| 《かえるの王子さま》 昔々……とある国の王様の末の姫で皆からねえちゃん姫と呼ばれている愛らしいお姫様がおりました。 彼女は、ある日、お気に入りの金のまりを持って、森の泉の傍で遊んでいました。けれど、ちょっと鈍いねえちゃん姫は、手を滑らせてまりを泉の中に落としてしまいます。まりは、泉の深く似沈んでしまい、泳げないねえちゃん姫では、とてもとる事ができそうもありません。 泉を覗き込みながら、ねえちゃん姫が泣いていると、泉の中から、見たこともない美しい蛙が現れてきて言うのです。 「ねえちゃん姫、どうしたんだ?」 「ああ、蛙さん! 私……」 さすがに鈍いねえちゃん姫は、蛙が喋っている不思議にまったく気付いてません。 「ちっちっちっ。俺の名前は尽ってんだ。さぁ、そう呼んでくれ、ねえちゃん姫! ……で、涙の理由は?」 「えーと、じゃあ、尽。私ね、大事なまりを落っことしちゃったの。でも、とても取りに行けなくて」 普通に蛙と会話をしています。ものすごい鈍さです。 ともかく……。 「よし、それじゃあ、俺が取ってきてやるよ。ただ……どうしても、欲しいものがあるんだ」 尽蛙はにっと笑ってねえちゃん姫に交換条件を提示します。 「俺は、金や名誉には興味がない。ただ、ねえちゃん姫が欲しい」 欲しいといわれても、さっぱり意味が分かっていないねえちゃん姫はきょとんとしていますが、尽蛙はねえちゃん姫に理解させるように言葉を続けます。 「城に連れて帰ってくれて、ねえちゃん姫の傍で食事をして……同じ布団で一緒に寝てくれるのなら。俺をちゃんと愛し続けてくれるのなら……」 挑戦するような尽蛙の言葉と眼差しでしたが、やっぱりさっぱり分かっていないらしいねえちゃん姫は、それでも、そんな事でお気に入りのまりが戻ってくるのなら、と、何度もこくこく頷きました。 尽蛙は一抹の不安を隠しきれないような気分を表情に表しながらも、まりを取りに泉の中に取りに入り、すぐに金のまりを持って戻ってきました。 「さぁ、ねえちゃん姫、約束だ!」 尽蛙は、ねえちゃん姫にまりを渡して言いますが、ねえちゃん姫はまりがちゃんと戻ってきた嬉しさに、尽蛙の事を忘れて大喜びで城に戻っていってしまいました。 あくまで天然です。決して、故意ではありません。 「ちょ、ちょっと、待った〜! ねえちゃん姫!!」 尽蛙はねえちゃん姫を追いかけようとしますが、リーチの差が違いすぎます。追いつけるわきゃありません。 ……さて、城に戻って、お気に入りのまりを大事に磨いて片付けたねえちゃん姫は、夕食の席につくわけですが……何か、忘れ物をしている気がします。けれど、思い出せないので、まぁいいか、と、食事に手をつけようとした時でした。 何か奇妙な気配がしてドアを叩く音がしました。 ねえちゃん姫自らドアを開けますと、そこには……あの尽蛙がいました。 大層ご立腹のようです。 ぴょんぴょん飛び跳ねながら、抗議します。 「ねえちゃん姫! 一瞬で約束を忘れるなよな! 俺がここまで来るのに、どれだけ時間がかかったかっ!」 思い出しました。そういえば、尽蛙と約束をしていたのです。 はっとしたねえちゃん姫は、ぽんと手を打って尽蛙に謝罪します。 「そうだった! ごめんね」 ねえちゃん姫は、尽蛙を抱き上げて食卓まで連れて行きますと、ねえちゃん姫の父親の王様は目を丸くしました。 そりゃそうでしょう。 鈍すぎなねえちゃん姫と違い、一応普通の感覚は持っているようです。 