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冬物語〜吐息を白くして<1> ねえちゃんと俺の関係は、相変わらず気まずいまま。 いや……ねえちゃんは、どうにか普段どおり振舞おうと必死になっているけれど、必死になるたびにボロが出ている……まぁ、器用だとは絶対言えないねえちゃんだから、な。 で、俺もさ、そんなねえちゃんをフォローしてやればいいんだろうけど……なんか、まだ、上手く自分の気持ちを整理しきれてなくて。 ……うん、ねえちゃん、葉月と付き合いだしたみたいだ。 どんな経緯があってそうなったかは、何となく、予想がつく。 奈津美さんの決して親切とは言えないヒントとか、不器用なねえちゃんの態度とか言葉とか……あと、玉緒・日比谷(兄・妹)経由の噂話とか。 元々、葉月はねえちゃんの事が好きだったんだろうと思う。 だって、高校時代の葉月のねえちゃんへの気持ち、俺のリサーチではかなりいい線行っていたし。 ただ……気持ちが盛り上がりきる前に高校卒業しちゃった、って感じかな。実は、卒業の時の葉月の行動、俺、把握してた。葉月、あの教会に行くかどうかひどく迷ってたけど……行く途中で後輩女子の輪に囲まれて、身動き取れなくなったみたいだ。まぁ、それを振り切っても教会に行かなかったって事は、やっぱり、迷いの末の結果がそれだったんだろうけどさ。 葉月の方は、そのまま、きっと、気持ちがくすぶり続けていたのかもしれない。 ねえちゃんの方は……まぁ、元々葉月に好意は持ってるだろう。友達として仲良しだ、と、以前本人も自称していたし。ただ、その好意の方向性が、さ……多分、まだ、友達の延長線上じゃないのかな? 甘やかしてくれる葉月に、今回も甘えてる。 葉月に告白されて、その甘い優しさに、酔ってるんだ、きっと。俺への気持ちを自覚する事から、逃げてる。その気持ちが、気のせいだったって、思おうとしている。 ……気のせいなんかじゃ、ないのに。 すっげぇ、もどかしい。 でも……面と向かって、ねえちゃんにそれを言う機会が見付からない。 不器用で鈍いねえちゃんのくせに、俺が何か言おうとするたびに、するりと逃げていく。 俺を意識し続けるねえちゃん……それこそが、ねえちゃんの本当の気持ちを物語っているのに。 なぁ、ねえちゃん。葉月と一緒にいて、本当に幸せなのか? 寒みぃ……。 はふぅ……吐く息も真っ白だ。 休日に、俺、何してるんだろう。 ダチからあったお誘いをうける気分でもなくて、なんとなくひとり、森林公園に来てみた。けど、冬の公園なんて、寒いだけだよなぁ……。 うん、気温が寒いだけじゃなくて、懐も寒いわ、心も寒いわ……少し踵を返した先の街中はにぎやかなクリスマスムードで溢れ返っているっていうのに……俺って、若者失格? はああぁぁぁ……。 なんて、何度も溜息つくの……俺って、ジジむさい? でも、マジ、はぁぁ、な気分。 だって、ここの所、ねえちゃんの帰り遅いんだよなぁ……葉月とデートしてるみたい。 いや、さすがに深夜帰り、とか、勿論朝帰り、っていうのはないんだけどさ……休日ごとに出かけるしなぁ……。 まったく、取り付く島もない。 クリスマスの予定だって……友達と、なんて言っているけど、多分ホントは、葉月と、だよな。 うううう〜〜!!! なんか、もう、おれ、溜息だけじゃなくて、泣いてもいい!? つか、泣くぞ!!! もう少しでねえちゃんが俺だけのものになるかも、って思ったのにっ!!! 葉月って、もしかして、とんでもないトンビだったワケ!? 見事に、油揚げかっ攫らっていっちゃったさ。 