赤い日・白い日


「尽、これあげる」

「………え?」

 ねえちゃんからチョコレートを貰ったのは、まだまだ寒い2月の半ば……既に恒例行事となった、バレンタインデー。

 自分の部屋で、女の子達からもらったチョコを数えて整理していた俺に向かって差し出された、可愛らしいピンクのラッピングに、俺は本当に何が起こっているのか理解不可能で……しばらくの間、素で呆然としてしまった。

「えーと……友チョコの残り……とか?」

 そうして、しばらくの自失状態の後に出てきたこの言葉は、自分でも大概まぬけだと思う。

「ばか。ちゃんとあんた用に買ってきてあげたのよ! そういう事言うなら、もう、あげないっ」

 明らかにむっとした顔をしたねえちゃんは、俺の目の前に置いたピンク色の包みを引き上げようとしたのだけれど、俺は慌ててそれをがっちりキャッチした、

「いる! いるって!! ねえちゃんからのチョコなんて、何年ぶりだろ!」

 最後に貰ったのは……思い起こせば、小学生の頃……もう4年も前だ。しかも、手作りを失敗したそれだけ。

「どんな心境の変化?」

 問い掛ける俺に、ねえちゃんは困ったように首を傾げて……微笑んだ。

「気紛れ、かな」

「……それだけ?」

 微笑んだねえちゃんは、そのまま立ち去っていった。結局、明確な答えは、ないままに。



 理由はなんにしろ、嬉しかった。
 ねえちゃんからバレンタインにチョコをもらえたのが。
 中身は、バレンタインにどこにでも売っているメーカーもののチョコでしかなかったけれど……でも、ねえちゃんが俺の為にそれを選んでくれたのだというその事実が、嬉しかったのだ。



 女の子へのプレゼントを選ぶのは、実はあまり得意ではない。そもそも、女の子の喜びそうなものを売っている店は、大体、男の俺には敷居が高い。
 いや、それでも、普段はどうにか入れそうな店を見つけて、それなりに無難なものを選ぶ事くらいはできるけれど……今回は、どうも勝手が違う。

 同世代の女の子の喜ぶものならある程度は把握できるし、"俺からのプレゼント"という事実こそが女の子を喜ばせるのが分かってるから、それなりに無難なものでも良いのだけれど……。
 相手はねえちゃんだ。年上の女性。そして、俺のプレゼントだからって、クマのヌイグルミなんかで簡単に喜ばせられる相手じゃない。

 これは、困った。

 困って……困って……考えた末に、俺は、同じ女ならば、年齢が離れていても好みそうなものが分かるかもしれない、と、友人のひとりに買い物を任せる事にした。
 友人のひとり……女で、そういう買い物が頼める相手……俺の取り巻きの女の子じゃない相手。思いついたのは、俺にとって、既に女という範疇を離れた存在、日比谷(妹)だ。

 ねえちゃんへのプレゼントだ、と言うとまた「あんたっていつまで経ってもねえちゃん離れができないわねー」とかなんとか茶化されそうだから、年上の知人女性へのバレンタインのお返しだ、と、言い繕った。それでも……まぁ、色々詮索されたけど……結局は、予算内で好きなものを買ってやる、という俺の言葉に押し黙った。ゲンキンな奴だ。

 ……ともかく、日比谷曰く「大人の女性なら、これくらいのものがいいんじゃないかな」の、20センチ四方くらいの箱は、ホワイトデーのお返し用に綺麗にラッピングされていた。コイツも一応女だから、それくらいの趣味は持ち合わせているよな、うん。

 中身を聞いたら「香りの詰め合わせ。ポプリとサシェと、オー・デ・トワレ。無難な香り選んでるから」。
 まぁ、男の俺が選ぶよりはマシなものだろう……多分。

 ホワイトデーまで日数が迫ってきてから、俺は、日比谷に買ってきてもらったそれを、いつねえちゃんに渡すかと考えて、考え抜いた挙句………ねえちゃんの部屋の机の上に置いておくことにした。

 ……どうせ、意気地なしだよ。
 だって、そういうのを直接渡すの、照れくさすぎるじゃんか。
 第一……面と向かって渡したら、絶対に、俺、余計な事まで口走っちゃいそうな気がして、さ……。



