冬物語〜新春より始まる
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 31日大晦日。さすがに、じいちゃんたちも、遅くまで起きてる。
 居間に、うちの家族と伯父さん一家が集まって、ばぁちゃんの用意してくれた蕎麦を食べながら除夜の鐘聞いて。

 あぁ、なんか、これはこれで幸せだな。

 で、年越し番組にキリが着いた頃、真奈美さんがすっくと立ち上がって言い出した。

「私達、初詣行って来るわ」

 え? こんな時間に?

「こんな時間だからよ。すごい賑わいよぉ。本当は、年越しで行きたかったんだけど……さすがに、皆集まってるから、団欒で過ごしたいものね」

 じぃちゃんの家の近隣にある由緒正しい神社は、平素から各地から観光客が訪れるとかなんとか。
 俺も、かつて何度か行った事はあったけれど……こんな時間の初詣ははじめてだ。
 ねえちゃんは、真奈美さんと元々打ち合わせしてあったらしく、その言葉に嬉しそうに立ち上がって、俺を手招きした。

「人ごみすごいから、気をつけなさいよ? 車で行くなら、渋滞、大変よ?」

「大丈夫。穴場の道と駐車場知ってるから!」

「真奈美ちゃん、うちの子たち、よろしくね」

「任せといてくださいな!」

 親たちの言葉を受けて、俺達は、大晦日の夜の街に向かった。




 神社方面に近づくにつれて、地元の真奈美さんが知る裏道ですらすごい渋滞となってきた。皆、考える事は同じということだろう。

「うわぁ、マズイなぁ……」

 真奈美さん、ハンドルから完全に手を離して、頭をかかえてしまった。
 助手席のねえちゃんが、心配そうな顔で真奈美さんに問い掛ける。

「真奈美ちゃん、もうここら辺でいいよ」

「う〜……そりゃ、ここからは一本道だけど……でも、しばらく歩く必要あるよ?」

「大丈夫だよ。最近運動不足だから、ちょうどいいし」

「……それじゃあ……今日言った通りに行けるよね? あんた、何度もこの神社に来ているから多分なんとかなるでしょう? つか、道とか分からなくなったら誰かに聞けば教えてもらえるし……人の流れについていけば確実だよ。で、別のお社に行くのはタクシー使えばすぐだから、ね? 携帯通じにくいけど、メールくらいならなんとかなるし……某駅前の某ファミレスで朝の7時頃に……!」

 何の話?
 だって、真奈美さんが案内してくれるんじゃなかったのか……?

「うん、ゆっくりお参りして、観光してくるし。尽もいるから、なんとかなるよ」

「そうね、尽の方がしっかりしてそうだし……任せたから、尽!」

 えーと? 何が?
 呆然とする俺に、真奈美さんはにやりと笑う。

「ごめーん。家を抜け出す口実に、あんたたち使わせてもらった」

 はい?

「いくらお正月だってこんな時間に、ひとりで出かけたら怪しまれるじゃない? だから、ね」

「説明しなくてごめんね」

 ねえちゃんが謝る必要ないだろ。
 つか、なんで、俺達が口実にされなきゃならなんだ!?

 俺が不機嫌を顔に書くと、真奈美さんはくすっと笑ってウィンクした。

「だって、姫はじめしてくるから出かけてきます〜、なんて、言えないでしょう? ましてや、親が知らない相手と」

 ………………。

 ………………そういう事をさ、何事もなく平然と言うなよ……。
 ほら、ねえちゃん、きょとんとしてる。

「あら? あらら? 尽、もしかして、意味知ってる!? マセガキだな、まったく!」

 かすかに赤くなった俺の顔を見て、からかう真奈美さん……つか、言葉の意味に赤くなったんじゃなくてさぁ……俺が妄想していたことをダイレクトに突っ込まれた気になったからだよ。

 ねえちゃんと姫はじめ……! しかも、ふたりの初体験!
 って、真奈美さんの邪魔に会う前は考えてたのになぁ……。

「ひめ、はじめ……?」

 って、ねえちゃん、口を挟むなっ!

