男心と秋の空?<1> ねえちゃん、葉月につれられて帰ってきた。 ……なんだ? 今日は確か、大学の友達と食べに行く、って言ってなかったか? なのに、なんで、葉月なんだ? 俺、当然、むっとする。 だって、ねえちゃん、べたぁ、って葉月によりかかって、くっついて帰ってきたから。 人肌好きのねえちゃん、しかもかなり酔っている。 だからこそ、身内や女友達以外にもべたべたしてるんだろうと思う。 けど、ねえちゃんのその性癖を知らない相手なら、確実に誤解するだろ!? 結構長い友人づきあいの葉月だって、そんなの分かんないぞ? それに、きっと、葉月って……。 酔ってぐだぐだのねえちゃんを見詰めるその眼差し……! 俺は実感した。 葉月こそ、俺の最大最強の敵だ、と。 「なぁ、葉月、ちょっと……」 とりあえずねえちゃんはお袋に任せて、俺は葉月の袖を引いて、玄関先まで連れ出した。 「なんで、ねえちゃん、あんたと帰って来るんだ?」 「ああ……一緒に、夕食食べに行ってた」 まさか……。 「もしかして……ふたりっきりで?」 「だとしたら……?」 葉月の表情はとても読み辛い。 俺は、じっと葉月を見上げた。 うん、悔しいけど、まだ、身長は葉月に追いついていないんだ。でも、もうすぐ追いつく……きっと。俺、今伸び盛りだしな。 「……藤井と有沢が、一緒だった」 俺の眼差しを受けて、葉月はため息混じりに言った。 それから、今度は、葉月からじっと俺を見てきた。 「おまえ……」 何を、言いたいんだろう? けど……なんか、挑まれているような気がして……俺は葉月を睨み返した。 「……いや、まぁ……いいか……」 言い淀む。 なんだって、いうんだ? ちょっと、らしくない。 けど、多分……ねえちゃんの事、か? 「葉月って、さ……」 だから、俺から聞いてみた。 「もしかして、ねえちゃんの事……気になってる?」 好きなのか? って、本当は問いかけようとしたけど、それでイエスって返事が返ってきたら、正直、俺、どうやって葉月に切り替えしていいかわからなかったから。 そしたら、葉月、言葉よりも表情で応えてきた。 ふんわり優しく微笑んだんだ。 「少なくとも……」 それから、ゆっくり口を開く。 「ただの友達じゃないから……俺の方は、ね」 伏せられた眼差しのまま、俺の様子を伺い見る。 うっ……なんか、ホントに挑まれているみたいだ。 というか、葉月、何しても絵になりすぎる。 悔しい。 負けは絶対認めないけど、でも、葉月にだけは、俺、勝てそうもない。 でも、勝ち目なくても、勝たなきゃ意味ない事もあるだろ? だから、俺は怯まない。 しばらく、睨みあう。 で……その睨み合いに勝ったのは、意外にも俺、だった。 葉月は、はぁ、と、深く息を吐き出して、苦笑しながら髪の毛をかきあげた。 「度を過ぎたシスコンなら、いいんだけど、な……」 何気なく言う言葉に、俺こそ苦笑した。 なんというか、葉月、かなり鋭いかもしれない。 「うん。俺もそう思ってた」 にっと笑う俺に、笑い返し、葉月は俺の頭をくしゃっと撫ぜた。 子供扱いすんなよ! と、思いはしたが……悪い気はしなかった。 俺にとって、葉月はやっぱり、憧れで……イイ男の象徴だから。 「じゃ、帰るよ」 軽く手を上げて背を向けた葉月に、俺も軽く手を上げる。 そして……。 「気のせいに、しておきたかったんだけどな。酔って、俺にもたれ掛かってる間、あいつがおまえの名前呼んでたのは……」 …………………?? 「え? なに?」 元々ぼそぼそ喋りの葉月の声は、よく聞こえない。 でも、俺が聞き返した後、葉月は歩みを止める事なく去っていて……俺は、聞き逃した葉月の言葉をしばらくは気にしていたけど、時間が経つうちに、すっかり忘れてしまった。 それにしても……葉月って、手ごわそうだなぁ……。 あいつが本気になったら、俺、どうしよう? 絶対に勝ち目ないって……。 そう、葉月になら、かなわないかも、と、らしくなく思う。けど、コイツになら……多分、大丈夫かなぁ……。 「今日、先輩は?」 ビングに入りながら、聞く。 「今は大学。そのうち帰ってくると思うけど……最近、連れと買い物とか行くから、何時になるかは分かんないけどね」 俺が言うと、がっかりしたようなほっとしたような表情をした。 うん、こいつがねえちゃんに何となく気があるのは、この数年、熟知している。 そう、あの頃から成長したものの、やっぱり、小柄で童顔は相変わらずの……日比谷。 一応、スポーツでそこそこ名を売っている三流大学に進学し、大学生野球を続けているこいつは、今だに、俺の弟子。 あの性格は、やっぱり、どーしても矯正不可能。 悪いやつじゃないし、女の子受けもいいみたいだけど……彼女は、いない。 