 当日、自分の部屋でゲームしながらも、ねえちゃんがいつ帰って来るか、そわそわし通しだった。

 ねえちゃんが帰ってきて、自分の机の上に置いてある包みを見たら……多分、俺だって分かってくれるだろう。きっと、喜んでくれるだろうか。いや、喜んでくれるに違いない。そうして、にこにこ笑顔で俺の部屋に来て「ありがとう」とか言ってくれて……俺は、その時、どんな反応をすればいいかな。

 などと、妄想ばかりが先に立つ。
 今まで、女の子に贈り物を渡すのに、こんなにそわそわした事はなかったのに。

 するともなくゲームのコントローラを握っていると、階下から玄関のドアが開く音と「ただいま」の声。待ちわびたねえちゃんの声だ。それから、軽快に階段を上がってくる足音が近づいてきた。

 ドキドキが最高潮に高まってくる。
 壁一枚隔てた隣の部屋に、今、ねえちゃんが入ってきた。そして………。

 数分が経過する間に、俺の頭の中では……ねえちゃんが机の上の包みを見つけて・開けて・微笑む……そんな様子が勝手に浮かぶ。
 そうして、きっと、俺の部屋をノックして…………!

 と、考えてると、現実にねえちゃんの部屋のドアが開く音がして、次に……………!

「尽っ!!!」

 ノックもなしに、突然、俺の部屋が開いた。
 想像とは違うけれど、まぁ、これもありかな、とか思った瞬間。

「一体、何考えてんの、あんた!?」

 怒声が響いた。

「こっ、こっ……これっ、これっ!!!

「……え…?」

 状況が飲み込めていない俺に向かって、ねえちゃんが投げつけてきたものは、化粧箱……と、その中に入っていたもの……。

 は……? これ、は………?

「ヘンタイ! ばかっ! すけべっ!!」

 だって、俺が贈ったのは、ポプリとサシェとトワレで……そのはずで……。これは………着けるのに意味があるのかないのか分からない……いや、何も着けないより、着けるからこそ萌える、布地のほとんどない真っ赤な紐パンと……ナニ(ナニ?とは聞かないでくれ!)の形をした棒付きキャンディと、やけにカワイイ色形をした……えーと、多分……コン○ーム。

 こっ、これは………確かに変態三点セット。

 つか、つか………これは、一体!?

「机の上に置いてあった包み、あんたでしょう!? あんた以外にこんなの机の上に置かないものねっ!」

 机の上の包みは確かに俺。
 けど、この中身は!!?

 俺の方こそ、もう、頭の中は恐慌状態で……硬直するしかなくて、言い訳も出てきやしない。
 そうして、ひどい剣幕で怒るだけ怒ったねえちゃんは。

「尽なんて、もう知らないっ! しばらく、顔も見たくないっ!!」

 顔を真っ赤にして、半泣き状態で……そのプレゼントは当然俺の部屋に置き去りで、ねえちゃんは自分の部屋引き返し、激しくドアを叩きつける音の後に……閉じこもってしまった。

 ああああ………ねえちゃん! 違うんだ〜〜!!

 しばらくして、硬直から解けた俺は叫ぶんだが、もう後の祭り。
 旋毛を曲げたねえちゃんが、聞く耳持つはずがなかった。

「日比谷(妹)の大馬鹿野郎! 人にさんざんたかっておいて! ……覚えてろよぉ!!」
 


 散々謝り倒した俺に、ねえちゃんが口を利いてくれるまで、約一週間かかった。
 そうして、俺が日比谷(妹)をとっ捕まえて、謝らせるまでは……十日かかった……。

「だってさー年上の女性へのお返しでしょう? 大人なアイテムがいいじゃん! もしかして、あんたの本命だったりしたら、ほら、ね?」

 何が、ほら、ね? なんだよっ!

「使う機会もできるかもしれないなーと思って。きっかけ、そう、きっかけをね、作ってあげたんじゃない!」

 使う機会!? きっかけ!?
 ああ、もう! 今更ねえちゃんへのプレゼントだった、なんて言えないしっ……!