ねえちゃん姫が簡単に事情説明をすると、王様はなんとも複雑そうな表情で、それでも言いました。 「まぁ、約束は守らなければならないし、な……」 ねえちゃん姫は、自分の隣の席に尽蛙を座らせてあげ、金の皿に取り分けた料理をご馳走しました。 「さて、腹も膨れたし、次は寝所まで行こうな! 一緒に寝る約束、覚えてるよ、な?」 喋る尽蛙に、ねえちゃん姫他は驚きを隠せませんが、ねえちゃん姫は素直に尽蛙を抱き上げて、自分の寝室まで連れて行きました。 さて、ベットは綺麗にしつらえられていましたが、ねえちゃん姫は着替えないといけませんので、尽蛙をとりあえずベットに座らせると、自分は夜着への着替えをしますが……。 ああ、尽蛙、身を乗り出しすぎて、ベットの下にぺしゃりと落ちてしまいました。ねえちゃん姫の生着替えシーンもロクに見ることができずに、ひっくり返ってわたわたしていると、注意力散漫なねえちゃん姫が……。 「ぐえっ」 正しく蛙を潰したような音がしました。 そう、ねえちゃん姫は尽蛙を踏みつけてしまったのでした。 「ああ! 尽、尽! ごめんなさいっ!!」 ねえちゃん姫は、尽蛙を慌てて抱き上げて、意識をなくしている様子の尽蛙を抱き締めて、何度も謝りながら、いつか見た童話のごとくに、その目覚めを誘う口付けをしました。 すると、どうでしょう! 尽蛙は若くカッコイイ王子様へと変身したのです! 変身した王子様は意識をすぐに取り戻し、そのまま、ねえちゃん姫をベットへと押し倒したのでした。 「これで、約束が叶うな! ねえちゃん姫……さぁ、一緒に寝て、愛し合おう……!!」 「え? ええっ? あ、ダメやっ……あぁんっ!」 なんだか、イマイチ状況が飲み込めきっていない様子のねえちゃん姫ですが、尽王子に無理に押し切られつつ……約束通りベットの中でふたり、沢山愛し合い、朝まで一緒に眠ったのでした。 尽蛙はねえちゃん姫の口付けで王子へと戻り、ねえちゃん姫は尽王子の腕の中で少女から女へと変身するのでした。 そうして、朝日が部屋に射して来て……眩いその光を受けたベッドの中で、尽王子はねえちゃん姫の心地いい体を抱き締めながら、これまでの自分の身の上を語るのでした。 しかし……!! 「えーと…………私の記憶違いじゃなきゃ、生まれてすぐに隣国に養子に貰われていった私の弟が、確か……尽って名前で……」 そう、再度の衝撃の事実。 ふたりは実の姉弟のようでした。 でも、まぁ……やっちゃったもんは仕方ないですし。 尽蛙……いえいえ、尽王子がねえちゃん姫にぞっこんラブなのは明白ですし。ねえちゃん姫も、尽王子の腕の中で幸せそうですし。 どこからかぎつけたのか、尽王子の呪いが解けたのを知った隣国から、煌びやかに飾り立てられた8頭立ての馬車が尽王子を迎えに来て、ねえちゃん姫もそのままに馬車に乗り込む事になるのでした。 「実の姉弟でも、いいか! 呪いはとけたし、俺はねえちゃんを愛してるしな!」 王子が蛙に変身した悲しみで胸が張り裂けないように胸に3つのタガを嵌めていた従者のタガが次々と外れていく音を耳にしながら……馬車の中でも、ふたり、熱く愛し合っていたようです。 「ねえちゃん、俺の事、愛してる?」 「ん……もぉ……ばか……」 答の代わりに、ねえちゃん姫は、尽の背中を強く抱き締めました。 小さな蛙と違い、尽の背中は暖かくてしっかりとしていて……ねえちゃん姫は、約束どおり、尽を愛し続けようと想うのでした。 ※※おわり※※
|