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冬物語〜新春より始まる ……で、結局、やってきました、じぃちゃんの家。 そりゃ、さぁ、長年会っていないじぃちゃんだし、たまには顔見せないとなぁ、とか思ってるし、体調悪いなら仕方ないとも思えたんだけど……。 なんか……異様に元気なんですが? 目を丸くする俺達に、ばぁちゃんが言うには……俺達の顔が見たくて、仮病を使っていたとかなんとか。親父もお袋も、ねえちゃんも苦笑する中、俺だけが、呆然としていた。 ……まぁ、ここ3年ばかり、全然会ってなかったから、確かに、たまの孝行もしてやらないといけないんだろぉけど……。 けど、けどさぁ……折角、ねえちゃんと両想になって、これから、って時に……! じぃちゃん、ちょっと恨むぞ……。 不貞腐れながらじぃちゃんの家に滞在する事になった俺だけど……ちょっぴりねえちゃんとの仲も進展することになったし、まぁ、いいかな。……もっとも、とんでもないお邪魔虫もいたんだけどね。 じぃちゃんの家は、ばぁちゃんと二人暮しながら、田舎の家らしくかなり大きなたたずまい。離れなんかもあるし。 すぐ隣の敷地に、俺達から見たら伯父さん夫婦が住んでいるんだけど、お正月なんかはじぃちゃんの家に親族が集まったりする。 で……じぃちゃんの家は広いとはいえ、その殆どが普段使われていずに荷物置きになったり、大幅な掃除が必要だったり。客が泊まれる部屋はかろうじて離れの一間しかないとの事で、俺達一家は、その離れの一間に泊まる事になりそうだったんだけど……親父とお袋は、自ら、伯父さんの家に泊まる事を言い出した。 自分達は親族として大人の付き合いがあるから、じぃちゃん、ばぁちゃん孝行に、かわいい孫の俺達を置いていく、ってんだ。 つか、じぃちゃん達の前では大っぴらに騒げないし、自分の子供に対しては説教臭くなるじぃちゃんの相手は疲れるもんだから、体よく自分達は伯父さんの家に逃げてくつろぐつもりなのがありありなんだけど……。 まぁ……いいけど……。 と、俺は思って、はっとする。 そぉ、よく考えたら……ねえちゃんと俺の、ふたりきりで宿泊って事になるのか!? しかも、離れの部屋なら、じぃちゃん達の寝室は遠い! 年寄りは、朝も早いけど、夜も早いし……………。 一瞬にして、俺の頭の中にアレコレとめまぐるしい妄想が働き出す。 ねえちゃんとふたりきり、狭い一室、4泊………しかも、俺達は今、ただの姉弟でなく、想いを通じ合った恋人同士……! 何もナイ方がオカシクないか!? 俺、感謝したね! そぉ、神様の悪戯に。 いや、悪魔の気紛れなのか!? この年末から年明けまでの約5日間の滞在……俺の頭の中の妄想が激しく蠢きだす。 この正月の間に、ねえちゃんと俺の仲は確実に進展するだろうと、信じて疑わなかった……んだけど……。 「久しぶり〜」 ……って、やってきた俺より丸一回り上の従姉に、愕然とした。 簡単に掃除を終え、布団を運び終わり、荷物をまとめて……さぁ、これから風呂に入って、ねえちゃんと水入らずで……って、思っていた矢先だった。 「なんかさ、親たちうるさいから、こっちに来ちゃった。色々、話したい事あるし、ね、いいでしょう!?」 この従姉のねえちゃん……真奈美さんは、うちのねえちゃんを妹のように可愛がっていた。 なんか、俺が生まれる前から俺がまだ幼い頃、ねえちゃんはこの人にすごく懐いていたらしく、休みごとにこっちに来ては、"従姉のお姉ちゃん"の後をついて回っていたとか。 ねえちゃんのねえちゃんらしくない性格は、多分、ここら辺から来ているのか? 対して、俺は、どうも、この真奈美さんとは相性がよくないらしく……あんまり、好かれていない……というか、俺も懐いてはいない。 子供の頃、苛められた記憶があるからかもしれないが。 「でさぁ、尽の子供の頃って、ホント生意気で苛めたくて仕方なかったのよ、私」 なんて、今もいけしゃあしゃあと言い切ってくれた。 