

 部屋に、ハーブティのミントの香りが広がり、珪くんもスケッチブックから顔を上げた。

「……サンキュ」

 瞳を細めて、ふんわり優しく微笑んで(私の好きな笑み♪)、中央に置かれた、今まで私が使っていたテーブルの前に座る。私の正面に。

 広くはない窓から指し込む陽射なのに、明るく感じるのは、珪くんのお部屋がモノトーン……特に白を基調にしているせいかな?
 午後の陽射に珪くんの色の薄い髪が透けて見え、その瞳の緑が、緑のないはずの部屋を鮮やかにひきたててる気がする。

 そう、いつもの優しくも穏やかな時。

 会話の内容は、ごくごくたわいのない事。

 たわいのない事で、笑いあえるのが、なんて幸せなの。

 珪くんの穏やかな声や口調は、どうしてこんなに心地いいんだろう。
 その声で名前を呼ばれる時、慣れたはずなのに、今でも鼓動が早まるのはどうしてだろう。
 それに、ねぇ……珪くんの整った顔、見なれたはずなのに、改めて見つめるたびに、頬が熱くなってくるのは、どうして?

……?」

 私、ぼーっと珪くんに見惚れていて……声をかけられてはっとする。

「俺がぼーっとしているのは、いつのもの事だけど……」

 優しく、くすっと笑う。

「どうした? 勉強疲れか?」

「ちょっとだけ」

 えへへ、と、笑う。

 一流大学を受ける珪くんに、どうしてもついていきたいから、私、最近ちょっとムキになっているかもしれない。

 でも、でもね、最近、こうやって珪くんのお家で、珪くんに教えてもらいながらお勉強してて、ちょっとは成績上がって来てるんだよ! 一学期の期末には、絶対、もっと順位が上がるはずなんだから!!

「ああ、顔色悪いな、ちょっと」

「え? え? そぉ、かな?」

 や、でも、ちゃんと睡眠はとってるし……無理はしてない、と、思うんだけど……。

「ああ、悪いな、かなり……」

 ん? 珪くん、なんだか、ちょっと、企む表情してない?

 えーっと……?

 じっと見つめられすぎて、私、目をしばたかせてると、珪くん、殊更優しく微笑んだ。

「疲れてるんだな。休めよ、ちょっと」

「えっ、大丈夫よ?」

「いや、休むんだ」

「えぇーと?」

 どうして、そう、主張するの??

「……ん?」

 じっと見つめてくる珪くんの視線から逃れたくて、落ち付きなくもぞもぞ体を動かしてると、珪くん、ふいに立ちあがって、ベッドに寝転がった。

「それじゃあ、俺が休むから……」

 ……って、なんだ、自分が寝たかっただけなの?

 もうっ、珪くんっば!……まぁ、いつもの事なんだけど……。

「……いいよ、それじゃ、おやすみなさい」

 ホント、ヘンな所で、子供だから、珪くん。
 私、小さく溜息混じりに笑い、テーブルの上を片付けにかかったんだけど……。

「ここ」

「え? なぁに?」

「ここ、座って」

「???」

 えーっと? それは、一体?? もしかして……?

「……膝枕」

 やっぱり、そうですか……。

 ホント、子供みたいっ!!

「ここらへん、片付けてから、ね?」

 言うと、珪くん、あからさまに拗ねた表情になった。

「そんなの、後で、いい」

 やれやれ……。
 尽よりも手がかかるかもしれないわね。

 堅めのクッションのベッドに腰掛けると、珪くん、ご機嫌に微笑んで、私の膝に頭を乗せかけた。
 珪くんの頭の重みが、心地よく膝にかかる。

「気持ち、いいな」

「……感謝してる?」

「ああ……」

 半目で私を見上げて、微笑み、瞼を閉じる。

 私の白地のスカートに、珪くんのクセっ毛が広がって、彼の整った輪郭を額縁のように飾っている。

 頬骨から顎のシャープなラインや、すっきり通った鼻筋。長い睫毛に、形いい唇。
 なんて、綺麗。

 珪くんの安らいだその表情に、私は知らず微笑んでいる。

 すごく、幸せ、かも。

 珪くんが膝の上に頭をのせかけているものだから、私、何もできず、手もちぶさた。
 それでも、珪くんの寝顔を見ていると、不思議に退屈、しない。

 しばらく……半時くらい、そうしてて……私、何気なしに珪くんに触れたくなった。

 触れたくなって……そっと、髪の毛をつまんで、指先に絡めてみた。それから、前髪を払って、額を露わにしてみたり。あと、頬をぷにっ、って指先で押してみたり。

 珪くん、それでも起きなくて、ちょっと調子に乗ってみた。

 顎のあたりもさわさわ撫ぜてみて、ちょっとだけちくちくする感触に……ああ、やっぱり珪くんでも、おひげ、生えてるんだ? とか、ちょっぴり感心したり。
 唇の輪郭を指先でなぞって、その優しい指ざわりにうっとりしたり。
 でも、上唇をそっと指で押えた時……。

「……はうっ!?」

 ぱくん、って、指、食べられた!?

