ひと夏の経験



 口八丁手八丁は、俺の望むところ。

 と、いうわけで、うまい事ねえちゃんを丸め込んで、臨海公園地区の海水浴場まで引っ張ってきた。もちろん、おニューの水着持参!

 さぁ、ここまで来たんだ。嫌だとは、ぜぇったい言わせない。




「尽ぃ……ホ……ホントにこの水着で……」

「当たり前じゃん。せっかく買った水着、着てやらなくてどうするよ?」

「だっ、だけどぉ……」

 既に、更衣室で着替えてきている。

 けれど、まさか持ってきてるとは思ってなかった、大きなパレオを身体に巻きつけて、最後まで無駄な抵抗をしてみせる。

「ほらっ! 恥かしがらないっ!!」

「ぅう……」

 くいくいとパレオの端っこを引っ張ってやれば、顔を真っ赤にして、引っ張り返す。

「悪あがき……」

「だって……尽が言ったんじゃない、もうそろそろ海水浴場も人気がないだろう、って……なのに……」

「いや、もうお盆も過ぎたし、ホント、人気ないと思ってたんだって、俺も。けど、今日ぴーかんだもんなぁ。泳ぎたくもなるさ」

 砂浜にはパラソルが群生し、こぞって小麦色の肌を晒す老若男女がわらわらと行き交っている。
 まだ、午前中とはいえ、じりじりと照りつける太陽に、青い海原がキラキラ反射して見え、遠くには色とりどりのヨットの三角帆がゆらめいている。

 いやぁ、夏だ。
 スバラシイね。はは。

 そりゃ、目の前を通り過ぎる水着のおねぃさんも眩いけれど、それ以上に……やっぱり、なんつっても、ねえちゃんだよな〜。
 家の中で見るねえちゃんも可愛いけど、明るい太陽の元で見るねえちゃんもまた格別で……。

「ほらほら、恥かしがらない。せっかくいー天気なんだから、弾けようぜ、ねえちゃんっ!」

「でっ、でもさっ! 私、やっぱり……っ」

 クルリと踵を返して、更衣室にダッシュしかけたねえちゃんのパレオの端をがっちり握る俺。

 当然の結果として、パレオは結び目から解け、ついでに鈍くさいねぇちゃんは……。

「きゃぅ!!」

 すっ転んだ。
 なんつーか、もう、ホント見事だよなぁ。

 パレオは俺の手の中。
 ビーチの砂の中に埋もれるねえちゃんの白い背中と脚が眩しい……つか、ほら、また顔から突っ込んで……。顔、怪我してないよな?

「大丈夫か?」

 腕を取って起き上がらせてやる。
 案の定、顔中砂だらけ。

「あぅ……」

 半べそかいてるぞ。
 いくつだ、ねえちゃん。

「尽ぃ!」

 顔の砂を払いながら、キッとにらみ上げられても、俺、苦笑いしか漏れない。

 うん、いいアングル。

 上から覗き込む胸の谷間にロマンを感じるね。ほら、砂がいい感じに肌に張り付いて……あぁ、払い落としたいな、ソレ。

「やっと、ご開帳?」

 にやっと笑う俺に、ねえちゃん、自分の現状に気付いて、顔をカーッと赤くした。

「ちょ、ちょっと……!」

 わたわたして俺の手の中のパレオを取り戻しにかかるケド……返してやらないし〜。

 立ち上がって、背伸びすると、ほら、もうねえちゃんじゃ届かない。

「返してよっ!」

 あ、なんかいい感じ。

 ねえちゃん、ムキになって取り返そうと必死だ。
 けど、自分の行動ちゃんと把握しているか?

 俺の片腕を掴み、俺の身体に自分の身体を密着させて、頭上高くのパレオまでぴょんぴょん何度も飛び上がる。そのたびに、ねえちゃんのやわらかい胸が俺の胸をなぞる。
 ぽにぽにって感じのやわらかい胸の感触……それから、ねえちゃんの滑らかな肌と擦れあう感触……。あ、太股、すっごく気持ちいい感触、かも……。


 ビバ、夏! ビバ、水着ッ!!


 すっげ、いい感じ……ケド、ちょっとヤバイ……。俺も海パン姿だし……。

 つか……ねえちゃんの太股、どこに当たってんだよ……。マズイって、ちょっと……。

「っ……!」

 気持ちいい。気持ちいいんだけどぉっ!

 あ、マジ、ヤベ……。

 ねえちゃんが飛び跳ねるたび、元気になってきた某所をますます元気にする。

「ちょ、っと、ねえちゃん、ごめん!」

 ねえちゃんを身体から引っ剥がして、パレオなんてこの際ねえちゃんに突っ返して……トイレまで猛ダッシュ!