俺の油揚げ〜〜〜大事に大事に取っておいた油揚げ……最後に楽しみに食べようと思っていたのに〜〜〜うぅぅぅ。 あ、いや、でも、きっとまだ多分、食われてはないと思う。うん。 食われる前に、なんとか……とは、思うんだけど……相手が相手なだけに、ちょっと自信が……。 いや、いやいや、自信なんて、いってる場合じゃなくて、俺の油揚げ、取り返さないとな。 その為に俺ができる事は、なんだろう。 寒々しい冬の空を見上げてみる。 うす曇りの空は、今にも白いものが舞い降りてきそうな雰囲気だ。 なんだか、こうして空だけ見ていると、すごく心細くなってくる。冬って、なんでこう物悲しいんだろう。 ……ああ、だから……誰も彼も人肌を求めるんだろうな。にぎやかな雰囲気を求めるんだろうな。心安らぐ誰かの傍で、にぎやかなものたちに囲まれて……そうして、冬の物悲しさをやり過ごそうとするんだ。 俺だって……俺だって、できることなら、そうしたい。 ねえちゃんと、笑い合って、楽しく、過ごしたいよ。 はああああぁぁぁぁ。 ほんと、もう何度目だか数える事さえ億劫になってしまった溜息をついた後、俺は歩を進めた。 マフラーを巻きなおして、手袋をした手を更にコートのポケットに突っ込んで。 けど、俺の歩みは途中で止められる。 どこからともなく聞こえてくる、耳慣れない声で。 「……って、ホントにええ加減なんやから! うちがここまで来たの、何のためやと思とるん!? このまま帰ったら、意味ないやんかっ! つか、なんであんなガサツ女にうちが面倒見てもらう必要あるんや!?」 関西弁。 しかも、声質から少女のものだと分かる。 「なんて、飛び出してきたんはええけど……ここ、どこやろ……。コートも忘れてきて寒いし……あかん、早まりすぎたかもしれん……」 怒っているのか、困っているのか……いや、最初の怒り口調は徐々にトーンを落として、落ち込んできさえする。 「ああ……もぉ……どないしよ……つか、ほんまにここ、どこやろ……」 珍しい関西弁に気をとられ、発信源の少女のもしかすると大変かもしれない状況を知った。 係わり合いになるべきかどうか……。 声のする方に目をやれば、やたらフリフリとした洋服を来た、十歳を少し過ぎたくらいの少女の後姿があった。 とぼとぼと、細かい歩調で歩く後姿には、かすかな哀愁が……ある、かもしれないな。 うう〜ん……困っている人……しかも子供を見捨てるわけには、いかない、よなぁ? 「折角、葉月珪に会うために、はるばる単身こんなトコまで来たのに、あのロクデナシは、ほんま、あてにならへんっ! あの女も、無責任すぎるわっ。もぉ、絶交や。従兄妹の縁、きったるわ!」 哀愁が浮かんでいたような背中には、今度は怒りが込み上げる。 拳を高く握り締めて、ぶんぶん振り回して……。 ……というより、聞き捨てならない、葉月珪。 その言葉に、思わず反応してしまった。 「葉月……?」 呟きが、聞こえたのだろうか。 少女は振り返る。 ……あれ? 見たことないはずなのに、どうしてか、どこかで見た気もする顔立ち……いや、美少女、って言っていい綺麗な女の子なんだけどね。 「どちら様?」 関西訛りで、いぶかしげに俺を睨みつけてくる。 けど……俺が、苦笑して肩をすくめると、少女は、俺をじーっと見つめてきて……ひたすらじーっと、じーーーーーっと……。 で、突然、コケテッシュに肩をすくめて、笑いかけてきた。 「私、軟派は基本的にお断りなんだけど、あなたならお茶くらい付き合ってあげてもいいわよ」 って、急に標準語になるのはなんでやねんっ! なんだか、よく分からないけれど……俺、更に苦笑した。 