| 《Sweet Kiss》 ……夢を見たの。 目の前にいる背の高い男の子は、きっと私と同じくらいの年齢。 こんな男の子知らないはずなのに……どうしてか、知ってる気がする。 どこかで見覚えがある整った顔立ちに、ふいと浮かんだ、悪戯っ子の表情を見て、私は確信した。 これは、尽だ、と。 尽はまだ小学生で。 身長だって私よりずっと低くて。 顔だってまるで女の子みたいで。 なのに、なんでか、目の前の男の子が、尽だって理解しちゃったの。 成長した尽は、すっごく格好良くて、私は見惚れちゃう。 いつも口癖のように言っている「イイ男」になれたのかもしれないな。 なんか、嬉しくて、胸が暖かくて。 ううん、それから、なんだか、妙にドキドキして。 私が見上げてると、尽は今度は優しく笑った。 顔中の筋肉を緩ませた微笑みは、これが夢の中だからか、まるで蕩けるように甘くて。 そんな表情、尽ができるようになったなんて、信じられない。 まるで、最愛の恋人に笑いかける男の子みたいな……。 そんな表情を私に向けてくるなんて。 不思議に顔に血液が凝集していく。 鼓動の高鳴りが激しくなる。 まるで私が彼に、恋、しているような……。 そう思って、恥かしくなって、俯いてしまったら……。 尽の長い指が私の顎に纏わりついてきて、強い力で顔を上げさせられて……。 キスされた。 わかんない。 わかんないよ。 弟にキスされてるのに、どうしてこんなに、ドキドキするんだろう。 ドキドキが止まらなくて……私は……。 ……夢から、覚めた。 現実の尽は、やっぱり小学生の男の子で。 身長だって私より低くて。 女の子みたいな顔に浮かぶのは、悪戯っ子の笑みで。 でも、尽の向こうには、夢の中の尽がいて……私に、微笑みかけてくる 数年後、夢の中のままに成長した尽は……どんな風に私に笑いかけてくるんだろう。 弟の尽が、おねえちゃんの私に、どんな風に笑いかけてくるんだろ。 きっと、あんな、甘い微笑みは、見ることはないに違いない。 そう思うと何故かすごく悲しくなって……込みあがってくる切なさを抑えるだけで精一杯だった。 「ねえちゃん……」 そっと、そっと呟いて、尽は眠る姉にキスをする。 気付かれないように。 姉に恋をしているなんて、気付かれるわけにはいかなくて。 だから、こっそり、キスをする。 眠り姫のように、キスで目覚める事のない姉に苦笑しつつ。 尽は、キスに想いを込める。 小学生な自分を歯噛みしながら、姉の唇を求めて笑う。 甘く、甘く蕩けるように笑って、眠る姉に想いを告げる。 「俺、ねえちゃんの事……」 そうして、幾ばくかの年が過ぎ……。 尽の身長が姉のそれを追いついて、追い越して。 女の子のような顔立ちが、男性のそれへと成長を遂げる。 尽が、甘く笑いかけて、そっとキスする。 夢のように。でも、夢じゃなく。 蕩けるように甘い微笑みも、そのキスも、全てが唯独りに向けられていて。 「ねえちゃん……」 囁く相手と、想いを、遂げる。 ※※おわり※※
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