 いや、自分でも青いな、とは、反省する。

 こんくらいでこんな事なってたら……身体もたないって。特に、この無防備なねえちゃん相手だと。

 ……なんとか、自分を宥めて、戻ってきてみれば……。

 やっぱり、ナンパ男に捕まってる。

 つか、やっぱり、身体をパレオにくるんだままだけれど。

 はぁ、ヤレヤレ。

 あからさまに嫌がっているねえちゃんに言い募るナンパ男も大概だけど、それだけしつこくされて、逃げ切れないねえちゃんもねえちゃんだな。

 まさか、ついて行く事ぁないと思うけど……。
 ごめんな、と、心の中で謝って、困った顔でナンパ男に対処するねえちゃんを遠くから観察する。
 ねえちゃんが、どういう対処するかを知りたくて。

 けど……案の定、断りきれていない。おたおたして、言質を取られて、いいように解釈されて……腕を捕まれた。

 うっ。むかつくな、さすがに。
 見知らぬ男が俺のねえちゃんに触るなんて。
 助けて、やるか。

「あんた、何? 人の連れ、勝手に連れて行かないで欲しいんだけどな」

 明らかに、俺より年上の男。
 けど、負ける気はしない。

 俺が声を掛けると、男はねえちゃんから手を離したものの、俺を年下と見くびっているのがありありの眼差しで俺をにらみつける。

「尽ぃ……」

 真っ赤になった、涙目を俺に向けてくるねえちゃん。
 助かった、と、瞳が訴えている。
 すっげ……カワイイ。つか、頼られてるみたいで、嬉しい。

「なに、おまえ、この子の弟?」

 その通り。
 けど、そこではいそうです、なんて言えないでしょ。
 子供は及びでない的口調に、俺は怯まない。

「まさか。彼氏に決まってるじゃん。ひとのオンナ、勝手に連れて行かないでよね」

「っ!」 

 何か言いかけるねえちゃんの口を抑え、更に……その身体を抱き寄せる。

「!!」

 腕の中のねえちゃんの身体が緊張したのが分かった。

「ほら、ラブラブなんだから、あんたの出る幕ないし。な?」

 俺が目配せすると、鈍いねえちゃんでも勘付く所があったのか、俺にきゅっとしがみついてきた。

 こんな状況でなんだけど……ああ、幸せ。

 ナンパ男は何か言いたそうに口をひらいたけれど……むすっとして、肩をすくめて行ってしまった。

 ねえちゃんは……まだ、俺にしがみついてる。

「ねえちゃん?」

 頭をぽんぽんたたいてやると、ねえちゃんは顔をあげ、ほっとしたような緩んだ表情をした後、頬を膨らませた。

「誰が誰の彼女で彼氏なのよ……」

「まぁまぁ。ああでもしないと、あの手合いは諦めないからさ」

 ねえちゃんは、簡単に納得して俺の身体から離れた。惜しい……。

 けど、ホント、ねえちゃん、無防備だよなぁ……あの程度のナンパ男くらい、適当に巻けばいいのに。人もいいし、押しに弱いから…………って、なんか言っててオソロシクなってきたぞ、俺。
 よくこれまでヘンな男に引っかからずに無事で過ごせたよな……。

「尽?」

 かわいく笑って声をかけてくるねえちゃんに、俺は苦笑した。
 まぁ……俺が守ってやればいいんだけど、な。

「ねえちゃん、泳ごうぜ」

「え? うん」

 唐突に手を引いた俺に、戸惑いながら頷くねえちゃん。

 俺達は、適当な位置に荷物を置き、当然、嫌がるねえちゃんのパレオを外させ、海に入る事にした。

 ねえちゃんと俺は、結構目立ってた、と、思う。
 自覚あるんだけど、俺自身かなり人目を惹く方だと思うし……実際、ねえちゃんが着替えるの待ってる間、2度ほど逆ナンされたし。
 ねえちゃんも、また、スタイルいいし、一際色白いし……この水着姿見て思ったけど、かなり、男好きする体してるし。顔立ちは甘いのにな。いや、甘い顔立ちだから、余計に関心をそそるんだろうけど。

 ……でも、俺はねえちゃんにしか興味ないしぃ……ねえちゃんは俺だけのものだから。誰にも絶対に渡さないから。

 こんな俺って、大概一途だよな〜とか、我ながら思う。
 ……だから、さ、こんくらいの計略、許してくれよな、ねえちゃん♪
 


つづく




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<言い訳とか>

すみません。結局、続かせちゃいました(^^;)


いや、ついつい……(^^;)。尽語りがクセになっちゃったようです。

で、これは確実続きます。あ、書きあがってるので、近日中にUP。

夏、もう終わったのになぁ……(汗)。



ついでに、How to...のお話の方も続けようかと思ったんですが……
うう〜ん、かぶっちゃわないかな〜……と、考え中。

こっちのお話は、ねえちゃん完全天然。
向こうのお話はねえちゃんは普通テイストで、
互い知らずの両想い。
調子良かったら、つづき書いちゃうかも(^^;)。