「あ〜……と、君、困ってるみたいだからさ、良かったら、手助けするけど……?」 男なら、女の子には親切にしないといけないよな。うん。 俺が言うと、少女は、ぱぁぁ、と、見た目にはっきり分かるほど表情を輝かせた。 「本当に!? うわぁ、嬉しいっ!! あのね、それじゃぁ……葉月珪のいるところ、知ってる!?」 って……ヲイヲイ……いや、知ってるけどさ……。 「………あのね、それより、その格好じゃ寒くない? 一度、家に帰りなよ。送っていってあげるから」 俺、下に兄弟いないから、子供の扱いはよく分からない。でも、まぁ、女の子は幾つでも女の子、だよな? 女の子の扱いなら、俺、得意だからさ。 にっこり笑って言うと、女の子は、難しい顔をした。 あれ? 失敗かな? 「家……ていうか、親戚のにぃや……ううん、お兄ちゃんの家に遊びにきてたんだけど、喧嘩しちゃったから、帰れない」 「他に、誰かと一緒じゃないの?」 「ひとりで、来たから」 「う〜ん……でも、まぁ……その、親戚のお兄さんも、君がいなくなって心配していると思うけど」 「そうやろか……けど……しばらく、帰られへん……」 本気でしゅんとした女の子に俺は溜息をつく。 うう〜ん……このまま警察に連れて行くのもなんだし……まぁ、ここまで関わったんだし……。 「住所とか、連絡先分かってる? それなら、俺、ほとぼりが冷めるまで君に付き合ってあげてもいいけど?」 これくらい、いいよな? 俺が言うと、女の子は、またも、見た目にはっきり分かるくらいに表情を輝かせていって、笑った。 「ホンマに!? ええの!?」 期待に満ちた表情の女の子に、俺は頷いた。 まぁ……どうせ、今日は何も予定ないし、たまにはこういうのもいいかもしれないよな。 女の子の名前はエリカといった。年は11歳。 やっぱり、関西方面に在住していて、こっちに一人暮らしする従兄を頼って遊びに来ていたそうだ。 というか……その従兄、半年くらい前に会った時に、雑誌モデル葉月珪が大好きだというエリカに、自分は葉月と知人だから会わせてやるという約束をしていたとか。俺にしてみれば、本当かどうか、分からないけどね……。まぁ、で、その言葉を信じてやってきたものの、葉月の都合があわないとか自分のバイトが忙しいとかで、自分の彼女にエリカの面倒を押し付けて、自分はさっさとバイトに出かけてしまったとか。 その彼女というのが、どうもエリカとソリがあわなかったらしい。エリカに言わせれば「ガサツでお節介でうるさくて鬱陶しい」女らしい。 で、エリカは、その従兄に対して大層ご立腹で、従兄の名前もはっきりした住所も口にしなかった。けれど、とりあえず従兄の住所ははばたき市内のようで。まぁ、よほど遅くならなければ大丈夫だろう。エリカは携帯も持っているようだし。 つか、時々妙な着メロが鳴るたびに、エリカはひどいしかめ面をしてそれを無視していた事から、おそらくそれが従兄からのコールだろうと思われるんだけど……エリカ、1回くらい出てやれよ。 「ふーんだ。勝手に心配してればいいんだわ。人との約束すっかり忘れた上に、あんな女押し付けてさ」 俺の腕に腕を絡めて歩きながら、エリカは言う。 すっかり、恋人気分、てか? まぁ、エリカ、美少女だし、将来有望そうだから好かれて悪い気はしないけど、俺、ロリコンじゃないんだよねぇ……。 う〜ん……強いて言うなら、かわいい妹、か。 「ねぇ、尽、それより、次はドコに行く!? 私、遊園地行きたい!」 はしゃぐエリカに、俺は苦笑した。 いくらなんでも、昼過ぎた今から遊園地は無理っぽい。 