「おっ、おっ、起きてたのぅ!?」

 珪くんの唇に含まれた私の、指。
 その生暖かくて、不思議な感触に、トキン、と、心臓が跳ねあがった。

 珪くんは、口に含んだ私の指をそっと解放して、唇を尖らせる。

「あれだけ、顔中いじられてたら、イヤでも目が覚める……」

「ごめん〜〜。だって、あんまり気持ちよさそうに寝てるから……」

 ふてくされたのか、珪くん、上半身を捻って、うつ伏せになって、私の膝……というより、太腿に、顔を埋める形になった。

 ……もうっ!

 珪くんのさらさら髪の頭を押しやってみたけど、珪くん、私の足と腰にしがみつく形で、なかなか強情に頑張った。

 もう……もぉぉう!!
 やっぱり、子供……?

 でも……でも、ね……スカートの布ごしに珪くんの吐き出した息が私の素肌に届いて……珪くんの熱い息が……スカートの中に篭ってるみたいで……。

 なんだか、とっても……ヘンな気持ちに、なった。

 やっ……もうっ……だから、ダメだってば……!!

 顔を赤くして、私、珪くんの耳を強く引っ張って、かなりムリヤリもとの状態に戻したのだけれど。

「もうっ!」 

 珪くんの高い鼻をきゅっとつまんで、ねめつけると、珪くん、くすくす笑った。

「俺が寝ている間に、まさか、落書きとか子供っぽい事してない、よな?」

「あはは……くるくるおひげ、描いたり? してて、欲しかったの? してあげようか?」

「……どうせなら、もっと気のきいた落書きがいい」

「ん? どんなの?」

「耳、貸してみろよ」

「え?」

「こっそり、教えてやる」

「???」

 悪戯っぽく笑う珪くんに、私、素直に耳を貸そうとして、顔を近づけた。

 そしたら、急に珪くんの腕が伸びてきて、私の頭を押えて……!!


 ――キス、された。


「えっ、え、と……」

 不意打ちに、戸惑っちゃう。

 珪くん、ずるい。

 相変わらず、私の膝の上に乗っけた頭、動かそうとしないまま、珪くん、私の手を取った。

「キスマークとか、残しておいてくれれば、嬉しかったのに、俺」

 ね、ねぇ、珪くん、もしかして、寝ぼけてない?
 普段、そんな事、正面きって言わないのに?

「ばっ、ばか……」

 私、赤くなって視線を逸らして……でも、次の瞬間、固まっちゃった。

 だって……。

「……っ!? やっ……だ、だめ……」

 珪くん、今まで自分の胸元で握り締めていた私の手を取って、その手を……。

「ミントティの味、する……」

 私の手を、指を、舌で、なぞったの……。

 最初は、人差し指を口に含んでそっと歯を立てて、それから、指の脇を舌でなぞりながら、指の股を吸い上げるみたいに……。

「んっ……!!! や……っ」

 ぞくっとした。

 体と心の真中を貫く目に見えない芯を、一気に熱いお湯が駆け抜けていったみたい。

 どきどきと、心臓が徐々に鼓動を早くして……珪くんに、聞かれちゃう!

 体を満たす全ての体液が沸騰して、私を追い詰めていって……。

「やだっ……!!」

 私、慌てて珪くんから手を引いた。

?」

「あっ……」

 珪くんの、驚いた不思議そうな顔。
 ううん、そこには、どことない不満もあった。

 でも、私、もう、冷静でいられなくなっちゃったの……。

 どきどきが、止まらない。

 珪くんに舐められた手が、じんじんと痛いくらいに熱くなって来て……きゅっと握り締めて、私、それを誤魔化すように声を上げた。

「ねぇ!! いい加減テーブルの上、片付けなくちゃ!」

 もう、珪くんの事なんておかまいなしに、勢いつけて立ちあがっちゃった。

 結果として、珪くんは、床の上に転がりかけたんだけど……今の私、そんな事気にしている余裕なくて……舞いあがっちゃってたのかもしれない。

 とにかく、珪くんを振り返らないように、テーブルの上片付けて、1階のキッチンまで降りていって……流し台の前で立ち尽くした。

 珪くんの温もりがまだリアルに残ってる手を、胸元で握り締めて……呆然と、してた。

 体の芯に点った火が、未練たらしく、ゆらゆら揺れていて……こんな、気持ちになった自分が……恥かしかった。

 恥かしくて、珪くんに顔を合わせられなくて……その後、まるで、逃げるようにして、珪くんの家を、離れた。家まで送ってくれる、っていう珪くんの言葉も、まだ陽射が明るいからって理由で断って。

 ――珪くんが、困惑した、とっても悲しそうな顔をしているのに、気付いていながらも。



<つづく>

後編へ行く?

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