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まえがき
葉月も、主人公も敢えて名前を出さずに
書いて見ました。
らぶらぶ短編。
ちょっぴり大人路線傾向(^^;)。
この題名を使いたかったので、書きましたが、
あまり関連なくなってしまいました(笑)。
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SIGNAL 〜Blue



 青い月の光。
 小さな窓から入り込んで、柔らかく室内を満たしてる。
 トクトクと小さく響く鼓動が心地よく全身を震わせて、安らかな寝息がまるで子守唄のよう。
 目の前には、愛しい人の寝顔。
 不思議ね、随分見なれちゃった寝顔のはずなのに、何度見てもこんなに愛しい。
 眠りについた整った顔立ち……以前はまるで人形みたい、なんて思った事もあった。
 そう……それぞれが理想的な形をもって、適切な位置に整然と配置された顔のパーツは、人が理想の存在をその手で作り上げたモノ……人形みたい。
 肌理細かい滑らかな肌も、ひょっとすると陶器かもしれない、なんて思って、触れて確かめたい思いを何度も押し止めたの。
 でも、ね……。
 現在、そっと、触れる頬。
 暖かくて、柔らかくて、彼がちゃんと生きてるんだって、分かるの。
 寝乱れたクセ毛も、こんなにさらさら。
 彼は、ちゃんと生きてる。私の傍にいる。
「ん……」
 小さくうめいて、眉根を寄せる。
 整った薄い唇がかすかに開いて、まとまった吐息を吐き出した。
 あっ……? ……うん、大丈夫、起していない。
 私、くすっと笑う。
 そう、彼は、確かに、存在して、私の傍にいるの。こんなに近くに。
 彼の頬に手を伸ばす。
 両手で頬を包み込む。
 暖かい。
 そっと寄せる唇。
 こんなに愛しくて、愛しくて……止めど無い想い。
 それを表すのに、ねぇ、どうしたらいい?
 閉ざした瞼を開けて。
 その緑の瞳で見つめて。
 そして、ねぇ……あなたから、口付えて


 
 頬に触れる優しい感触に目を開ける。
「おはよ……」
 そして、すぐ正面に緑の瞳を見つけて……ドキン、と鼓動が跳ねあがる。
「なに、してたの?」
「キス……」
 事もなくさらりと言う。
 寝起きにいきなり衝撃的な事を言われて、流れの悪い思考回路が、跳ねあがるように急激に活動を始め、結果、私、何も言えなかった。
 口はぱくぱく空回りだし、顔、真っ赤になってたと思うの。
 彼は、ただ、じぃっとそんな私を見つめてる。
「おもしろいな、おまえ、やっぱり」
 唇に優しい笑みを浮かべて、彼の手が私の髪をかきあげる。
「寝顔……かわいかったし」
「いっ……いつから、起きてたの!?」
「大分前。おまえの寝顔、見てた。いくら見てても、飽きないな」
 うっとりした優しい微笑み。
 なんて、綺麗。
「っ……あ、私の、寝顔なんて……」
 よだれ、ついていないよね? ヘンな寝言、言っていないよね?? 歯軋り、してないよね???
 恥かしくて、手で顔を覆ってしまう。
「いつも、俺の寝顔見てるだろ?」
「そ、そりゃ……」
 だって、寝ている事、多いんだもの。
 それに……あんまり綺麗で、見ているだけでどきどきして……幸せで……飽きないんだもの。
「私の寝顔なんか見て、面白い?」
 拗ねて、言ってみる。
 彼は、くすっと笑う。
「かわいい。見てるだけで、幸せ、だな」
 同じ事、思っていてくれるの?
 じぃっと見上げてしまう。
 彼は、なんで、こんなに綺麗なんだろう。
 まだ弱い朝日にさえ、きらきら煌いて見える。
 彼に見惚れる私……そんな私を優しく見つめる彼。
 私の首筋に冷たい指先が、触れる。
 指は数を増やし、徐々に私の顎に絡み付き……。
「……眠る姫を目覚めさせるのは、王子の口付……」
 彼は、まだ寝起きでぼぅっとしている私に至極優しく微笑みかけると、その綺麗な顔が近づいてきて……唇に優しい口付を貰った。
 

 抱き寄せられて、抱き締められて……。
 彼の胸の中で、私の止めど無い彼への愛は、彼にしっかり受けとめられているのを、感じた。
 それに、彼が私と同じ気持ちでいてくれるのも、確かに感じたの。
 だって、ほら、私の中で彼はこんなに暖かいんですもの……。
「ん……大好き……大好きよ……」
 全身に彼の温もりを感じて、彼の背に回した腕に力を入れて……彼をもっと近くに感じた。
「………愛してる……」
 彼は、低く耳元で囁いて……より強く私にその身を委ねた。


 何故だろう、部屋を満たす朝日が青い。
 ふたりを包んで、呑み込んで、外の世界から隔絶しようとするように。
 四角い水槽の中にふたりを閉じ込めるように。
 ふたりだけを閉じ込めて、青い光の中で寄り添うふたりは、ただ一対の金魚になったみたいだ。
 水槽の一対の金魚は、互い以外の世界を知らない、互いが全て。
 でも、きっと、それで、いいの……。


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