「しかも、ねえちゃんべったりで私には全然なついてくれなかったしね」 そりゃあ……会うたびごとの挨拶が頬抓りだったり、抱き上げて逆さ釣りだったりしたら、幼い子供心に怖れもするだろ。尻叩きもされたっけなぁ……。 そういや、夏にプールに泳ぎに行って、足の届かない水深のプールに突き落とされた事があったけ(当時5歳)。あと、クリスマスにジュースだと偽ってカクテル飲まされて、翌日ひどい二日酔いになった事も(当時7歳)。そうそう、一番最近……最後に、こっちに来た時、夏祭り行って、俺ひとりが神社においてけぼりくらって、土地カンがないものだから、帰り着くまで相当苦労した気も……(当時9歳)。 あぁ、思い出せば、キリがないっ! 俺、ねえちゃんとの事を邪魔された事もあいまって、仏頂面を崩せない。 「それにしても、尽って大きくなってびっくりよ。何、やっぱり背伸びしたいお年頃?」 にこにこというより、にやにや笑って俺に問い掛けてくる真奈美さんの言葉の奥に潜む悪意?に気付いた俺は、げんなんりして風呂の用意を持って立ち上がった。 「俺、風呂先に入ってくる。真奈美さん、いつ帰んだ?」 嫌味含みに言ってやると、真奈美さんは、目を丸くして、くすくす笑った。 「今日はここに泊まるわよぉ。積もる話もあるしっ。あ、大丈夫大丈夫、衝立持ってくるから、あんたは気にせず寝てて頂戴。いくらお子様でも、女性の寝顔、見るものじゃないわよ」 カチン。 なんつーか、この人も、大概癪に障るというか……ねえちゃんは、ちょっと苦笑して俺を見ていた。 ねえちゃん、大好きだもんな、この人のこの豪快さ。 今、俺と真奈美さんどっち取る? って聞いたら、きっと困惑してしまうだろう、絶対に。そして、真奈美さんを選ばれたら、目も当てられない……。 あーもぉ……俺、なんてついてないんだろ……とほほ……この分じゃ、滞在中、夜毎に真奈美さんが泊まりに来そうだな……。 俺の欲望、空回りっ! で、俺が風呂から帰ってくると、会話に花を咲かせまくっていたふたりは、ふたりで一緒に入るんだ、って、風呂に出て行って……俺は、衝立の陰でフテ寝する事にした。 ねえちゃんと風呂に入れる真奈美さんが羨ましい……って、そういや、真奈美さんも一応女なんだな……ふっ……。 俺が、旅の疲れにうとうとし始めた頃、長風呂を終えたふたりは帰ってきて……やっぱり、かしましい。 女は3人寄らなくても、2人でも十分姦しいもんだ。 とういかさ、俺が寝てるんだから、もっと気を利かせてくれよ、特に真奈美さん……地声デカイんだから。 でも、なんとなく、ふたりの会話は気になって、それとなく聞いていた。 最初の頃は、ねえちゃんの高校時代とか大学の話とか。 でも、どこからか……いや、真奈美さんが意識的に声色を変えて、興味深げに問い掛けた。 「で、あんた、彼氏はいるんでしょ?」 「……っ!!」 あ……なんか、こう、核心というか……。 一気に目覚める俺は、ばっちり聞き耳を立てる。うさぎさん、もしくはダンボの耳のごとくになった俺の耳は、集音に集中する。 素直で単純なねえちゃんは、押し黙ってしまう。 まぁ、まさか俺とは言えないだろうしな。 ……それは、残念だけど仕方ない。 でも、ねえちゃんがどう言い逃れするのかが気になって、聞き耳を立て続ける。 「あ……いっ、いる……じゃなくて、いた……というか……その……」 言いよどむねえちゃん。 真奈美さんは、当然、勘ぐりだす。 「どっち? 何、なんかヤバイ相手? それとも、別れにもめてる?」 「えーと……その……」 ねえちゃん、助け舟を出してやりたいけど、ここで俺が口出しする方が確実にマズイだろう。 「クリスマスに別れて……それから……」 「別れた? クリスマスに? へぇ……なんか、切ないね。喧嘩でも、した」 真奈美さんの声が優しくなる。 「あ、ううん。でも、その、いざこざで別れたわけじゃなくて、私に別に好きな人がいて……」 「あ、そうなんだ、あんたがフッたワケ? やるわね! で、その好きな相手って?」 真奈美さん、突っ込みまくり。 そして、ねえちゃん、どもりまくり。 