 俺は、とりあえず………日比谷(妹)の頭に拳固で一撃してカンベンやることにした。

「ひっどぉい! 女の子に、この扱いはないんじゃない!? DV男! ……いや、SV(Schoolish violence:あくまで造語)男ぉっ!!!」

 石頭に、俺の拳の方が砕けると思ったがな。オマエのどこが女なんだか。

 つか、あんなものがきっかけになって、使う機会が巡ってくれば、誰も苦労しないって!
 世の男どもは、こぞってあの変態三点セットを想い人に贈るだろうさ。……勿論、両想いでなかったバアイは……俺と同じか、もっとヒドイ目に逢うだろうがな。
 相手がねえちゃんだから、どうにか仲直りできたけど、まったくの他人なら、完っ全にただの変態じゃん。

 ……つか、弟が姉に贈った場合、変態通り越して、異常、か……?
 


 夢を見た。
 すげぇヤバい夢。

 夢の中にはねえちゃんがいて、俺ににっこり笑いかけて。
 そうして、不意に取り出したペロペロキャンディを舐め始める……って、そのキャンディは、見たことがある。そのグロテスクな、すげぇ見覚えの在る形! もしかすると、変態三点セットの中に入っていたナニの形をしたもの!
 男の俺としては、一応見覚えのある形のナニを、ねえちゃんが舐める様は、どうしようもなく淫靡。

 ふっくらとした淡いピンクの唇と、そこからチロチロ覗く唾液で濡れた赤い舌が、ナニの形のそれをてらてらに濡らしていく……そうして、その時のねえちゃんの恍惚とした表情。

 俺の頭にカァと血が上っていく。
 まるで、自分のその形のモノを舐められているような錯覚に陥る。

 と、夢の中でも妄想する俺の前でねえちゃんが取り出したのは、やっぱり変態三点セットに入っていた色鮮やかなコン○ーム。それを、おもむろに今までしゃぶっていたキャンディにかけると、再び、今度はそれ越しにキャンディを口に含んだ。
 そのフェロモンもろ出しの卑猥さに、どうしようもなく、たまらなくなって…………こみ上げてくる衝動をどうにか抑えようと瞼を堅く閉ざし、深呼吸をし、それからゆっくり目を開けると、そこにねえちゃんの姿はなく……。

 いや、違う。
 よもや、まさか…………。

 目の前に、変態三点セットのメイン、真っ赤なギリギリ紐パンを身に付けたねえちゃんが、いた!
 そうして、にっこり、子悪魔的に笑ったねえちゃんが舐めようとしてるのは、今度はキャンディではなくて………ッ!!!!
 


 ………と、惜しいところで目を覚ましてしまうのは、夢の定石なのだろうか……くそっ。

 ホワイトデーのごたごたからしばらく経ってからのその夢は、俺にとっては大層複雑。
 所詮、夢だしな……。

 というか……そういえば、変態三点セット、どうしたっけ?
 ねえちゃんに渡すわけにもいかず、処分にも困る代物は、机の引出しに突っ込まれていた気がするけど……さすがに、どうにか処分しないとなぁ……お袋に見付かったら、ヤバイどころじゃない。

 思い出したら気になって、机の引出しを開けたけれど、しまったはずのそこに、それはなく……俺は慌てふためいた。

 まさか、もう、お袋に見付かった!?
 朝から、さぁっと青ざめた。

 相当慌ててお袋のところまで行って……何気なく、そう、どうにか何気なさを装って「俺の引き出し、勝手に開けなかった?」と聞いたら「開けてないわよ? 何? えっちな本でも隠してたの?」と返されて、身に覚えありありの俺は、却って慌てふためいてしまった。つか、お袋の態度に嘘はなく……そうとなれば、あれの存在を知っているのは、ねえちゃんだけで……。

 まさか………ねえちゃんが? なんで?

 ねえちゃんは既に出かけてしまっていて……本人に直接聞けたのは、夜になってから、だったんだけど………。
 


「ねえちゃん……?」

 ねえちゃんの部屋をノックする。
 けど、いるはずなのに返事がない。

 勝手にドアを開けると、ねえちゃんの後姿がガラスの向こうに……ベランダにいるのが見えた。

「ねえちゃん?」

 呼びかけても応えがないし、別に拒否もされないから……俺はねえちゃんの部屋を横切ってベランダのねえちゃんの所まで近づいた。
 夜、部屋の灯りで浮かび上がるねえちゃんは………。

「? ………ッ!? それっ!?」

「結構、美味しいよ」

 にっこり笑って、ペロペロと舌を這わせてるのは、あのナニ型キャンディ!
 夢さながらのねえちゃんの行動に、俺は、本当に、どうしようもなく呆然としてしまった。

 グロテスクなはずのその形を舐めるねえちゃんの舌と唇動きが、静かな夜の空気の中のぺちゃぺちゃっていう音が……俺の視覚と聴覚を釘付けにする。
 そうして……不意にねえちゃんと視線が合えば、ねえちゃんは、キャンディを口に含んだまま、瞳だけで微笑んだ。

 なんか、その眼差しが、すげぇ、蠱惑的に見えるんだけど!?

