冬物語〜小雪舞い落ちる頃
<後編>



 最初、よく分からなかった。

 何が起こってるのかわららず、頭の中に浮かんだのは……夏の日、初めて尽にキスされた時の事……「俺もファーストキスだよ」って、言ってた。

 なんで、そんな事が浮かぶのよ……脈略ないったら……。
 でも、でもでも……目の前の光景と、その時の事が自分の中で重なったら……すごく、胸が痛くなってきた。
 まだ11歳の子供のエリカちゃんにするキスと、姉である私へのそれなんて、きっと同じレベルなんだろう、って、思った。

 胸が痛くて、立っていられないような眩暈がふっと襲ってきて、私……お盆を、落としちゃった。
 途端、振り向く尽。

 目を丸くして、何か言いたげに口を開いたのを、私、遮る。

「ごっ、ごめんね! あはは……びっくりしちゃって。あ、すぐに片付けて、新しいの持って来るから! ホント、ごめんね!」

 しゃがんで、簡単に散らばったカップとかお菓子を片付けて、持っていたフキンで廊下を拭いて……私、顔を上げることなく、さっさとその場を後にした。

 なんだか、とっても、とっても、居たたまれなかった。
 そこに、いたくなかった。
 尽と顔を合わせたくなかった、会話を出来そうもなかった。

「……どうした?」

 戻ってきた私を見た途端、葉月くんは心配そうな顔をして、ソファーから立ち上がって、私の傍に歩み寄ってきた。

 うっ、そんなにはっきり心配されるほど、私、様子変かしら?
 いや、自分でも、平静じゃないなぁ、って自覚はしてるんだけど。

「あっ……んん……なんでもない」

 なんでもないも、ないよね……だって、お盆の上ぐちゃぐちゃ。
 お菓子を差し入れに行ったはずなのに、置いてもこずに……しかも、すごい状態で持って帰ってきて。

「その……落っことしちゃって……片付けて、くるね」

 私、まともに葉月くんの顔を見られなかったんだけど、心配そうな視線はずっと感じてた。それは、とっても暖かい感触で……視線を合わせたら、なんだか、変な衝動が押し寄せてきそうな気がして……。

 私、お盆を持って、逃げ腰でキッチンに下がった。

 葉月くん、私に声を掛けたがっていたけど……自分から、避けちゃったの。

 尽の事でなんであんなにショックを受けちゃったんだろう……もう、わけがわからなくて、感情が乱れているのは分かるのに、その理由が上手く見付からなくて……お菓子とかお茶とか片付けながら……涙が、こぼれてきた。

 うう……いい年した女のはずなのに、私。
 なんで、こう、うまく感情を抑えられないんだろう。しかも、なんで、泣いちゃってるか、自分でも分かってないし……。
 ……私、エリカちゃんの倍近く生きてるのに、エリカちゃんよりもお子様かもしれない……うううっ。

 水道の栓を開け放して、ジャージャー水を流しながら、私、泣いちゃってた。
 葉月くんに、聞かれたくなかったのかな。聞かれて、心配されちゃうと、もっと泣いちゃいそうだったし……理由、聞かれたらとても困るから……この乱れた感情を、上手く説明できそうもなくて。

 でも、どうにか、片付け終わって……涙を拭って顔を上げたら……驚いた。葉月くんがいた。キッチンの入り口で、私の事、じっと見詰めてた。

「っ、あ……あ、葉月くん、どうしたの?」

 えへへ、と、笑ってみる。

 見られた、かな?
 見られてたよね、きっと……。
 どう、言い繕ろったらいいかな?

 私がどぎまぎしちゃってるのを見た葉月くんは、優しく微笑んで、私の傍まで近づいてきた。
 何か、聞かれるかもしれない。でも、どう答えたらいいんだろう……。
 考え込んで、ちょっと怯えちゃっている私を、葉月くんはそっと、抱きしめてくれた。

 葉月、くん?