それに、予算もそんなにないしな。 上着を着ていないエリカの為、寒風吹きすさむ外を出歩けないから、俺達は、臨海公園のショッピングモールの中のベンチに腰掛けてる。 「ごめん。予算不足。それより……本当に一回くらい、連絡したら?」 俺が何度目かの同じ言葉を言うと、エリカはむっと頬を膨らませた。 「どうせ、あの人はバイトだし、あの女だって真剣に私の事探してないもの。厄介払いができて、喜んでるんじゃない?」 意固地だなぁ……。 「そんな事ないだろう。こんなに可愛いエリカがいなくなって、心配してるって、絶対。だから……」 俺が言っている端から、エリカの携帯電話が鳴った。 エリカは鞄からごそごそ携帯を取り出して、着信画面を見詰めて、頬を膨らませる。また、従兄かその彼女からの着信なんだろう。 で、エリカがそれを切ろうとするのを、俺は咄嗟に取り上げた。 「あ!?」 驚くエリカを尻目に、俺、携帯に出た。 せめて、居所くらいは知らせとくべきだろう? けど、出た途端に。 『エリカぁ!? やっと出た! ねえ、あんた、今どこにいんのよ!? 大概心配してるのよぉ!?』 けたたましい女の声が響いた。 俺が相槌を打つ前に、女は喋りつづける。 『アタシ、何度コールしたと思ってるの!? 一度くらい出なさいっ!! あんたになんかあったら、私が怒られるんだしっ!! エリカ、聞いてる!?』 これが「ガサツでお節介でうるさくて鬱陶しい」女か。ちょっと納得。 けど、なんか、とてもとても聞き覚えのある声だ。 まぁ……いいけど、とりあえず……。 「あ〜……俺、エリカを保護しているものですけど……」 躊躇いがちに俺が切り出すと、電話の向こうはシンとなった。 しばらく間を置いてから、絶叫。 『まっ、まさか、誘拐とか!?』 携帯越しにも、耳に痛い声。思わず、携帯を耳から離しちゃったよ。 「……そうじゃなくて、道に迷ってるの助けて、事情聞いたらかわいそうだから、買い物に付き合ってあげているだけで……」 『え? そぉ? そうなの!? それじゃ、恩人だわ。ゴメン、ありがとう。それで、今、ドコ!?』 なんというか、このテンションも良く知っているような……。 うう〜ん……何となく、予感だけが……。 「臨海公園の……」 不意に、言いかける俺の手から携帯電話は奪われる。 エリカだ。 ベンチの上に立ち上がって、俺から奪い取った携帯電話に一度「誰が教えたるか!」と、電話向こうの女に負けないほどけたたましく言い切って、携帯を切った。しかも、電源を落とした。 うう〜ん……エリカの気持ちもすこぅし分かる……つか、同性の似たもの同士って反発しあうものなのかな?あ、これエリカに言ったらめちゃ怒られそうだけど。 「尽のばかっ!」 エリカはぷぷっと頬を膨らませてしまった。 やっぱり、怒らせたか。 「ごめん。だって、一応場所くらい、知らせておいてもいいだろう?」 「………」 謝る俺を、エリカは横目で見る。 そうしてしばらく、不貞腐れた横目で見つづけて……仕方なさ気に溜息をついた。 所作がいちいち大人びているよな、エリカ。 そして、言動も……。 「……許してあげてもいいよ」 許すも許されるも、って感じだけど、女の子のご機嫌取りは難しいからなぁ。 「……キス、してくれたら許してあげる」 キス……。って、キス? マセガキ……。 俺、苦笑する。 まぁ、頬や額にするくらいなら、いいよなぁ。 苦笑しながら、軽くエリカの頬にキスをした。 けれど、エリカは……頬を染めながらも、またまたふくれてしまった。 「頬じゃなくて……! もっと、ちゃんとしたの!」 あ? まさか、唇にしろって!? いや、そりゃ、まずいって。 