続・お風呂に入ろう
後編



 空には、ステンドグラスをばら撒いたように煌く星々。

 それらが、露天風呂のお湯の上に映ってゆらゆらと揺らめいて見える。

 潤んだ千尋の瞳には、そんな煌きが、突き刺さるほどに眩く映っていた。

「遠くから、ふいに、何やら奇妙な物音が聞こえた……気がした。

 すぐ後ろの滝の音が激しすぎて、周りの音はほとんど聞こえないのだけれど、なんだか、とても聞き覚えのあるような、ないような……音……? いや……声……? 何らかの虫の……羽音?

 徐々に近づく音に、顔を上げるハク。

「……なん……」

 だ、と、続けようとしたハクの頭の上に……。

「ちゅちゅ〜〜!!」

 ぼとん、と落ちてきたのは、丸々とよく肥えた……。

「…………!!!?」

 絶句。

 そして、絶叫。

「っ……! いっ……!!! いたたた……っ!!」

「ちゅ、ちゅぅ!」

 ハクの直毛の髪の毛の中で、暴れる……坊ねずみ。

 振り払おうとするハクの手にも、ガブリ。

「いてっ! 坊! 何を!!」

 以下、ソロモンの指輪でも通して、坊ねずみの言葉を訳語。

「ちゅ!(ハク!)」
「ちゅちゅ〜!!(千を泣かしたな!)」
「ちゅ、ちゅちゅちゅ!ちゅ、ちゅちゅ〜!(ハク、嫌いだぞ! ハクなんて、大嫌いだからな!)」
「ちゅぅ、ちゅ、ちゅちゅ〜!!(千をいぢめるハクなんて、こうしてやるっ!)」

 今度は、ハクの耳たぶに噛み付いて、鼻に噛み付いて……ハクの美麗なお顔が台無し。

 千尋は、ぼーぜんとそんな様子を見ていたり……。

「坊〜!! いい加減にするんだ!」

「ちゅっ、ちゅぅ!」

 それでも、どこうとしない坊ねずみに、業を煮やしたハクは、魔法にて弾き飛ばした……が、そこはそれ、坊ねずみの配下(?)ハエドリが見事にキャッチ!

 そっと露天の床に下ろされた坊ねずみ、ハクに向かって身構えて……体中の毛を、鋭い針に変えて飛ばす!毛針!どっかの妖怪漫画で見たかもしれないが、そこは大人、知らん顔で頼む!

 が、ハクはあっさりと毛針を叩き落す。

「坊ぉぅ……」

 ハクの声音ががらりと変わった。

 怒り心頭。

 顔中からたらりたらりと血を垂らしているものだから、迫力万点!!

 ぞぞっとした坊は、とっさにハエドリを呼び寄せて、飛び退る。

 ぶぶ〜ん、と、自分の数十(百?)倍あるウェイトの坊ねずみを抱えながら、ハエドリはハクの手の届かないだろう位置まで上昇し……更に、逃げる!

 が、ハクも怒りで我を見失いかかっている。

「千尋、すぐ戻る!」

 言ったまま、そのまんまの格好で露天風呂を飛び出した。

 ええ、そのまんまの格好で。

 呆然とする千尋。

 しばらく後、油屋の中から聞こえる、女性たちの悲鳴……と、いうか、八割方歓声。

 そして、ハクの悲鳴。

 千尋には何が起こったか分からないが……何やらとんでもない事態になっている事だけは確かそうだ。

「ハ、ハク……?」

 どうしたものか考えた後、露天を出ようとするが、お湯から上がる前に。

「千!」

 人形に戻った坊が、てけてけ歩いて来た。

「坊? ハクは?」

 坊は、にっこり。

「大丈夫だよ」

「……? だって、あの、悲鳴……」

「ちょっと、鬼ごっこしていたみたいだけど。でも、どうしただろうね、鬼さんのハクの方が追いかけられて、逃げてたよ。千をいぢめてたからかな?」

「???」

「だって、千をいぢめちゃ、いけないもんね!」

 なんだか、よく分からなかったけれど、ハクは無事のようだ。

「千、大丈夫だった?」

 無邪気な瞳で問い掛けられては……千尋もにっこり笑った。

「うん。ありがとう。坊」

 坊の好意を大事にしたい。

 完全に坊のお姉さんになりきっている千尋は、甚だしい誤解にしろ、坊が自分を守ろうした、という気持ちが本当に嬉しかった。

 だから。

「ね、坊、身体すっかりさめちゃったから、坊も一緒にお風呂はいらない?」

 ハクがいたら目くじら立てまくりそうな事を口にした。

 坊が断るわけがナイ。

「入るぅ!」

 ……まぁ、感覚としては、年の離れた姉弟。
 別に、一緒にお風呂に入ったって、ねぇ?
 
 今度こそ、坊と一緒にゆったりお風呂に使って、千尋はその日の疲れを十分に癒したのだった。

 きっとハクと入っていたら、余計疲れさせられていたものね!

※ ハクセン本番(爆)を期待された方、怨むなら、坊を怨んでください(逃)。


「千尋……」

「え? なぁに?」

 部屋に戻った千尋に、ハクは優しく声をかける。

 小さな鏡台の前で、お風呂上りの濡れ髪をせっせと拭いている千尋を、寝転んだハクが下から見上げている構図。

 声をかけておいて、しばらく千尋に見惚れていたハクは、言葉の続きを催促するように見下ろしてくる千尋に、ゆるゆると微笑んだ。

「……また、一緒に風呂に入るかい?」

 そんなハクの言葉に、千尋はぼぼっ、と、頬を染めた。

 色々ありつつも、新婚サンのらぶらぶな日々は、まだまだ続きそうだ。


〜幕〜



ああっ、石をぶつけないでください(泣)。
と、いうわけで(?)・・・・・・

・・・・・・15禁ストーリー、楽しんでいただけましたでしょうか?(笑)
や、だからね……良識あるオトナの15歳以上の方々に……(逃)。
つーか、隠し文字を読まない方が、妄想が膨らむかもしれませんねぇ。

露天風呂……いいシュチュエーションでしたねぇ……あっはっはっ(^^;)。

ちなみに、露天風呂から出た後のハクサマがどうなったかも、
また妄想の一端に……ならないか……。



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