 なんか、すごく優しく抱きしめてくれて、頭を撫ぜてくれた。

 そしたら、私……私……泣いちゃった。
 さっきから、何がなんだかわからないんだけど、また、泣いちゃった。
 今度は、わんわん声を出してたかもしれない。
 本当に、もう、わけがわからない。私、どうしちゃったんだろう……。

 葉月くんは、しばらくそうしてくれてて、私が泣き止んだ頃……私の顔を見詰めて……葉月くんの顔が近づいてきて……。


 ――キス、される!


 どきっとして、目を閉ざして眉根を寄せちゃった私。

 けれど……葉月くんの唇は、私の額にそっと触れただけだった。

「目、真っ赤……冷やした方がいい」


 そっと、私の目尻を指先でなぞって……優しく笑った葉月くん。

 私、やっぱり葉月くんに甘えちゃってる。
 なんか、とっても申し訳ない気分でいっぱい。胸が痛い。

 葉月くんが泣き止んだ私を残してリビングに戻っていった後、冷たい濡れタオルで目を冷やしながら、私がリビングに行くと……葉月くんは……帰り支度をしていた。

 え? もう帰っちゃうの? お出かけは、しないの?

「出かけると……自分に自信がなくなりそうだから……俺」


 ?? え、と……?

 戸惑う私に微笑みかけ、私の頭に手をのせて軽くぽんぽん叩く。

「俺、帰るけど……何かあったら、連絡、しろよ?」


 何かあったら??

 きょとんとする私に、葉月くんは瞳を細める。

「……はは。いや……何もなくてもいい。さっきみたいになったら、連絡してくれると嬉しいから、俺」


 え、と、よく分からないけど、うん、ありがとう葉月くん。

 葉月くんが、私の事を気に掛けてくれてるのは分かって、すごく嬉しいから。

 にっこり笑って言う私に、葉月くんは微笑みながらも、一瞬だけ眉根を寄せた……それは、なんだか、とっても切なそうな表情に見えた。


「葉月くん?」


「……あぁ、うん……。……近いうちに連絡するから、俺の方からも」


 葉月くんは、それだけ言うと、向きを変えて玄関に向かった。

 またね、と手を振って葉月くんを送り出した私だけど……なんだか、胸の中のもやもやはどんどん広がっていった。

 尽の事、葉月くんの事。


 なんで、尽とエリカちゃんのキスみて、あんなふうな気持ちなっちゃったんだろう。あんなに、ぼろぼろ泣いちゃったんだろう。

 それに、葉月くんの変な態度。私、葉月くんに迷惑かけちゃったのかな? 抱きついて、泣き付いて……余計な心配させちゃったのかな?

 ぐるぐる、ぐーるぐる、私の思考の許容範囲を越えて、色々な事が頭の中を巡る。

 私、鈍いから(最近、もぉ自認しちゃいました……ううぅ)、こんなに色々な事態が起きると、それを上手く処理できない。ひとつずつゆっくり処理していけばいいんだろうけど……なんだか、ひとつずつ考える事に躊躇いを感じちゃってる。というか、ひとつずつが、私には理解不能で、それ以上先に進まない。

 見るともなくテレビをつけて、画面を見詰めて……。

 ふいに、リビングのドアが開いて……。

「あ……尽、エリカちゃん!」


 そうだ、すっかり忘れてた!


「ごめん、葉月くんが帰るの見送ってて……替わりのお茶菓子持ってくの忘れてた」


 私の、うっかりさん。

 というか……あの後、また、尽の部屋に行く事が怖かったから……忘れてたというより、考えないようにしてたのかもしれないけど……。

 尽は、小首をかしげて私を見ている。

 その視線が、ちょっと痛い。
 エリカちゃんは、相変わらず尽にべったりくっついたまま、そっぽを向いてる。

「今から用意するから、ここで食べる?」


 主にエリカちゃんに向けてそっと問い掛けると、エリカちゃんは私の方に視線を向けて、感情の読みとりにくい表情でこくんと頷いた。


 かわいいエリカちゃん。

 私、こんな子に嫉妬してるの、かな?
 そう、嫉妬、なんだ、きっと………弟を取られたから?
 だから……?

