GoodMorning
【Side:尽】



 彼女が何よりも……この世で最も自分に近しいだろう親よりも大事で、愛する存在だと思うようになったのは、いつからだったろう。

 それはきっと、彼女を"女"だと認識するより遥か前だったのかもしれない。


 彼女を女だと認識し、己の想いを実感し……そして、彼女が欲しいと思ったのは、ごく最近の事だけれど。


 そう思って、恋し、焦がれて……焦がれつづけて……ほとんどすべてを知っているはずの彼女自身の事をもっと知りたいと欲張りになっていく自分が、ひどく滑稽だった。


 けれど……そんな滑稽な自分を嘲笑う、卑屈な自分は、彼女のたった一言で、あっさりと消え去った。



 ――あんたが、好き――



 今でも、耳につく彼女の言葉。

 その瞬間、全身をかけ巡ったのは、一体なんだったんだろう。
 あれを、どう表現すればいいんだろう。


 ――ひとりの男として、あんたを……愛してるの――



 瞬間、全身が何かに侵されたように、体中の力が抜けて……涙が溢れた。


 長い間彼女を想うあまり、その想いがしこりとなって全身を覆っていた……それが、一瞬にして溶解し、解放された。


 その存在の意味が、自分にとって改新された彼女は、柔らかな声で身体で、自分が欲していた事を、少しずつ叶えてくれた。

 すべて知っているはずの彼女自身の、新たな面を、自分に教えてくれた。
 こんなにも、彼女の事を知らなかった自分が驚きで……その新鮮さがとても、心地よかった。


 口付けた唇の柔らかさ。



 愛撫して上がる愛らしい嬌声。



 汗ばんで行く体から香る彼女らしい匂い。汗の味。



 実は素直な彼女が、自分の導きで面白いくらい乱れていく姿が、いかに扇情的か。



 しがみついてくる彼女のしなやかな肉体が、どれほど自分の体に馴染むのか。



 甘い喘ぎの合間に、自分の名前を何度も呼ばれる事が、どんなに嬉しいのか。



 ……潤んだ眼差しで見上げられて、甘えるように頬を摺り寄せてくる。普段の彼女では有り得ないその態度が……たまらなく、愛しい。


「……ねえちゃん……」 


 愛しい彼女を想って呟いて、薄っすら目を開ける。


 よく知った部屋。天井。


 やっと日が射してきたばかりで、まだ薄暗いそこにいるのは……自分と彼女。

 愛しい彼女は、自分の腕の中で、安らかな寝息を立てる。

 なんて、幸せなんだろう。

 じっと、ただ、彼女だけを見詰めつづける。
 そうしているだけで、心が満たされる。時間の経過も気にならない。

「愛してる……」


 呟いて、柔らかな頬に口付けを落とす。


「ん……」


 彼女がうめきをもらせて、身じろいぐのに、彼は慌てて目を閉ざした。

 のそりと起き上がった彼女が、じっと自分を見詰めているのが分かる。

「尽……」


 とても愛おしそうに名前が呼ばれて、ゆっくり続く、聞き取れないほどの『愛してる』の言葉が微笑ましい。

 普段、面と向かっては滅多に言ってくれないけれど……彼女が自分と想いを重ねてくれているのが分かるから……嬉しい。

「愛してる……」


 今度ははっきり聞き取れる言葉と……彼女がかすかに動く気配。

 薄っすらと目を開けて、近づいてくる彼女の顔を目にして……彼は彼女の唇を、求めた。

 強く、頭を掴んで引き寄せて、唇を合わせる。舌を絡ませる。

 驚いて彼女の体が震えるけれど……彼女もすぐに、彼に応える。

 彼女の腰を抱きしめて、抱き寄せて、再び彼女のぬくもりを胸の中に囲い、
ゆっくり唇を離して、彼は呟く。

「俺も、愛してるから……」


 面と向かって言う彼の言葉に、今更ながらに彼女は顔を真っ赤にして……布団にもぐりこんでしまった。


「ばかっ」


 その態度も、小さく叫ぶその声も、あんまり素直で可愛くて、彼はくすくす笑った。

 


 ――こんな朝が、これからずっと続く事を強く願いながら……。




END




--BACK--





<言い訳とか>

ラブラブな後朝っていいですな。
夜とのギャップがあれば、ね(笑)。

方向性が、またも大人傾向。
いいのかなぁ……。

この尽は……何歳くらいかな?
まぁ、小学生や中学1年生くらいでないのは確かかと。
ご想像にお任せします、かな。

勿論、両親と一緒に暮らしているので、
ラブラブするのにすごく気を使ってそうね、このふたり。
よくばれないなぁ……。