 ドクン、と、心臓が大きく動いて、頭にカーッと血が上る。
 多分、夜目にも分かるくらい、顔が赤くなっていたと、思う。

 ねえちゃんがキャンディから唇を離すと、唾液がかすかに糸を引いて……それが、また、すげぇヤラシくて!!

「だって、尽ってば、これも没収しちゃって、結局バレンタインのお返しくれそうもなかったら……勝手に持ってきちゃった。こんなんでも、お返しとして納めといてあげようかと思って」

 悪戯っぽく笑って言う。

「これ、日比谷の歩ちゃんに買ってきてもらったのよね?」

 舌先で、つっとキャンディの形をなぞる……って、ねえちゃん、やらしすぎっ! 意識的にしてるのか、もしかして!?

 俺、なんというか、夢の中のねえちゃんとも合間って……体から思考から、何から何までが熱くなってて、マトモな返事が返せそうもなく、ぎこちなく頷いた。

「随分仲いいんだね? アイツとかなんとか、親しそうに呼んでたしね」

 ねえちゃん? なんか、拗ねたような、口調? どうして?

「……べっ、別に、あいつとは、本当に単なるダチで。そもそも、女以前の代物だし……」

 つい俺も言い訳みたいな事を口走る。

「ふぅ〜ん……」

 気のない相槌を打って、ねえちゃんは、再びキャンディを口に含む。

 一体、なんなんだ!? ねえちゃんのこの態度!
 って……もしかして……妬いてる、とか?

 妬いてる……ま、まさか、ね……。だって、ねえちゃんはねえちゃんだし……
 いや、俺にとっては、ねえちゃんはねえちゃんってだけのものじゃなくなって久しいんだけど、それだからどうにかできるものではないと思っていたし……。

 ねえちゃん、一体……?

 なんて、苦悩する俺を他所に、ねえちゃんは夜空を仰いだまま、独り言のように、また、どこかあてつけがましい口調で言う。

「折角のプレゼントだし、後のふたつも、ちゃんと使わないといけないね」

 使う?
 あの紐パンはともかく、コン○ームを使う? 誰とぉ!?

 言葉なく、目を丸くした俺を横目で見たねえちゃんは、明らかに面白がってる。
 むっ……だから、今日のねえちゃん、なんなんだよ!?

 くすくすっ。
 俺の苛立ちを察知したらしいねえちゃん。今度は、はっきり声を立てて笑って、俺に向き直った。

「キャンディ、美味しいよ。食べる?」

 自分の唾液で濡れたそれを俺に差し出してくる。
 意図、あるのか?

 いや、そりゃあ……ねえちゃんと間接キスってのは、トキメキだけど………いくら菓子でも、その形のもの、俺は舐めたくないぞ……?

 俺が顔を逸らしても、ねえちゃんはしつこくそれを俺の前に差し出してきて……。
 俺は意地でも舐めるもんか、と、口を引き結んで、目を塞ぐ。さらにそんな俺の唇に、ねえちゃんはそのキャンディを押し付けてきて。濡れた固い感触が感じられて、甘い匂いが鼻につく。

 大概しつっこいっ!!

 と、苛立ちに口を開きかけた俺の唇に……キャンディの堅い感触とは違う……まったく違う、柔らかくて暖かな何かが触れて、慌てて目を開けたら……ねえちゃんが、俺に………。

「っ!? っ!!?」

 間接キス……なんて、青少年のトキメキを簡単に突き抜けて………!
 俺は固まって、ねえちゃんにされるがままになるしかなかった。

 ……後で考えると、とんでもなく情けないんだけどねぇ。
 俺は、ねえちゃんに……キス、されてた。

「ね、美味しいでしょう?」

 あっ……味っていうか、さぁ!!!