 お茶とお菓子を用意しながら、またぐるぐる考えちゃう。

 ぐるぐる、ぐるぐる考えて、考えすぎて……かえって、ワケが分からなくなったり。
 そもそも分からない事を、理解の糸口も分からずぐるぐる回してるだけじゃ、眩暈ばかりが激しくなるって……。

 ともかく……私、どうにか、お茶とお菓子を用意して、リビングに戻った。

 リビングでは……尽とエリカちゃん、ちょっと真剣そうな表情でお話していたんだけど……もしかして、お邪魔、だったかな?

 ツキン


 胸が痛む。

 でも、それを抑え込んで、私、にっこり笑った。

「おまたせ〜」


「ありがとう、おねえちゃん」


 にっこり無邪気に笑う。

 あぁ、本当にカワイイ!
 こんな妹、欲しいかも……! ……そうか、エリカちゃんが尽と結婚したら、必然的にこの子は私の妹に………………って、なんで、そんな事考えるかな、私……。
 自分で、自分の思いつきに、激しい突っ込みいれちゃうわ……。

「ねぇねぇ!」


 一個目のクッキーを美味しそうに齧り終え、エリカちゃんは私に声をかけてきた。


「おねえちゃん、葉月くんと付き合ってるの?」


 ………………!!


 うっ、いや、その……。

 なんか……ちょっと、気まずくて、こそっと視界の隅で尽の様子をうかがったら、尽は、別に驚いた顔もしてなかった。
 ………あ、やっぱり、気付いてたのかな? 尽、そういう事に敏いもんね。

 私、躊躇いがちに頷いた。


 エリカちゃん、葉月くんのファンだっていうから……内心、いいのかなぁ、とも思ったんだけど……こうも直接聞かれたら、否定もできなさそうだしねぇ……。

 でも、エリカちゃん、さしてショックを受けた様子もなく、目をきらきら輝かせた。

「あ、やっぱりそうなんだ! すごいなぁ、葉月くんと付き合ってるなんて! ねぇねぇ、付き合いだすきっかけ、なんだったの!?」


 うわっ。

 女の子、なんで、こういう話好きかな!? 年齢問わずにさ。
 大学の友達にも突っ込まれまくったわよ、それ……ううっ……。
 つか、でも、私達の場合、全然衝撃的な事ないんだけど……。

「高校の友達から始まって、食事してる時に"付き合わないか?"って、葉月くんに言われて付き合いだした……ふぅん……意外と普通、だね」


 そのとーりよ、エリカちゃんっ。

 どうせ、ふつーよ、平凡よ。ただ、相手が葉月くんってだけで。
 尽の反応も薄いわ。
 どうせ、私の事分かりきってる尽だから、ある程度想像はしてたんでしょーねぇ……。

「で、でっ、普段どんなデートとかするの? 葉月くんって、普段でもあいいいう人!? 葉月くんのお部屋、行った事ある!?」


 ああ、質問の雨嵐。

 そうよねぇ、子供って、質問好きよねぇ……でっ、でもさぁ、答えられる話題と答えられない話題もあると思うんだけど……。
 葉月くんがブリーフ派かトランクス派かなんて、私が知るわけないでしょぉ!?
 エリカちゃぁぁぁん!
 そっ、そんなキラキラした目で見詰めないでぇぇぇ……!
 尽もさぁ、そこ、冷やかさないでぇっ! そういうあんたがどっちをはいてるか、エリカちゃんに言っちゃうからねっ!

「ねっ、ねっ! それじゃあさ、おねえちゃん、葉月くんとはもうキスした?」


 エリカちゃんの質問に右往左往翻弄されている私は、続けざまのその問いかけに……完全に思考機能が停止しちゃった。

 ああぁぁぁ………その、質問、今はマズイって……。
 だって、だってぇぇぇっ!

