※当サイトの100000hit記念の占いにて、
一定の条件でたどり着ける結果で読んでいただけたお話です。
| ]
ふたりきりの永遠 冗談のように彼が言った。 私は、笑って、彼に誓う。 彼も笑って、私に誓った。 ふたりだけの永遠を、ふたりきりで誓う。 誰も何も入り込めない、ふたりきりの永遠を。 目を覚ます。 薄暗い部屋。 まだ、夜明けまでは遠いのだろうか。 私はゆっくり体を起こした。隣に眠る彼を、起こさないように。 「喉、渇いたな……」 だから、目を覚ましたのだろうか。 昨夜も、彼と愛し合った。私が、疲れきる、限界まで。意識を失うまで。声が枯れてしまうまで。 彼は何度も私を求め、私も彼には抗えなかった。 こうしてゆっくりと愛し合える時間は、滅多にないのだから。 彼の寝顔を見つめて、ふふ、と声を出して笑ってしまった。 昨夜は……愛し合っている時は、彼は実際の年齢よりもずっと大人に見えて……そう、男そのものの表情をしていて、私を翻弄した。 私の名前を呼ぶ声も、甘い囁きも、しっとりと落ち着いた響きで私の耳をくすぐって。私に触れるその体の熱は、私をしっかりと包み込んで。彼の彼らしい匂いが、私の思考を痺れさせた。 彼が男なんだと、私の全てに刻み込むように。 私は年下の彼に、体を、思考を、私の全てをいいようにされて……それでも、それを、とても心地よく感じていた。 なのに……今見る彼の無防備な寝顔は、年齢相応にあどけなくて……それもまた、愛おしかった。 「尽……」 彼の名前をつぶやくと、彼は、微かに呻きを漏らせて、身じろいだ。 私を抱いている時の男の姿をした彼。普段の年相応の……弟の彼。 どちらも、とても……愛している。 私は、胸に満ち溢れる彼への愛しさを幸福な気持ちに変えて、心地よい褥をそっと離れた。 両親の留守。彼と私、ふたりきりの家。 トントントンと、軽い足取りで住み慣れた家の階段を降り、薄暗いキッチンに向かった。 電気をつけなくても、どこに何があるのか分かる。目をふさいでいたって、分かる。 私は、薄暗いキッチンで、冷蔵庫のミネラルウォーターをコップに注いで、口をつける。 冷たい水が、乾いた喉を通り過ぎる、心地よさ。 まだ熱を失わない体に、水の冷たさがじんわり浸透する。 「ふぅ……」 一口だけ喉に流し込み、溜息をつく。 そうして、不意に何かの気配を感じたと思ったら……背後から抱きしめられて、いた。 「……!」 それが誰かなんて、考えるまでもない。 けれど、はずみで、コップを落としてしまう。 床に落ちたガラスのコップは、割れはしなかったけれど、残った水を床に撒き散らし、カラカラと無機質な音を立てて、どこかに転がっていった。 「探した……」 くぐもった声が、耳元でする。 「すぐに戻るのに……」 「勝手に、いなくならないで。びっくりするだろ?」 「ばか。どこかに行くわけじゃないのに」 「そんなの、分からないじゃないか。……ひと時も、離れたくないのに……」 子供のようだ。 母親と一時でも離れられない、稚い子供の我侭のよう。 私の髪に顔を埋め、強く、私を抱きしめる。その力は、稚い子供なんて、とても言えないけれど。 「床、片付けなきゃ。それから、また一緒に寝よう?」 足元が、冷たい水に浸されている。 子供を宥めるように優しく言うけれど、彼は、尽は、私を離さない。 「ね、尽」 その名を呼びかけ、私の体に絡みつく尽の腕を、優しく撫でさする。 「少し、離してくれれば……」 ほんの少しだけ。そうしたら、また、暖かなふたりの褥に戻れる。 ……なのに、尽は、私を離す事なく、私の首筋にキスを、落とした。 「……っ!!」 私の体に回った腕は、相変わらず私を離さないけれど……そろそろと動いて、私の体を、這い回りだした。 