「あんた、意味知らないの? あははは……まったく、カワイイわぁ!」

 ぐーりぐりとねえちゃんの頭を撫ぜまわして、真奈美さん、大笑い。

「もぉ、食べちゃいたいっ!」

 うわ、冗談に聞こえねぇえ!
 つか、そのまま、ちゅーと、ねえちゃんの頬にキスをする。
 唇奪われなくて良かったよな……したら、俺と間接キスじゃん……って、嫌な想像……。

「けど、私が意味教えてもつまらないなぁ。帰ったら、彼氏に教えてもらいなさい。きっと、色々、手取り足取り教えてくれるから。ふふふ……」

 ………だぁからさぁ、そういう余計な事、ねえちゃんに吹き込むなよ……。

 ほら、ねえちゃんがチラチラと俺の方見てるよ……多分、いや、絶対、後で俺、聞かれるしっ。
 そう、聞かれたら、真奈美さんに言われるまでもなく、手取り足取り色々ねえちゃんに教えたい! けど……なんか、そういうわけにもいかないだろ、まだ、さ……ちっ。

 あぁ! まったく……女も、この年になると羞恥心が薄くなるのかね!!

 八つ当たりかねて、ぼそっと、呟いた言葉は真奈美さんに聞こえていたらしい。
 渋滞でほとんど動かないのをいい事に、後部座席の俺をぐるっと振り返って、俺ににこやかに笑って見せた。

「あんた……女に年の事言っちゃいけない、って礼儀知らない?」

 にこやかな笑顔の下は、確実に般若っ!

「そんな無礼な子は……寒空に、出てけっ!!」

 後ろのドアを器用に開け、俺は頭をどつかれた。

 ふっ……別に、構わないしっ!
 不貞腐れた俺、素直に真奈美さんの車を降りた。
 どうせ、この渋滞じゃ、徒歩の方が早いくらいだよ。

 はぁぁ……息が白い。
 俺はマフラーを巻きなおして、街篭の並ぶ参宮道を歩き出した。
 てくてく、とぼとぼ、歩いていくと……。

「尽!」

 って、胸躍る声が後ろから!
 勿論、言うまでも無くねえちゃん。

 真奈美さんの車から降りて、俺に走り寄って来る。
 白い息を吐いて、頬を真っ赤にして……あぁ、もぉ、かわいいんだからっ!

「ねえちゃん、もっと先まで車で移動しても良かったのに。寒いだろ? どうせ、俺、きりいい所で待ってるつもりだったし……」

「ううん。私、尽と一緒に歩きたかったから。それに……真奈美ちゃんの事、悪く思わないで、って言いたくて……」

 うっ……嬉しい言葉と共に、あまり嬉しくない言葉も……。

「真奈美ちゃんの恋人、伯父さん達に許してもらえなさそうな相手なんだって。辛い恋、してるんだよ。だから、ちょっとくらい協力してあげたいの」

 ……それは、この間の夜、ふたりの会話を盗み聞いて知ってる……。

 そりゃ、ねえちゃんが、自分の身の上と照らして同情するのは分かるけど……真奈美さんの場合さぁ、俺への態度が態度なんだよっ!
 もうちょっと、こう、穏やかに接してくれれば、俺だって喜んで協力でも同情でもするさ。
 なのに、俺の扱いがまるで……虐待!

「真奈美ちゃんね、ホントは尽の事がカワイイんだよ。ただ、真奈美ちゃんの信条として、男は強くなきゃ、っていうのがあるらしくて……だから、ちょっと、厳しく当たっているんで……」

 ……って、真奈美さんに吹き込まれんだな、ねえちゃん。
 まぁ……素直に言って、真奈美さんの事はすげぇ苦手だけど、決して嫌いではないんだけど、ね。
 ねえちゃんに免じて許して、やる。

 そう、それに、何より……今回、真奈美さんのアリバイ工作にかこつけて、こうしてねえちゃんとふたりで初詣に出てこられたしな!
 これは、かなり、嬉しいぞ。

「ねえちゃん……」

「ん?」

 肩を並べて歩きながら、俺、ねえちゃんに甘えるような声をかけた。

「手、繋いでいい?」

「え? あ……うん」

 ちょっとだけ、ねえちゃん、照れた顔をする。
 かわいいなぁ……真奈美さんじゃないけど、マジ、食べちゃいたい!

 互いに手袋をした手をきゅっと繋いだ。
 吐き出す息がすぐに真っ白くなるほど寒いお正月だけれど……すげぇ、暖ったかくて幸せな気分だ。
 互いに顔を見合わせて、微笑み合って……俺達は歩き出した。

 


 神社が近づくにつれて人ごみがすごくなる。
 こんな真夜中に、こんな田舎に、どこから集まったんだ、ってほどの人気があった。

 神社境内に入る為の大鳥居をくぐる頃には、そこからすでに満員電車状態に近くなってきて……俺達は、迷子にならない意味もこめて、さらに手を強く握り締め合った……って、どさくさに紛れて、かなり嬉しい! しかも、手袋だと滑って手が離れちゃうから、って、今や手袋なしで手を握り合ってて……直にねえちゃんの温もりが伝わってくる。
 それに、当然、人ごみがすごいから、かなりねえちゃんと密着してるし!