日比谷って、思い込みが激しくて、客観性がないんだよな〜。もっと自分に似合う格好したり、言動とったりすれば絶対モテると思うのに、いつも、どこか、ハズしてるんだよな。勿体無い。 でも、まぁ、こんなヤツだから、ねえちゃんの傍に近づけてもさしたる心配はないと思うんで、こうやって時々家で会ったりしているんだけど。 「尽くん、コレ、例のもの」 日比谷の差し出す紙袋を、受け取る。 「あ、サンキュー。今度は、どんなの?」 今日、こいつが家に来たのは、主に、これが目的。 18歳超えてる日比谷は、15歳未成年の俺と違い、許されているものがある。 タバコと……R指定の閲覧権。 未成年……許されてなくても、見るものは見るんだけどな。つか、こんなの、もっとガキの頃からあの手この手で見てるって。 でも、今、一番こいつからが入手しやすいからな〜。 借りたり、もらったり……だいたい、まだ中坊の俺達は、ダチ同士でそうやって回し合う。じゃないと、なかなか入手は難しい。まーさーか、店頭で買う勇気のあるヤツは、そうそういないし、通販も家族にバレる危険を晒す勇気あるものは少ないし。ま、R指定ない程度のものならら、ちょっと遠出して、とか、って事もあるけど。あ、俺は、絶対、自分からはしないけどな、勿論。パシリさせる方。裏で糸操るの得意なほうだからさ。 紙袋を開けてみる。 ビデオが4,5本、写真集と雑誌数冊……。 今、俺達はリビングにいる。 が、今、家には誰もいないから、結構おおっぴらに見られる。 取り出したそれらは……。 …………………………。 …………………………。 こいつの趣味って、結構、マニアックなんだよな〜、とか、思う。 まぁ、いいんだけどね……。 マニアックっていっても、コスプレとかそういった方向だから。さすがに、俺には痛かったり汚かったりするものを見る趣味は、まだないし。まだ……これからは、分からないけどね……くくくく……。 ………ともかく、アクション映画やK-1ビデオ同様に、そういう映画も好きな日比谷は、結構熱く語ってくれたりして……。 う〜ん、俺は、実用性があればいいんだけどな。 そういった事を熱く語るのは、俺達男の友情の証のひとつ……多分。 俺も、こいつに貸すために、ビデオを持って来ようと立ち上がったんだけど……。 「ただいまぁ〜〜〜」 マ・ズ・イ 予想の他早く、ねえちゃんのご帰宅だ。 見れば、テーブルの上にビデオや雑誌が散乱している! 日比谷と俺は、それらを慌てて紙袋に詰め込み、ねえちゃんがリビングに入ってくる頃には……セーフ! どうにか、取り繕える状態に。 「あ、やっぱり、日比谷くんだ。いらっしゃい」 珍しく帰りが早いな、ねえちゃん……。 まったく、タイミングが悪い事……ふぅ。 「あっ、はい、先輩。お邪魔しています!」 ちょっとカチカチになる日比谷……ねえちゃん相手にこれじゃ、マトモな恋愛もできんわな。 ところで、ねえちゃん、鞄をカーペットの上に置くと、ずんずんと俺達の方に近寄ってきて、何をするかと思えば。 「ねえ、日比谷くん!」 やけに真剣な調子で日比谷に詰めより出した。 なんだ? なんだ?? 「聞きたいことが、あるの!」 バンと、なけなしの気迫を込めてテーブルに手を突く。 日比谷、もう、ガチガチ……つかさ……。 今日、秋にしては日差しがぽかぽか暖かい方で……ねえちゃんは、ジャケットの下に、半そでのVネックセータを着ていた。勿論、そんな陽気だから、ジャケットの前ははだけられたまま。で……そのVネックセータが……かなり、Vの切れ込みが深く……。 つまり、膝を折らずに立ったまま、前屈運動並にテーブルに手をついて、日比谷に向かい合うねえちゃんの胸の谷間は、結構くっきりと襟元から浮かんでいるはずで……。 ほら見たことか……。 日比谷の視線の先、ソコに釘付け。 なんか、ムカツク……。 「あのね、ここ数日中に、なっちんから連絡、来てない?」 ねえちゃんの言葉に、ちょっと遅れて日比谷が反応する。 ……ちっ。やっぱり、見てたな……想像、してたな!? 「えーと……はい、来てました。メールが」 「どんな内容!?」 ちょっと鬼気迫る雰囲気のねえちゃんに、さすがに日比谷も胸の谷間から視線をそらせたけれど、今度はかなり困惑している。 「なんか……藤井先輩らしい、いつも通りのメールっすけど……」 自分のポケットから携帯を取り出して、そのメールを呼び出してねえちゃんに見せる。 「えーと……"年上美人おねーさんが彼氏を募集中! 若き青年よ、来たれ!!"……って、やっぱり……」 ねえちゃん、はああっ、と、肩を落として、その場に座り込んだ。 なにが、やっぱりなんだか。 