※この二次創作小説についてとオリジナルキャラ紹介
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| <オリジナル話・11> Birthday〜彼女の生れた日に【5】 「・・・良い子だ、」 中ノ瀬が鳥貝の頭を撫で、頬を撫でる。 その手の動きが、不思議と心地良いと思ってしまって、はっとする。 「・・・っ、もう、いいでしょう?」 中ノ瀬は鳥貝の心の動向を読み取って、くすくす笑う。 「おれはな。」 「・・・?」 中ノ瀬は急に立ち上がって鳥貝の腕を取ると、無理矢理上半身をソファに押しつけた。 今まで中ノ瀬が座っていたソファの座面に顔が押しつけられ、膝立ちになったお尻が中ノ瀬の手で晒される。 「やっ!」 恐怖で身体がすくむ。 中ノ瀬を達しさせる事で済むと思っていたのに。 「やだ、やだっ、やめて・・・、」 泣きながら懇願する声を無視して、中ノ瀬は鳥貝のお尻からその下に手を這わせ、指を入れる。 「・・・濡れてる。おまえも感じていたんだろう?」 「・・・っ、それは、」 「ユキとした跡だ、と云っても信じないよ。」 鳥貝は、何も云えない。 はっきりと実感してはいなかったけれど、自分でも濡れている事はどことなく分かっていた。 「女はいいよな。何度でもイク事ができる。愛する男と寝た後でも、嫌いな男に抱かれることもできるわけだ。」 「や、そんなのっ・・・、」 鳥貝の中で指をぐりぐりと動かして笑う。 「ひゃ、や、やだっ、」 明らかに濡れている中を刺激され、鳥貝は不快感より快感が先立ってしまう自分に驚いていた。 身体が、嫌だと思う意識とは裏腹に快楽を求めてしまう。 「してくれたお礼に、イカせてやるよ。」 「やっ、ダメ、挿れないで!」 鳥貝の咄嗟の懇願の言葉を中ノ瀬は笑う。 こんな状況でも、百合子に操を立てるいじらしさが、可愛らしくも、鬱陶しい。 が、さすがに彼女を壊してしまうわけにはいかないから、指を、蠢かした。 指が鳥貝の中で激しく遊ぶ。もう片手は敏感な部分を執拗にこね回して・・・。 「や、やっ・・・ぁう、ん・・・んんんっ!」 自分の腕に噛みついて、必死で声を押し殺して・・・鳥貝は、達した。数時間前に百合子としていた感触が身体に残っていて、敏感になっていたのも確かだ。 けれど、心だけおいてけぼりで身体だけ無理矢理快楽に導かれても、むなしいだけだ。 鳥貝はぽろぽろ涙をこぼすしかない自分を、悔しいと思った。 「たっぷり出たな。ユキのモノも一緒に押し流されてる。孕めなくて残念、って所か?」 揶揄する卑猥な内容にも、鳥貝は反応できない。 この男に関して、鳥貝は百合子に振り回される以上に振り回されている。 ただ、百合子と大きく違うのは、そこに愛情があるかないか。 「・・・です、」 嗚咽の中から、鳥貝は低く呟いた。 「ん? 何か云ったか?」 中ノ瀬は体裁を整えながら、可笑しそうに問い返す。鳥貝が何を云っているか、分かっているはずなのに。 「・・・あなたなんか、大嫌いです。最低です、」 「そうだな。ヒロからは鬼畜扱いされたしな。・・・で?」 動じることのない男を、鳥貝は振り向いて、振り仰いで、睨み付ける。 ・・・結局、自分には力もないし、この男に反論できるだけの語彙力もない。 だから、感情的に睨み付けるしかできない。 それすらも、男には何の効果も与えられないのを分かっていながら。 「朝になったら、ここ出ます。あなたは、信用できないっ。あなたとは、もう関わりたくない、」 「それ、ユキにどう云う? さっきした事、正直に告白するか? 自分以外の男に奉仕したおまえを知って、ユキはどうなるだろうな?」 「・・・っ、でも・・・、」 「それに・・・、」 あんな事をさせられて、こんな辱めを受けて、目に涙を溜めて、戸惑いながらも勝ち気に睨み続けてくる鳥貝を、好ましいと思う。 だから、より意地悪がしたくなる。 鳥貝の腕を引き寄せて、驚く彼女の唇にキスをした。 驚きにぽかんと開けられた唇に舌を進入させ、彼女の口腔を無遠慮に探索する。 