言い訳、ヘタなんだから、もぉ……。 「……えーと……だ、だから、その……なんだか、一応両思いだと思うけど……え、と、まだ、全然付き合いらしくなくて……」 真奈美さんの言葉の包囲網からどうにか逃れようと、身をよじっているねえちゃん。 けど、真奈美さんはなかなかにしつこい。 「あんたの事だから、きっと付き合いも奥手なんでしょうね。キスくらいはしていると思うけど……もしかして、あっちの関係は、まだ?」 …………ヲイヲイ。そんな事、ねえちゃんに振るなよ。 「あっちの関係?」 やっぱり、きょとんとして問い返している。 「あはは。あぁ、えっちはまだしてないか、って」 「………っ! えっ、えっち、って、その……」 息を飲むねえちゃん。 多分、俺の気配を探ってる。 俺だって、さすがにその会話はちょっと気まずい。 俺の気配を探るねえちゃんを上手く誤解してくれた真奈美さんは、ケタケタ笑った。 「尽なら、もう寝てるんじゃない? やっぱり、弟に聞かれるのはマズイか。あははは」 多分、ねえちゃん、顔を真っ赤にしてるだろうな。 でもって、どうすれば上手く言い繕えるが考えてる。 ねえちゃんの無言をこれ幸い、と、真奈美さんは今度は自分の事を語りだす。 「私はねぇ、付き合っている相手いるんだけど、まだ、誰に言ってないんだぁ」 「……え? どうして?」 ねえちゃんは、自分の事から話題がそれて、ちょっとほっとしながら……けど、真奈美さんの意外に切なげな声に本気で驚いている感じだ。 「だって、一回り以上年上の、バツイチ子持ちだもん」 「え!?」 「うん。あんたに言うのが始めてかも。まだ、誰にも言わないでね」 くすっと悪戯っぽく笑い、続ける。 「きっと、誰にも、分かってもらえないから、私達が本気だって。許されないから……だから、まだ、内緒。あんたは……どう思う?」 ちょっと、不安そうな真奈美さんの声にねえちゃんは……。 「……分かってもらえなくても、許されなくても………それでも、好き、なんでしょう? それじゃあ、周りの事なんて、関係ない、と、思う……それに、きっと、全員が全員、分かってくれないわけじゃないと思うもの。ひとりでも、ふたりでも、分かって、認めてくれる人がいる。そして、そんな人がいたら、すごく心強い………と、思う、から」 ねえちゃん……。 それは、ねえちゃん自身の事だ。 自分の事、省みて、言ってるんだ。 ちょっと、胸が痛くて……それから、嬉しかった。 真奈美さんはしばらく沈黙して……ふふっと、柔らかな笑いを吐き出した。 「あんたも、もしかして、そんな恋、してる?」 真奈美さんの突っ込みに、ねえちゃんは、うっ、と息を飲むけれど、それ以上、真奈美さんは問い正す事なく、大きく息を吐き出した。 「そうね、少なくとも、あんたは分かってくれた。それは……やっぱり、嬉しいや。心強いよ」 衣擦れの音がうする。 多分、真奈美さんがねえちゃんを抱きしめてる。 「あんたは、いい子だね。あんたが、そんな辛い恋してるなんて、ね。あんたに辛い想いさせる相手なんて、私、許せないけど……それでも、好き、なんだ?」 「………うん、大好き」 ねえちゃんの笑いを含んだ、幸福そのものの声音に、俺、胸が跳ね上がる。 嬉しくて。 ただ、すげぇ嬉しくて。 「じゃぁ、いい恋にしないと。私にも、いつか、会わせてくれる?」 ……って、ちょっと怖い真奈美さんの言葉に、ねえちゃんは、ふふ、と、笑っただけだった。 「お互い、周りが何を言おうと……幸せな恋にしよう、ね?」 「うん……」 それから、ふたりの会話は途切れていき……俺も、すぐに、意識を眠りに溶け込ませた。 夢の中には、やっぱりねえちゃんがいて……幸せそうに俺に微笑んでくれてた。 うん、俺、ねえちゃんを幸せにするから、絶対に。その笑顔、曇らせないから。 ……って、誓っているところに、突如、タキシードを来た真奈美さんが現れて、俺からねえちゃんを奪い取っていった上、ウェディングドレスをねえちゃんに着せて、チャペルで挙式……! あああぁぁ……! 