 しばらく続いたキスの後、ゆっくりと唇を離すと……甘味にぬめった互いの唾液がかすかに糸を引く。それを指先で拭いながら、悪戯っぽく笑いかけてくるねえちゃんの表情は、なんか、すごい……色っぽい。

 さっきから、もう、俺、頭に血が上りっぱなしだけど、いまや、鼓動が耳元で痛いくらい響いてて、止まりかかった思考が、さっきのキスを、ゆっくり頭の中で再生する。

 ねえちゃんのキス……キャンディの甘味でコーティングされた舌が俺の中に入ってきて、俺の舌の動きを誘うように、口の中で艶かしいダンスを踊っていた。誘われるままに、俺も、ねえちゃんの動きに合わせて……そうすると、嫌でもキャンディの味がダイレクトに……けど、俺がねえちゃんを捕まえようとした途端、ねえちゃんは、俺からするりと逃げ出した。
 キャンディの甘味よりも、ねえちゃんの舌の感触こそが甘い刺激となって、俺をどうしようもなく追い詰めた。

 ……もしかしなくても、俺、ねえちゃんに嬲られてる……?

 真っ赤になった顔で、どういう表情をしていいか戸惑いながらねえちゃんを見ると、ねえちゃんは、小首を傾げて……微笑んでいた。

「あんたからもらったものだしね。残りのふたつも………」 

 くすっ、と、笑い、俺の腕を取る。
 そうして、俺を見上げて、瞳を細めて言う。

「あんたからのプレゼント、他の人で使えるわけないし、ね?」

「……は?」

 どういう、意味?
 どういう、意味!?
 それって、一体、どーいう意味!?

 俺の腕に自分のそれを絡めたねえちゃんは、ベランダから部屋の中に俺を誘導していく。
 俺、まだ、多々の衝撃的事態に思考も体も戸惑っていて……ねえちゃんにされるがままに足を動す状況だ。

 つか、ねえちゃん! 自分の言動が俺に与えたどうしようもないリビドーを、理解してるのか!?

 俺には、ねえちゃんが何を考えてるのか、本当にさっぱり分からなかったけれど、ねえちゃんは、部屋のドアを開けて、にっこり笑って、俺をじっと見上げながら……。

「また、いつか……使えたら、いいね?」

「ね、ねえちゃんっ!?」

 とてもとても爽やかな笑顔を浮かべて……ねえちゃんは、俺を廊下に放り出した。
 目の前で、バタンと閉まったドアは、その晩、二度と開かなかったけれど……俺は、閉ざされたドアの前で、一体どれくらいの間、呆然としていただろうか。

 ねえちゃん!?
 何、何なんだよ!?
 だから、どういう意味だよ!!

 結局……翌日以降のねえちゃんの口から、何も語られる事はなく……ただ、ねえちゃんの俺への態度が、大きく、変わった。

 どう考えても、それらは姉が弟に接するような態度ではなくて……!

 ねえちゃん……?
 ねえちゃんっ………ッッ!!?

 言葉よりも行動を起こす、不言実行のねえちゃんが、あの夢のように、俺からのプレゼントを有効活用してくれる日は、多分、近い……。

 おっ、俺だって、臨戦態勢を整えとかないと、男としてとんでもなく恥かしい事態になりかねない。
 頑張れ俺!! 頑張って、ねえちゃんを向い撃て!!


 ……結局、日比谷(妹)曰くの、使う機会へのきっかけ、は役に立ったわけだ。
 礼は言わんが、心の中ではかすかに感謝しといてやろう。




おわり


--BACK--





<言い訳とか>

迫り来るねえちゃんを、向い撃て!

……というわけで、微妙な関係のふたりでした。
尽がねえちゃんに圧されまくりですが、
両思いのようなので、これでもハッピーエンドですね、一応。

……最近、いつも思うのですが、
別にこの程度のシュチュエーションであれば、
姉弟でなくともいい気もしたり……。
姉弟ならではのシュチュだから、尽主は面白いわけで。
……最近、どーも本末転倒になってきています。
反省でした。

ところで、ナニの形をしたキャンディって,、結構どこでも売ってます…よね?
道祖神とかでそーいう形をしたものが多いように。
ちなみに、私、新年の初日の出参詣時に、お土産物屋さんで
大小さまざまなサイズが揃っているのを見て、
ありがたやりがたやと拝み倒したり……してません。してませんよ。
買うのには相当の勇気がいるだろうと思われ、諦めました。
いつか機会があれば!(笑)