 大鳥居から神社の本殿に行くまではかなりの距離があり、やたらと広い敷地内のその途中の各所で焚き火の炎が上がっていた。
 夜の闇の中、赤い炎が風に煽られて色を変え、形を変え、天を焦がす勢いで燃え盛る。周囲全てを炎の赤に染めている。
 見ているだけで、暖かくなってくる。心が、浮き立つ。
 一際大きな焚き火の傍は、人だかりができていて、めいめいに炎で身体を温めている。多少の火の粉なんて気にしないで。餅を焼いてるおじさんやおばさんもいるし……すごいなぁ。

 あ、なんか、俺達もタダで餅もらっちゃったよ。
 餅を炙る道具がないから、ここでは食べられそうもないけど、帰ったら食べような、ねえちゃん!

 なんか、すごく、幸せな気分だ。
 あ、なぁなぁ、さっきそこの人たちが言ってたんだけど、甘酒もただで飲めるみたいだぞ! 参拝終わったら、行こうな!

 これも、デート、だよな。
 新年早々、ねえちゃんと恋人同士として初詣……幸せすぎて、怖いや。
 ねえちゃんもそう思ってくれてるよな。うん、思ってくれてるって、分かるぞ。
 ずっと幸せそうに笑っててくれる。ねえちゃんらしいカワイイ笑顔を、俺に見せてくれる。
 幸せが、幸せを呼ぶ。

 本殿へと続く階段を、人ごみに押されながら、ゆっくりゆっくり上っていって、上りきったそこ、神社本殿を目にしたお賽銭箱の前で、手を合わせて祈った。

 ――ずっと、ねえちゃんと、こうしていられますように。

 と、お祈りして、ちょっと考えて……付け足した。

 ――あ、でも、この鈍いねえちゃん相手だから、できれば進展は欲しいので……神様、そこの所もオネガイシマス。

「尽、随分長くお祈りしてたみたいだけど……何をお祈りしてたの?」

「……ヒミツ。ねえちゃんこそ、どうなんだよ?」

「私も、秘密、だもん」

 でも、言いながら、頬が赤くなってる。
 どうせ、俺と似たり寄ったりの事、願ってたんだろうな。
 あぁ、もぉ、かわいいんだから、まったく!

「帰り、おみくじ引こうぜ」

「うん……って、あ〜そういや、ここの神社、おみくじないんだよ」

「マジ? そんじゃ……お守りくらい買ってくか……」

 なんて、俺達が会話しながらほのぼの歩いてると、隣を歩く若い女の子の集団――多分、俺とそう変わらないくらいだろう――の会話が耳に入ってきて……。

"ここの神社、カップルで来ると、分かれるってジンクスあるんだってさ〜""あぁ、知ってる。女の神様、しかも未婚の神様祭ってるから、焼きもち妬くんだって""結構カップルいるよねぇ""あはは! うちの姉ちゃんの友達も、なんか、ここに来て別れたって""結構マジかもね。私、彼氏できてもここには来ないようにしよー"

 うっ……。

 思わず、繋いだ手を離しちゃったよ。
 ねえちゃんの顔を見ると、ねえちゃんもその会話が聞こえてたらしく、微妙に困惑して苦笑いを浮かべていた。

 そんな神社で、よりによってねえちゃんとの事をお願いするなんて……ううっ……。

 確かに……お守り買いに行っても、安産とか交通祈願はあっても、最近どこの神社でも見かける、良縁祈願系のお守りが、まったくなかった……。

 イタタタ……。

 いや、普段はそういう事、信じちゃいないんだけど……お正月だし。初詣だし。なんか、ご利益ありそうな神社だし……。
 俺、もしかして結果的に、願った事と逆の願いをしちゃったわけか!?

