深夜0時:公園



 深夜0時過ぎ。
 煌々と灯りのともる夜のオアシス……コンビニ前。

「ついでにお菓子も買ったし、さっさと帰ろ?」


 尽の促しに、彼女はコクンと頷いて、尽に並んで歩き出す。

 だが、様子が変だ。

 尽は、歩みを緩めて、彼女……姉の顔を下から覗き込んだ。


「何? 夜中の遠出で疲れた? 運動不足?」


「……ばか。そういうんじゃなくて……」


 自宅から一番近いコンビニを避け、わざわざ滅多に来る事のないような少し遠方のコンビニまで深夜の買い物に来ているのには、理由がある。


「こんな時間に、あんたと私……男と女がそーいうの買っていくのって、まるであんたと私が……」


 姉は、言いにくそうに言ってから、また言い淀む。


 ああ、と、尽は唇を歪めて苦笑した。

 姉の言いたい事なんて、すぐに分かる。

「そーいうのって、コンドームの事?」


「………っ! だから、そういう名詞をダイレクトに口にしないでっ」


「まぁ……別に相手は商売だから特に気にしないだろうけど、内心でそー思ってるだろうな」


 尽は、くすっと笑って、コンビニのビニール袋の中に入っている、さっき買ったものを思い出す。


「こんな深夜に、男と女が一緒に買い物に来て、コンドームを買っていけば……そりゃ『あぁ、こいつら、今からヤるんだろぉなぁ』って、普通は考える。当然だな。つか、実際帰ったらすぐに使うし」


 くすくす笑って言う尽の言葉に、姉は街頭だけの薄闇でも分かるほどに真っ赤になった。


「やっ、やっぱり、私、外で待ってれば良かった……」


「俺だけにこんなモン買わせるの? それって、酷くない? だって、コレなきゃヤだ、って駄々こねたのねえちゃんじゃん」


「ヤなんだもんっ。だって、だって……もしも、できちゃったら……」


「そんなヘマしない、って、言ってるだろ? ……俺、信用ない?」


「信用してないわけじゃなくって、もしもの事があるから……!」


 姉弟で愛し合うだけでもイケナイのに、もしも、できてしまったら……?


 そう考える姉の心配はもっともで。

 尽は、かすかな溜息をついた。

「ふぅぅ……。こんな事なら、もっと買い溜めしとくんだった。折角、気持ちよくなりかけてたのに、なんで、よりによってこれからイクぞーって時に、ないって気付くかなぁ……。あぁ、切ない……」