夢の中でもねえちゃんを真奈美さんに奪われた。 何てことだっ。ねえちゃんを返せ〜、この悪魔め〜〜っ!! って、叫ぶと、真奈美さんの頭から角が生え、背中からコウモリのような羽が生え、タキシードがそのまま真っ黒な悪魔の衣装に変わり、ねえちゃんを抱きかかえて飛んでいってしまった。 ひでぇ! おっ、俺のねえちゃん、だぞっ!! この、大悪魔〜〜!!! 「……………あ、悪魔……」 ゴイン。 目覚めて、まず真奈美さんの顔を見て発した言葉に、一気に拳骨が飛んだ。 容赦ない。手加減皆無。 再び、眠り?に落とされそうな衝撃に俺はどうにか耐え、自分の状況を一気に把握した。 「朝ゴハンだよ! いい加減、起きなさい!」 あ〜……衝立の向こうでは、やっぱりねえちゃんがパジャマのまま眠そうに布団の上に座り込んでいて、真奈美さんだけがやけに元気だ。 「ふたりとも、さっさと用意して居間まで来なさいね。おじぃちゃんたち、お待ち兼ねだよ!」 年寄りの朝と一緒にしないでくれ……まだ、7時前じゃん……。 「悪かったわね、年寄りで!」 ゴイン、と、もう一発飛んできた拳骨に、俺、頭を抱えた。 真奈美さんは、そのまま、部屋を出て行って、残された俺は……まだぼーっとするねえちゃんに声をかけた。 「ねえちゃん、おはよ。よく眠れたか?」 「…………。………うん……おはよぉ……」 かなりずれて返って来た返事に、ねえちゃんの低血圧具合を思って苦笑する。 「俺も着替えるから、衝立、動かすぞ? 寝ぼけてないで、早く着替えろよ」 俺の言葉にゆっくり頷いたねえちゃんは、欠伸をかみ殺しながら、もそもそ、パジャマのボタンを外しにかかってた。 本当は、衝立なんていらないんだけどね、切実に! はぁ……こんなに近くに最愛の人がいるのに、キスさえできないのか……。 ……あ、でも、今ならまだ間に合う? いそいそと着替え終わり、衝立を隔てた向こうを覗き……。 ラッキー、ねえちゃんの下着姿拝見っ! 朝から、イイ感じ。 鬼のいぬ間に……。 「ねえーちゃん」 「………っ!? ひゃぁう!?」 下には既にスカートをはいているけれど、上はまだ、ブラだけ。セーターを着ようとしている所だった。 オイシイぞ。 ねえちゃんの素肌は暖かくて、滑らかで……すげぇ気持ちイイ! 「つ、尽ぃ!?」 「俺が着せてやろうか?」 背中の真中、ブラの紐の下、肩甲骨のあたりにちゅっとキスをすると、ねえちゃんの身体が、敏感に震える。 「ばっ、ばかっ!」 真っ赤な顔で怒鳴りつけてくる。 本当に、かわいくて……たまらない。 「離してよっ!」 「いやだ」 セータを着込みにかかるけれど、俺が邪魔でちゃんと着られない。 「キスしてくれなきゃ、離れない」 「………っ! っ、も……」 振り向いてきたねえちゃんは、やっぱり真っ赤な顔だけれど……唇を尖らせているけれど……でも、怒りながらも、照れているらしく。 「……目、塞いで」 たまらなく、かわいいんだから……! で、目を塞ぐと、ねえちゃんの唇の感触が、俺の唇に…………?? じゃなくて……。 「ひでぇ……」 額にキスされた。 「だって、唇なんて言ってないじゃない。さ、離してっ。真奈美ちゃん、待ってるし」 ……真奈美さん、か……。 ああ、あの夢は、やっぱり、正夢なんだ。 きっと、ここでの滞在中は、真奈美さんにねえちゃんを取られるんだ……俺、きっと……。 あぁあぁぁ……あの、女悪魔めぇえぇっ!! 俺の頭の中で、悪魔な真奈美さんがケケケケ、と、笑って羽ばたいていった。 そんなこんなで、その日は地元の観光名所に真奈美さんの車で遊びに行って(真奈美さん曰く、俺は、あくまでおまけだとか……ふん)、その夜も、真奈美さんは離れに泊まりに来た。 勿論、ねえちゃんも真奈美さんにべったりだ。 ちぇ……どうせ、俺なんてさ……。 もっとも、大晦日の夜は、ちょっと……違ったけれど。 つづく |
<言い訳とか>
オリジナルキャラ、また出てます。
今度は、姉さん系キャラです。
尽の天敵。
次回は……お宮参りのお話。
短めで、内容薄い……カモ?