GoodMorning
【Side:姉】



 朝、目を覚ます。

 眩しい朝日がカーテンを通して、あるいはカーテンの隙間を縫って部屋に入り込み、見慣れた部屋をほんのり別色に染めているように思われる。
 そう、見慣れたはずの部屋なのに、最近、どことなく余所余所しく感じるようになってしまったのは、彼の事があったからかもしれない。

 見慣れたはずの顔。
 なのに……以前のようには、もう、見られなくなってしまった。

 その寝顔を見ると、くすぐったいような幸福と喜びが、血脈と一緒になって全身を駆け巡る気がする。

 彼を起こさないようにそっと上半身を起こして、上から彼の寝顔を見下ろす。

 安らかな寝息を立てて眠る彼の整った顔、形いい額にふりかかる柔らかな髪。首筋から流れるようなラインで続く、くっきりした鎖骨……。
 数年前まで、自分より細かったような肩や二の腕や胸元……布団から覗くそれらの部分が、いつの間にか随分逞しい男性のそれへと成長した事は、いつかのあの日に実感せざるを得なかったんだけれど……今、目にして、彼女は改めて頬を染めた。


 その肩に顔を埋めて。


 その腕にしがみついて。


 その胸に抱かれて。


 彼に愛される。彼を愛する。
 昨晩も、そうして、彼と愛し合った。

 見下ろす彼の首筋に、胸元に、その証のような痣を見つけて、彼女は気恥ずかしくなって彼から視線をそらせた。

 夜、彼に抱かれる時、いつもそのペースにいいように乗せられて、理性の鎖を簡単に解かれ、翻弄されてしまう自分を思い出すと、どうしようもなく恥かしくなってしまう。

 けれど……。

「尽……」

 まだ眠り続ける彼に小さく呼びかける。
 そっと、そっと呟いて……この家で一緒に暮らす両親は勿論、彼自身にさえ気取られないような小さな声で空気を振るわせる。


 ――愛してる――


 夢の中で、彼に届いているといい。

 普段、恥かしくて面と向かって言えないけれど。
 その気持ちは、絶対のものだから。
 彼に簡単に翻弄されてしまうのも、きっと、その想いが彼女を安心させているからだろうから。

「愛してる……」

 今度は、もう少ししっかり呟いて、自分自身に照れながらも彼の頬に唇を寄せた……。

「ん……っ!?」

 頬にキスしようとしたつもりだったのに……唇が、重なっていた。
 しかも、頭を抱き寄せる確かな腕の感触、重なった唇を割って入り込んでくる舌。

「っ……んっ!!」

 そして、また、翻弄される……。

 彼の舌が彼女の中で優しく暴れ、その腕が彼女の腰を強く引き寄せて……再び、彼女は布団の中に、彼の腕の中に引き戻された。

「俺も、愛してるから……」

 そっと唇が離れたとき、囁かれる言葉に、彼女は目を丸くした。
 悪戯っぽく笑う瞳に真正面に見詰められて……彼女は顔を真っ赤にして頬を膨らませ、布団の中に潜り込んでしまった。

「ばかっ」

 布団の中で小さく叫んだ彼女の言葉に、彼はくすくす笑い続ける。



 ――そうして、心地よい、朝が始まる。




END




--BACK--





<言い訳とか>

それぞれの寝顔を見詰めながら、
想いを独白するふたりのお話。

姉から見た尽は……

上半身裸の男性が、胸元まで布団を被って眠っている……
って、なんか、色っぽい気がしませんか?(笑)
やっぱり、チラリズムか……あははは。

尽は、寝顔に色気がありそう。
しかも、後朝だしね〜。