俺、ロリコンじゃないし、何より、俺には心に決めた人がいるから。 「そんなキスは、好きな人としかしちゃダメだよ」 俺に好きな人がいる、なんて、言えるわけもなく、諭すようにそうエリカに言うと、エリカは、俺を真っ直ぐに見詰めてきた。 こうして真っ直ぐな眼差しを持った女性は多い。女性のそんな眼差しは、男を戸惑わせる。……例え相手がまだまだ子供の域を出ていないとしても。 「私、尽のこと、好きだよ」 うう〜ん……告白、かな? 告白だろうな。 嬉しくない事はないんだけど……けどなぁ……。 俺、困惑した表情しか出来なかった。 はっきり断るべきだとは思うけど……こんな子、傷つけるのは怖い。けど、この大人びたエリカは子供だましに引っかかるほど、子供じゃない。 それで、うう〜んと、ちょっと考えちゃっている隙に、エリカが俺の膝に乗っかってきて……。 「ちょ……エリカ!?」 唇が触れる前に。 「……!!」 俺の携帯が鳴り響いた。 結構うるさい着メロに、エリカはびくんとして顔を引き離し、俺は正直ほっとした。 けど、この着メロに設定してあるのって、確か……。 まさか……? 残念そうなエリカをちらりと見てから、携帯に出ると……やはりというか。 『もしかして、尽、あんた!?』 さっき、エリカの携帯から聞いたのと同質の声。 ああ、やはり、と、思う。 そして……なんとなく、事情すべてを飲みこめた気になった。 「ガサツでお節介でうるさくて鬱陶しい」女……俺は、女性に対してそこまで言いたくないけど、なんとなぁく、俺の知り合いにもその手の女性がいた事を、改めて実感。 『あんたでしょう!?』 慌てた口調で、いきなり言われた言葉だけれど、俺にはすぐに言いたい事が分かった。 「臨海公園、ショッピングモール内にいるよ」 『わかった! もう臨海公園まできてるから。すぐ行く!』 携帯に受け答えする俺を不安そうに見るエリカ。 嫌な予感を感じていると見える。 ごめんな。 「わっ、私……もう行かなきゃ!!」 嫌な予感を感じて、立ち上がるエリカ……女の勘? それとも、野生の勘? 俺は、慌てて腕を掴んで引き止める。 で、事情を飲み込めた俺は、最終確認にかかった。 「もしかして、君の名前………姫条エリカ?」 問い掛けた俺に、エリカの顔が見る見る赤くなった。 あ、やっぱり……。 その次の瞬間、遠方から、騒がしい声が聞こえてきた。 「あーーー!! やっぱりいた!! エリカ、このぉ!!!」 あ〜……よく知った声だ。 そして、よく知った人物がお怒りモードで近づいてくる。 じたばた暴れだすエリカを抱え込んで、俺、エリカを自首させる。 この人の雷は怖いからねぇ……奈津美さん。 「黙って出てくなんて、何考えてんの!? だから、葉月くんには、明日にでも会わせるって言ったでしょう!? 我がまま娘っ!」 「うちは、あんたみたいな騒々しいオンナと一緒におるのに耐えられやんだだけや! にぃやんもにぃやんや。なんで、こんな小うるさいオンナをうちに押し付けてくんや!?」 「騒々しいなら、あんたもでしょ!? アタシだってねぇ、あんたみたいなガキのお守ゴメンだけど、まどかに頼まれた責任があるのよっ!」 「そやったら、ほっといてくれてもええのに、いちいち口出しするんやもん! ほとほと、疲れたわ!」 うう〜ん……デッドヒート。 ほぉら、周囲の注目集めてる。 つか、奈津美さん、11歳児と同レベルだぞ、今……。 「ここいらの地理に詳しくない子供、放っておけないでしょ!?」 「ガキガキ言わんといて! うち、ガキやないもん。ちゃんと、尽っていう恋人、できたもん!」 