「で、日比谷くん、他には?」 「これだけっす。ていうか、自分、前にもこの手のメールで藤井先輩にからかわれてるっす。だから、もう、今回はひっかからないっすよ!!」 ああ、確か、半年前に愚痴ってたあの件だな。 美人のおねぇさんがコンパをしたがってる、って奈津美さんから連絡あって、喜んで大学の先輩後輩ともどもコンパを開いて……確かにぎょっとするくらいの美人揃いだったんだけど、実は、それ、皆………………………おかまさん、だったりした、ってアレ。 ねえちゃんも、その件については知っているみたいで、ああ、と、閃いたような顔をした。 「ああ……そっか、あれね。なっちん、姫条くんにしつこく付きまとっていた人とガチンコ勝負持ち込もうとしたんだけど、結局意気投合しちゃって、その人に新しい相手との出会いを斡旋する、って事で和解して、それに日比谷くんたちに白羽の矢が立って……だったよね?」 「そうっす。けど、自分、散々な目に遭いまして……」 うん、相手のひとりに気に入られ、しばらくラブコールされまくってた、って言ってたっけ。 日比谷、かなり直情だから、もしかすると押されまくって、転んで、ソッチの道に行くんじゃないかと期待……いや、心配してたんだけど、結局ノーマルまっしぐらで振り切って諦めさせたんだよな。 「今度も、どうせ、そういう悪戯っす。藤井先輩は、イマイチ信用できないっす」 あはははは。 日比谷も、一応ちゃんと学習すんだな。 少し怒りながら言う日比谷の言葉に、ねえちゃんは本当にほっとした顔になってる。 一体、なんなんだろうな。 ま、後で聞き出そう。 今は、それよりも……この、紙袋から溢れそうな状態のブツの数々をなんとかしないと……。 いくら鈍いとはいえ、ねえちゃんに見られるわけにはいかないから。 「日比谷、それじゃ、コレ持って俺の部屋行こうぜ。例のアレ、渡したいしさ」 目配せをすると、日比谷、ねえちゃんと離れがたそうに、少しだけ躊躇ったけれど……素直にソファから立ち上がった。 って……あっ! ヤバ。 ビデオ1本テーブルの下に転がってる。ねえちゃんのすぐ横! 日比谷も気付いてないし……俺、慌ててそれを拾って、ねえちゃんに気付かれないうちに紙袋に入れる。 けど。 「なぁに? 日比谷くんからビデオ借りたの?」 見られた。 けど、きっと、一瞬の事。パッケージの絵柄までちゃんと把握していない違いない。 「あ、ああ……」 「何のビデオ? 私にも見せて?」 目がキラキラ。 どうやら、今日は、これから出かける予定も何もないらしい。 いや、そりゃあさ、こういうのを一緒に見られる関係になれればなぁ、とかは思うけどね……今はまだ、ダメだよなぁ……。 いや、見せて、そういう感情を煽るのも楽しかろうが……このねえちゃんの事だ、きっと、見せた途端に、俺、変態呼ばわりされる事間違いなし。 俺が前に読んでた、ちょっと水着姿のおねーさんが載っている雑誌を覗き見ただけでも「尽のスケベ!」だったもんな。 そういう変な警戒のされかたは、嬉しくない。 「ねえちゃんの見るようなものじゃないよ。アレだよ、アレ……K-1とかF-1とかの記録ビデオだから」 K-1……当たらずとも遠からず。格闘技……かもしれんしな。ベットの上での。 F-1……そうだな、中には、スピードを競うようなのもあるしな。 100%の嘘じゃないもーん。 俺の言葉を素直に信じたねえちゃんは、ちぇー、と、肩を落として、リビングのテレビをつけた。 鈍くて単純で助かるよ、まったく……。 つづく |
<言い訳とか>
また、自分自身の嫌なループを作ってしまった……。
完全に連載形式……このシリーズではやるまいと誓っていたのに……。
とりあえず、これは3話完結。
日比谷をコケにしとりますんで、日比谷ファンのお怒りが怖いです(^^;)。
結局、葉月vs尽が好きみたいです、私。
あと、それ以下の部分は…若い男の子同士の、秘め事、でしょうか?(笑)
誰でもやってる事でしょう、うん。
尽くんもごく普通の男の子なんで……ねえちゃん大好き、という点を除いて。
<2>はねえちゃんと尽の会話。
<3>は……R指定つけようかどうかと微妙に迷ったシーン。
つっても、13禁程度のですし……結局つけませんけど。
表なのに、回が進むごとにいかがわしさ(話題の方向がね)が増してきたようです。
十代前半で読んで見える方がいたら、ちょっと……心配で(^^;)。
ちなみに、男の子の初○ナ○ーは、平均12歳くらだそうです。
某女性総合情報誌情報で、ホントかどうかは分かりませんが。
ああ、もう、本当にこういうの表で話題にするくらい、
恥じらいがなくなってきてるかね、私……ゴフッ……(倒)。