 ちらっ、と、尽を見る。

 尽は……押し黙って、何気なく手元のコーヒーカップを見ている。
 それから、また、エリカちゃんに視線を移すと、エリカちゃんは、身も乗り出さんばかりに私を見詰めてる。

 どう言ったら、いいんだろう。

 これは、素直に答えられないよ……。でも、嘘も、つけそうもない。

「あっ、あのねっ……そういう事は、ヒミツ。私と葉月くんのプライバシー、ね?」


 にっこり笑って、誤魔化してみた。

 エリカちゃんは、がっかりしたように、不満そうに、眉根を寄せて、ソファに深く腰掛けちゃった。

 尽は……相変わらず、突っ込みもなく大人しくしてる。

 なんか……ちょっと……胸が痛い。

 そんな雰囲気の中、私の携帯になっちんからのメールが入ってきた。『もう少ししたら迎えにいくわ』って。

 そうか、エリカちゃん、もう帰っちゃうんだな……どうやら、明日にはお家に帰っちゃうみたいだし……少しほっとしてるけど、でも、寂しい。やっぱり、エリカちゃんは可愛くて、まるで妹みたいと思ったのは、本当だから。

 何度目かの飲み物のおかわりを持ってきたら、エリカちゃんが、思いついたように言い出した。


「あ、そうそう、尽! 私、尽の部屋に忘れ物してきちゃった。あのね、猫さんの形した鏡なんだけど……」


 勿論、尽はそれをとりに部屋に向かったんだけど……けどぉ……尽がリビングを出ていった途端に……。


 え? 私、酔ってる?


 夢、見てる


 エリカちゃんの態度が、豹変した!?


「なぁ、あんたさぁ、マジで葉月とつきあっとるの?」


 腕組みした尊大な態度で、睨み上げるように私を見上げてくる。


「……………えっ?」


 エリカちゃん………二重人格!?


「なんかさ、付き合っとるふたりにしては、ラブラブムードがないちゅーかなんちゅーか……。ほら、まどかにぃやんとあの女なんて、見ててむかつくくらい仲ええのに。まぁ、今日話しとって、確かにあんたと葉月くんが相当のんびりした人間なんは分かったけどさ。それにしても、なぁ……」


 うっ……なっなんか……関西弁、怖い……。

 つか、かなり内角を抉るような突っ込み……。

「まぁ、それはそれでええんやけど……。なぁ、クリスマス、あんたらどうすごすん? どうせ、まどかにぃやんとかの昔なじみ、皆ばらばらで、それぞれの相手とやろ? あんたも、葉月と?」


「え……と、あの……うん」


 まごついてしまって、答えが出てこない私を、エリカちゃんはもどかしそうに見てる。

 ああ……どっちが大人だか……。

「大体予想つくけどさ、尽も、どうせツレと過ごすんやろな。で、さ……物は相談なんやけど。あんた、うちが尽の事好きなん、気付いとるよな?」


「えっ!? あ、うん……」


「うちな、クリスマス、またこっちに遊びに来るつもりやねん。で、尽にそれ言うたら、多分、うちのために時間作ってくれるとは思うけど、丸一ン日尽を独占できるわけなさそうやん? 尽って、交友関係広そうやし」


 ああ……そうね、それはそうかも。

 なんか、学校のお友達とパーティする、とか言ってた気も。だから、エリカちゃんが遊びに来ても、多分、一緒にそのパーティ連れて行くかもしれないな。

「けど……もし、あんたがさ、葉月くんはじめ、まどかにぃやんやあの女や……仲ええ連中とパーティするのに、尽も誘ったら、尽、ツレとのパーティよりも、そっちに行くと思うんや。そしたら、うち、もっと尽と一緒にいられると思うし」


 はぁ……?

 エリカちゃんの言わんとする事が、イマイチ分からない私って、11歳時以下の思考能力? それとも、エリカちゃんが、頭良さすぎ?
 エリカちゃん、ぽかんとする私に、ちょっと苛立って、でも、言葉を続ける。

「せやからさ、あんたが呼びかけて、パーティ開いてや。まどかにぃやんもあの女も、皆で騒ぐの好きやから反対せん……つか、むしろ喜んで色々しそうやし。葉月くんも、あんたの頼みなら、断れへんやろ?」


 えーと……なんか……なんか……私、エリカちゃんに押されまくってるけど……。


「クリスマスに好きな相手といたい……って、誰でも思うやん。せやから、うち、尽といたい」


 エリカちゃん、真剣、なんだね……本気で、尽が好きなんだ。

 胸が、痛い。
 胸が痛くて、仕方ないの……どうして?