 朱袴をはいた若くて綺麗な巫女さんから、お土産含用に買ったいくつかのお守りを受け取りながら、愕然としちゃってる俺にねえちゃんは苦笑しながら、声をかける。

「あのね……さっきの話だけど……」

 俺の手を、きゅっと握ってきて、ちょっと上目遣いに見上げてくる……うっ、かわいい……。
 一瞬、愕然とする事さえ忘れちゃったよ。

「私達……ただの、恋人、じゃ、ないでしょう?」

 恋人、という所をちょっと言いにくそうに言って、それでも言葉を続ける。

「姉弟、だから……ホントは姉弟で、恋人で……だから、あのジンクス、無効じゃないかなぁ? 女神様、恋人達に焼きもち妬くって言っても……私達のことは、面白がりそうじゃない?」

 ……発想の転換?

「ホラ、女の人って、大概そういうゴシップネタ、好きでしょう?」

 そりゃ、まぁ……。

 ね? って、俺を見上げてくるねえちゃん……なんか、やっぱり……ねえちゃん、だな。今更だけど。
 つかさ、ねえちゃん自身も、きっと、そう考えたいんだよな。
 うん……だな、俺も、そう考える。

 俺、ちょっと落ち込みかけていた気分が、見事に浮上してきて……きゅぅ、ってねえちゃん抱きしめた。
 腕の中で、ねえちゃんがもがもがと暴れて、周囲からちょっとした好奇の視線を集めてしまったけれど、別に構わない。

 あぁ、良かった。ここが地元じゃなくて。
 誰かに見られる心配、しなくてもいいんだもんな!
 そりゃ、もう、ラブラブし放題。

「つ、尽っ! いい加減、離してよぉ!」

「やだ、ね」

 今度は、姉ちゃんを背中から抱きしめて、そのまま歩き出す催促をした。

「歩きにくいんだけど……」

 ぶぅぶぅ文句をいいながらも、ねえちゃんは照れてる。
 耳が真っ赤だもん。
 周りからは、俺達、完璧にバカップルに見えてるだろうな。全然構わないけどね!つか、むしろ、バカップル万歳! はははは〜〜。

 それに、実用性だってちゃんとあるぞ。
 ねえちゃんの背中に抱きつきながらなもんだから、かなり歩きにくいんだけど、人ごみの中、手を繋いで歩くよりは離れる可能性低い……よな?
 ……って、俺の言い逃れに、言い包められちゃうねえちゃんって、ホント……(以下同文)。

 甘酒を無料(もしくは、心づけのお賽銭)で飲ませてくれるところまで来たところで、勿論、俺はねえちゃんの背中から離れたわけだけど……それまでぴったり密着していたから、すげぇ寒く感じた。ねえちゃんもそれは同じだったらしく、ぶるっと身を震わせる。

「ちょっと待ってな。俺、甘酒貰ってくる!」

 ストーブのついた参拝者の休憩所にねえちゃんを待たせておいて、なが〜い行列からやっと脱して戻ってくると、ねえちゃんは、本当に嬉しそうな笑顔で俺を迎えた。
 ちょっとの時間でも、ひとりきりで寂しかったんだな。
 カワイイったらないや。

 甘酒を飲んで、身体を暖めながら俺達は幸福感に包まれる。
 両手で甘酒の入った紙カップを包み込んで、ちびちび飲みながら、ねえちゃんは、思いついたように、目を丸くして俺を見上げてきた。

「あ、ねぇ、そういや、今思い出したんだけど」

 ん〜何かな?

「今日ね、真奈美ちゃんが言ってた"姫はじめ"って、何の事?」


 …………っ!!


 俺、慌てて周囲を見回した。
 だっ、誰も聞いちゃいないよな!?

「彼氏に教えてもらいなさい、って……尽なら、いいよ、ね?」

 寒さで赤らんだ顔を、それとは別に赤らめて、俺をじっと見上げてくる。
 その答えが、確実に俺の口から語られるのを、疑っていない。

 おっ、俺……どーしたらいいの!?
 こんな、人間ざわめく場所で『姫はじめ』について説明しろ、って!?

 いや、まぁ、家族のいる場所で聞かれなかったのは、ヨシとしよう。けど……せめて、家に帰って、ふたりきりの時に聞いて欲しかった。
 それなら、何に憚る事なく、"姫はじめ"を実地で教えてやれたのにっ。

「あ〜……あのさぁ……」

 ここで、何をどう言うべきか考えて……考えて……。
 期待に満ちたねえちゃんの瞳を見て、冷や汗を流す俺。
 こくん、と息を飲み込んで……。

「帰ってからじゃ、ダメ?」

「え〜〜っ……なんでぇ」

 期待が、不満に変わる。

「教えてくれるくらいいいじゃない。ねぇ、姫はじめって何なの!?」

 憤りから、大声で言い始めたねえちゃん。

 うわっ、マズイって!