 お互いを愛撫し合い、求め合って、盛り上がって、盛り上がりきった所、ベットの造り付けのいつもの引き出しに手を伸ばしたら、あるはずのそれがなくて……。


 尽は別に大して気にしなかったんだけれど、姉の方がそうはいかなかった。
 年上として、姉として、女として、当然の心配だろう。

 後は、二人が繋がるだけの状態だったのに、姉は尽を拒否し、半泣きになりながらも拒否し続け……わざわざ、真夜中の買い物に出かけることと相成ったわけで。


「私は、別にあそこで止めても良かったのに……」


「あ、じゃあ、お口でご奉仕してくれる気あったんだ?」


「………」


「じゃなきゃ、絶対納まんなかったぞ? 今だって、まだ半勃ち……」


 あんまり直接的な表現に、姉は尽の腕をきゅっと抓りあげた。


「ばかっ」


 会話しながら歩き続け、もうかなり家に近いところまで来ていた。


 時間が時間だから、住宅街に軒を連ねるどこの家も、大概灯りが落ちていて。

 けれど、こんな静かな時間だからこそ、声は響くから。

「こんな会話、知り合いに聞かれたどーするのよぉ」


 少し涙目で睨み上げてくる姉の表情は、尽の背筋に奇妙な生物が這うような戦慄を呼び起こす。いわゆるリビドーという奴か。


 どうしようもなく、たまらなくなる。

 行為半ばで押さえられ、くすぶっていたリビドーが、ここに来て、一瞬にして簡単に燃え上がる。

「そこの公園なら、声は響かないと思わない?」


 家の傍にある公園。

 大型遊具や砂場など一通りの子供の遊び場が設えられ、東屋まであるし、花壇や樹木も多い。

 確かに……公園の中の東屋あたりで会話する分には、近所にそれは聞こえないかもしれないが……。


「家までもう少しでしょう? さっさと帰ればいいじゃないっ」


 ぷっと頬を膨らませて、歩調を速めた姉。


 そういう事じゃないんだけどな、と、尽は苦く笑って、姉の腕を捕らえる。


「や、たまには、外でするのもいいんじゃないかと思ったんだけど? ほら、ちゃんと準備もあるし?」


「……っ!」


 捕らえた腕を引き寄せて、その体を抱き寄せる。

 自分の胸の中に転がり込んできた姉の華奢な体と甘い香りに、尽は眼差しを伏せて唇を綻ばせる。

「我慢、できない……」


 意識しなくても、吐き出す自分の吐息に熱が篭るのが分かる。

 家に帰るまでもない。あとほんの数歩の距離の先に、ふたり愛し合える場所がある。

 柔らかな素材のスカートの上から、ふっくらとした弾力のある姉のお尻をまさぐる。


「やっ……ぁ、ダメ……」


 尽の胸を細い腕で突っぱねようと抵抗するけれど、そこに篭る力に、本気の抵抗の意気込みはない。

 はぁ、と、姉の耳に熱い吐息を吹きかける。

「ねえちゃん……」


 この場で押し倒したいくらい、熱くなっている。


「声、我慢できる?」


 耳元のごく近くで、問い掛けると、姉はいやいやとばかりに頭を振った。


「や……そ、そんなの……自信、ないもの……」


「じゃぁ……声が出そうになったら、俺に教えて? 口、塞いであげる……こうやって……」


 姉の唇を己の唇で塞いで、吐息さえ吸い尽くす。


 密着した互いの体の熱が競うように上昇していくのが感じられる。


「…………もう、抑えられない……」


「……っ! あ……やっ!?」


 唇を離して、熱い息の塊を吐き出した尽は、姉の体をひょいと持ち上げて、抱き上げると……くすんだ外灯の灯りだけに照らされた、薄暗い夜の公園へと足を踏み入れた。


 そうして…………深夜の公園で、ふたりは愛し合う。


 


 ……愛し合った……ハズなのに……。

「やっ、尽のばかっ。もう、二度と、しないっ!!」


 大層ご立腹の姉に、尽は苦笑い。


 今はふたりとも自宅に帰り着いているものの……。

 一体何があったかといえば。

「いっぱい虫に食われちゃったし……うぅ……ヘンな所まで……」


 微妙な顔で腰をもぞもぞうごかす姉に、尽は苦笑いを深くした。


 公園の木立の影で、体を求め合ったふたりだけれど、夜の茂みに虫はつきもので。しかも、ふたりとも体を汗で湿らせて、乱れた呼吸を吐き出して。虫が寄ってこないわけがない。


「舐めてやろうか?」


 尽も、虫に食われた腕を爪で引っかきながら、悪戯っぽく言う。


「ばかっ!」


 即返ってきた否定に、尽はめげなかった。

 ずいっと姉に詰め寄って、くすくす笑う。

「いつも、舐めてるじゃん……」


 言いながら、その手は姉の太股の間に滑り込んで、太股の赤い腫れをくすぐるように指先でなぞる。

 痒みとその刺激に姉の体はびくんと震えた。

「痒くなったら言ってよ。舐めて、消毒してやるから」


 下から上目遣いに覗き込む尽の眼差しに、姉は顔を真っ赤にしてたじろいで、唇を震わせている。

 尽の言葉に実感が篭っているのを、これまでの経験から理解しているのだろう。

 初めて屋外で愛し合ったその刺激は、その火照りは、まだ、肉体に残っている。

 だから、尽の愛撫によって、簡単にその熱は呼び起こされて。
 尽の言葉どおりに……姉は、虫刺されの後にひとつずつキスを落とされて、ヘンな部分の虫さされは、特に念入りに、強く吸われたり優しく噛まれたりの刺激を受けて。

「やっ………もっ、あぁ……んっ!」


 簡単に、尽の手の内に落ちた。


 体中に、虫刺されの跡かキスマークか分からない朱色の斑点を無数に散らして、姉は、尽に愛される。尽を愛する。


 そんな自分の肌の惨状を見て……姉が喚くのは、コンビニで買った箱の中身が随分減った明るい陽射しの時間。


「こっ、これじゃ、水着は勿論、短いスカートも、襟の開いた服も、半袖も……着られないじゃないよぉ!! 尽の、ばかぁあっ!」


 けれど姉の喚きを他所に、尽はぼそりと呟いた。


「コンビニで売ってるゴムひと箱くらい、簡単に使い切っちゃうな、この分だと。早いトコ通販でまとめ買いしないとなー」


 ……実際、虫刺されの跡とキスマークが消える前に、尽の言葉は現実となった……。

 




END




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<言い訳とか>

設定とか結構気に入って書き出したのですが、
短すぎたので、後半加筆。
ラブラブというか、エロエロ話になっちゃいました。
13禁にしようかとも思いましたが……
警告に止めます(笑)。
18禁まで指が動いていたのですが……
今はまだ止めておきます(笑)。

それにしても……うちの姉には決まった名前がナイので……
どうしたもんかなー。本当は名前で書きたかったのだけれど……。
今更固定した名前にするものアレだし、
イチイチ異なる名前をひねり出すのも疲れたし……(悩)。