『クリスマスに好きな相手といたい』


 その言葉が、頭の中でぐるぐる回る。

 好きな相手と、いたい……私は、誰と、一緒にいたい? 葉月くん………? 葉月くん、だよ、きっと……だって……。

 私が、また、勝手にぐるぐるし始めた頃、尽が戻ってきて、エリカちゃんは……。


 うっ……なんで、態度が豹変!?

 ああぁぁぁ……エリカちゃん、スゴイ……。

「ありがとー尽♪」


 すっごく無邪気に尽に抱きついていく。

 しかも。

「あのね、それでね、クリスマスにおねえちゃんがまた遊びに来てもいいよ、って。尽も、いい? いいかな!?」 


 え?ええっ!?

 お話、勝手に出来上がっちゃってるぅぅ。

 私、目を丸くしちゃったんだけど、チラリ、とこっちを振り返ったエリカちゃん……うっ、そんな脅すような眼差し、しないで。分かったわ、分かったわよぉ……。


「あ、あのね……もし良かったら、皆にも声かけて、パーティでもしないか、って……。葉月くんもだけど、なっちんや姫条くんや、都合のいい人呼んで」


 結局、エリカちゃんに流されちゃいました、見事に。

 いや、別に、ね……皆とパーティするのも、たまには楽しいかなぁ、とは思うんだけどね。
 果たして、尽は、ちょっと驚いた顔をした後、あっさり頷いた。

「ねえちゃんがそう言うなら……俺は別にいいけどさ」


 友達との約束は?

 って、私が問おうとする前に、またも、エリカちゃんが、きゅうって尽に抱きついてはしゃいだ声を上げた。

「わぁ、嬉しいっ。クリスマスになったら、もう学校お休みだし……また、遊んでね、尽っ!」


 なんというか……女の子、だよね……。

 というか、本気で尽が好きなんだね……。

 私……胸の痛みを抑えるために、ふうぅぅ、と、大きくため息ついて、微笑んだ。


 エリカちゃんの一生懸命さが、微笑ましく……羨ましい気もする



 


 結局、なっちんは、そのパーティ案に大乗り気。
 この分だと、全員参加になりそうだなぁ……。

 ついでに、会場は……多分、葉月くんのおうちになりそうな予感。葉月くんが了解すれば。

 葉月くんのご両親、クリスマスも海外で過ごされるみたいだし、葉月くんのお家ホームパーティ向きの広さだもん。瑞樹さんや三原くんのお家は広すぎるからねぇ……。

 他所のお家を宛てにして、なっちんは勝手にお話進めてたけど……いいのかなぁ……って、葉月くんを説得するのは………結局私、ですか!?


 ……いいんだけど……。

 いいんだけどさ……なんか、ちょっと……複雑な気分。

 クリスマス……か……。


 エリカちゃんとなっちんを見送った後、普段となんら変わらずな尽とたわいないお話をしながら……でも、やっぱり、私、胸の奥のほうで、小さな棘がむずむず動きつづけているような感覚を覚えた。


 なんだろう、これ……。

 私、どうしたんだろう……?

『クリスマスに好きな相手といたい』


 エリカちゃんの言葉を思い出す。

 そして、私は私に問い掛ける。

 クリスマス……本当は、私誰と一緒にいたいの……?


 もう真っ暗になった窓の外を、何気なく見た。

 そしたら、白いものが舞っていた。
 ふわりふわり舞って……まるで、私の心みたい。風に流されて、自分ではどこに落ちていくのか、分からない。
 ……そう、思った。

 ――まだまだ、雪は、積もりそうもないな。







おわり



--BACK--



<言い訳とか>

シリアス路線、進行中。

エリカちゃん、ふたりの関係を変化させる為のファクター。
ハンバーグで言えば、卵のようなものですかね!(なんか違う)

次回こそ、クリスマスのお話です。