 周りにいた何人かが、その言葉に気付いたのか、目を丸くした好奇の視線でこっちを見てきた。

 俺、咄嗟に姉ちゃんを抱きしめて、言葉を続けさせなかった。

 ねえちゃん、手にした甘酒を取り落としてしまって……俺の腕の中で、硬直している。
 ……って、余計に周りの注目を集めていそうだけど……でも、放っておいたら「姫はじめ」を連呼しちゃいそうだったし……。

 で、俺、腕の中で大人しくしているねえちゃんの耳元に口を持っていって、小さな小さな声で、簡単に説明した。

『男と女が、年のはじめにえっちする事だよ』

 ねえちゃん、その言葉を理解するまでにしばらくかかったみたいだけど……説明からしばらく後、うめき声が聞こえた。
 自分が、どんな恥かしい言葉を言ってしまったか、後悔してるんだろ。

 姫はじめ=秘めはじめ。俺が調べたところによると――思春期の青少年、国語辞典を手にした時、まず調べるのはこの手の言葉でしょう!――日本の暦に基づいた、もっと奥深い意味があるみたいだけれど……今では、俺がねえちゃんに説明した意味合いの方が普通に知れ渡っている。

 俺、腕の中でねえちゃんが、顔を真っ赤にしている事に気付いて、そっと身体を離した。

「ねえちゃん?」

 声をかけると「うぅ〜」と低いうめきを洩らして、気まずそうに、ちらちら俺に視線を送ってくる。
 俺に対しても恥かしいし、周囲に対しても恥かしくて、居たたまれないのだろう。
 何度も、しつこいほど言うけど……かわいすぎだ。

「なぁ、もう一杯甘酒飲んでから行こうか?」

 くすっと笑ってねえちゃんの手を引いていってやる。
 真っ赤な顔からすると、今はむしろ頭を冷やしたいだろ。

「こんな賑わいある場所だからさ、誰もあんな事、気にとめてやしないさ」

 俺の言葉に、ねえちゃんはまだうめきをもらしたけれど……二杯目の甘酒を飲み終える頃には、にこにこ笑顔のねえちゃんに戻っていた。

 俺達は、その後、そこの神社の参拝者が買い物するための商店街――勿論、元旦は深夜営業してる――で買い物して、軽く食事して、同じ神社の別のお社まで移動して、そこでも参拝して……。

 本当に、普通の恋人同士のデートみたいで、楽しかった!
 新年早々こんなハッピーな時間を過ごせるなんて……不本意だけど、ちょっと真奈美さんに感謝してみたりもして。

 歩き通し、人ごみにあたってへとへとになりながらも、俺達は、真奈美さんとの約束の場所に時間どおりについた。もっとも、そのファミレスもすごい人で、30分以上待たされたけれど。でもって、真奈美さんは、それからさらに30分後くらい……俺達が食べ終わる頃くらいにやっとやってきた。

「ごめーん。遅れちゃった。お詫びに、おごる」

 当たり前。

 ちなみに、ファミレスで真奈美さんに例の神社のジンクス『恋人同士で参拝すると別れる』というそれを聞いてみたら、実際、地元では有名な話らしかった。

「だからさー私はダーリンとは結婚するまで絶対に参拝しないもんね。つか、あんたたちも、もし、恋人連れてこっち来るなら、気をつけなよ?」

 だって。

 そういう事は、もっと早い目に言ってくれ!
 だから、俺は、真奈美さんの車で帰路につきながら、心の中でお祈りした。

 なぁ、ここの神社の女神様、姉弟で恋人な俺達って面白い対象だとは思わない? いっそ、もっと面白がって、俺達の仲を深める方向に……! とか、叶えてくれないかなぁ!?





つづく





--BACK--



<言い訳とか>

当初からかなり加筆したので、結構長くなりました。
元旦初詣話、です。
結構、ラブラブ、でしょう?

ちなみに、この神社の基本設定は、
うちの地元にある神社です。
あのジンクスも、地元では有名な話です(笑)。

次回は、ラブラブシーンです。
っつても、エロにまではまだ行き着かないです(笑)。
勿論(は?)、そのうち行き着きますけどね!(あぁ、もぉ…)

つか、四季シリーズの冬編、もう10話行ってるよ…。
どんどん長くなってきてる……。