「尽……!?」 驚いて声を上げる私になど、お構いなしだ。 尽の唇の、手の、動きは、徐々に本格的になる。愛し合っていた、数時間前のように……。 「ゃ、ばかっ……っ、んっ」 こんな所で嫌だ、という気持ちは確かにあったけれど……でも、私の体は、尽の欲望に忠実になってしまっている。 私の体は私自身の意志よりも、尽の求めに簡単に応じるようになってしまった。 尽の私を求める気持ちを感じると、じん、と熱を持ち、尽がその気持ちのままに私に触れると、尽を受け入れる準備を始めてしまうのだ。 いや、それこそ、私の意志……なのかもしれないが。 そうして、私の意志は、体の熱に火照らされ、すぐに、のぼせあがってしまう。 体が、熱い。 思考が、熱い。 もう、何も考えられなく、なる……。 ただ、尽が……欲しくて、たまらない。 全てが熱く火照って、足が体を支える力を失ってがくがく震えて、立っていられなくて……腕を伸ばして、シンクにしがみつくようにして、体を支える。 「……その格好、いいね」 背後で、くすっ、と、尽が悪戯っぽく笑う。 それが始まりの合図のように……尽の攻めは本格的になり、私は……もう、尽しか感じられなくなってしまった。 「あ……あぁん……も、あ……ひゃぁぁ……!」 意味不明の、動物そのものの声を上げ、私は、完全に力を失う。 立っている事は勿論、己の体を支える力さえ、なくなってしまった。 崩れ落ちようとする私の体は、背後の尽に抱きとめられ、抱きしめられ……ふたり、キッチンの床に崩れ落ちた……まだ、繋がりながら。 乱れた呼吸を吐き出しながらも、尽は嬉しそうに私の耳元で囁く。 「ねえちゃん、まだ、ヒクヒクしてる……。すげぇ、気持ちイイ……」 卑猥な言葉に、私は、応える気力もなく、彼の腕にかすかに爪を立てるだけ。 「……ずっと、このまま繋がっていたい、のにな……」 尽は、寂しさの混ざった口調で呟いて、私を強く抱きかかえなおした。 私も、尽を抱きしめる。 こうして互いの熱を感じていられる時が、一番、幸せ……。 でも、勿論、ずっとそうしていられるわけはないから。 「尽……好きだよ……」 まだ少年らしさを失わない、尽の頬に手を添える。 濁りのない、けれど、陰りを宿した瞳を覗き込む。 私も、尽も……互いの存在だけを、求めている。 姉弟で、愛し合う。 罪の意識が、ふたりをより強く結び付けている。 ふたりの関係は誰も、何も、認めてはくれないから。だから、ふたりだけしか、互いだけしか、いない。 私をじっと見つめる、真摯な眼差しを受けて、私は微笑み、尽の唇に己のそれを重ねた。 ゆっくり、絡まりあう。互いを、奪い合い、分かち合う。 繋がった部分が、熱く、なる。 絡まりあった唇が、舌が、熱さと激しさを増す。 尽が私の体を抱えなおし、私は尽にしがみつく。 「ん……ふっ……っ」 「ねぇ、ちゃん……っ!」 ふたり、繋がって、互いの存在を認め合って、互いの想いを確かめる。 どうしてこんなにも、愛しいのだろう。 ただ、ひたすらに、愛しくて、彼が、欲しくて。 この想いが、成就される時が永遠に来ないのが、とても、悲しい。 成就される時が永遠に来ないのなら……終わりなき永遠の中を、ふたりで愛し合い続けるしか、ない。 ふたりきりの永遠を、ふたりだけで。 「えい、えん、に……」 尽を抱きしめながら私が呟くと……まるで、私と同じことを考えていたように、尽が囁いた。 「ふたり、一緒に……」 見詰め合う、瞳の中。 同じ想いが、ある。 狂おしく求め合って……ふたりは、永遠を、約束する。 朝日が昇る。 至福の褥で寄り添いあう。 ふたりの永遠は、そこに、ある。 END |