って、俺の腕を引っ張る。 ヲイヲイ……いつから、恋人になったんだよ……。 奈津美さん、一瞬押し黙った。 押し黙って、俺をじっと見て……。 「あれ、尽。そうか、あんた、そんな趣味になったの。そっか、もう不毛な恋は捨てたのね。だよね〜」 ……って、勝手に納得すんな。俺、泣いちゃうぞ。 俺と奈津美さんが知り合いらしい事に、エリカはちょっと目を丸くした。 いや、さっきの携帯電話の件で、薄々は気付いてたようだけれど。 「エリカ11歳で年齢差4歳。6歳差よりも全然だわねぇ。あと5年もしたら、いい感じよ、きっと。その子、ほら、まどかの従妹だけあって、綺麗だしねぇ」 うんうん、と、納得を続ける。 こらこら、エリカへの説教どうしたよ!? 俺をいたぶるの楽しんでるのか!? 「奈津美さん……それより、一応事情説明」 エリカは、どうも観念したらしく……随分大人しくうなだれている。 まぁ、俺と奈津美さんが知り合いって時点で、逃げるのは難しいしな。 当然、奈津美さんにおごらせる魂胆で、俺達は近くのファミレスに入った。 奈津美さんの語る事情は、やはり俺が想像した通りのもので、今更補足も必要さなさそうだ。 逆に、エリカへの事情説明に時間をくった。 「ふぅん、尽のおねえさんと、にぃやんや葉月珪は同級生だったんだ。へぇ……じゃあ、尽も葉月くん、知ってるの?」 知ってるも何も……。 言いたいけど、言えないよな、まさか。 うちのねえちゃんと葉月が付き合ってるって。 奈津美さんは、俺がエリカへ返す反応を面白そうにニヤニヤ笑ってみている。くそっ。根性悪いなぁ……。 「一応、ね」 苦々しく俺が言うと、奈津美さんは、ぷっと吹き出した。 ああ、もぉ! 本当に、この人は……!! 「エリカ、葉月くんにホントに会いたい? もし、会いたいのなら、連れて行ってあげてもいいよ。今、彼のいる場所わかったから」 しかめ面した俺にニヤニヤ笑ってウィンクして、戸惑いつづけるエリカに向き直って言う。 ああ、やっと、俺、エリカのお守から解放されるのか。 いや、別に、楽しかったんだけどね、結構。 「そりゃ、会いたいけど……。そやかて、そのためにここまで来たんやから……でも……」 おや? 葉月に会いに姫条頼ってここまできたわりに、あんまり乗り気じゃないのは、なんで? いや、俺の方横目で見上げるのも、なんで? 奈津美さんは、また、そんな俺とエリカの様子を観察しているようでもある。 また何か企んでる……? 「……尽と離れ難い?」 また、何てことをエリカに振るかな。 「……葉月くんに会いたいけど……それで、尽と別れなあかんのは、嫌やな……」 エリカは俺を見上げて言う。 うう〜ん……これは、やっぱり……惚れられた、かな? しかも、素直に好意を向けられている。 嬉しいけど、ちょっと……複雑。 奈津美さんは、穏やかな眼差しを俺とエリカに向けて……微笑んで息を吐き出した。 「そう。それじゃ、一挙両得、って事で。尽の家、行きましょ!」 「は?」 え? なんで? なんで?? 奈津美さん? おお〜い、奈津美さんってば??? つづく |
<言い訳とか>
オリジナルキャラ出張ってます。
つか、オリキャラと尽のお話になっちゃってます。
そういうのが苦手な方はごめんなさい。
これは、前半。後半も、似たり寄ったりなお話。
そして、クリスマスへとなだれ込みます。
ちなみに、後半は短め、デス。
エリカちゃんは、もうしばらく使わせてもらいます。
はちゃめちゃで使いやすいです、エリカちゃん。
捏造しちゃったキャラですが(苦笑)。
姫条の父方叔父の娘、ってあたりにしといてください。