やっと鳥貝がはっとして中ノ瀬の胸を叩き始めるまで。 「・・・っと、」 舌に噛みつかれそうな気配を察して、咄嗟に唇を離す。 鳥貝は激しい感情を表せた眼差しで中ノ瀬を睨み付けている。 鳥貝の手が上がる。中ノ瀬の頬を叩こうとするように動くそれは・・・直前で力が抜ける。 「・・・もぅ・・・出て行って・・・、これ以上、もう、」 再び、鳥貝の目から涙がこぼれ落ちる。 強く噛んだ唇は、嗚咽を押し殺そうとしているのか。 「・・・隠しカメラの電源は切っておくよ。そもそも、おまえらの動画を他の人間に見せる気はさらさらない。おれは、欲張りだから、好ましいと思ったモノは独り占めしたくなるタチでね。」 中ノ瀬は微笑んで云う。 言葉は本気だ。 百合子と鳥貝が睦み合う姿を見たいと思い、隠しカメラを起動させておいた。それだけで十分悪趣味だけれど、それを他人に見せるような最悪な趣味はない。 ふたりが睦み合う姿は、扇情的というよりも、ひたすら微笑ましかった。 鳥貝はともかく、あの百合子までが幼い少年に戻ったように、ひたすら純粋に愛を囁いて、快楽からだけではなく互いに求め合う姿は、そういうものを失って久しい中ノ瀬には心地良く見えた。 つがいの小鳥が、庭先で一生懸命囀りあっているのを見るような気分なのだ。 「ユキに云っても構わないけれど、云わないでいた方がお互いいいよな? 折角、未だに熟睡しているんだから。・・・ケーキ、潰れているかもしれんけど、食べてくれよ?」 中ノ瀬が優しい口調でそう云うのに、嗚咽を抑えながら泣きじゃくる鳥貝は応えない。 「それじゃ、おやすみ。あと3日、ユキとゆっくり楽しんでくれ。おれは明日の朝K県に戻るから、もうちょっかいは出しに来ないよ。」 応えない鳥貝に微笑んで、中ノ瀬は別荘を後にした。 結局、中ノ瀬は今では百合子を息子か弟のように大切に思っているし、彼が選んだ鳥貝という娘も気に入っている。 彼らにちょっかいをかけるのは、中ノ瀬なりの親愛表現なのだけれど、歪みすぎたそれに、純粋で生真面目な鳥貝が気づくわけがない。 気づくとしたら、それは、鳥貝がもう少し大人になった時。 しばらく泣きながら座り込んでいた鳥貝。 キスを、するつもりはなかった。奉仕はできても、キスは、したくなかったのに。 百合子に申し訳ない思いで一杯になる。 やっと涙が止まって、百合子を振り返る。 余程深い眠りなのか、まだ寝ている。 それが、嬉しいような・・・憎いような。 でも、ここまで知られなかったからには、シラを切り通す方が、きっといい。百合子に嘘をつくことになってしまっても・・・。 のろのろと立ち上がって、汚れたソファと床を着ていたガウンでぬぐう。 それから、ふらふらと風呂場に向かった。 中ノ瀬との行為で汚れてしまったまま、百合子の側に戻るわけにはいかないから。 何も身につけていない身体に、空気が刺さるように冷たい。 それが罰なのだと・・・それくらいの事では許されないかも知れないけれど、せめて、何かで自分を罰したかった。 備え付けられていた洗濯機にガウンを入れて回し、風呂場に入る。シャワーだけ浴びる事も考えたけれど、それくらいでは身体の汚れは取れそうもなかったから、再び桧の浴槽にお湯を溜めた。 口の中も、身体も、痛いくらいに綺麗に洗って、お湯に浸かり・・・鳥貝はぼんやりとする。 むしろ何も考えたくなくて、浴室の桧の木目を見るともなく見つめ続けていた。 お湯が大分ぬるくなってきても、それでも、ぼんやりとしていた。 「春海?」 だから、不意にかかった声に、どきりと飛び上がる。 声と共に風呂場の引き戸が開けられて、百合子が顔を見せ、ほっとした笑顔をしてみせた。 「良かった。姿が見えないから、心配した。・・・おれも、入るから。」 百合子の顔を見て、胸の痛みを感じる。 いつもなら、もっと嬉しいのに。・・・そう思ってしまう自分が嫌だった。 「なんだ、すげぇぬるいっ。春海、風邪引くぞ。」 湯船に浸かっての第一声の後、百合子は脱衣所まで追い炊き機能を稼働させに行き、戻ってきて湯船に入ってすぐ鳥貝の身体を引き寄せて、彼女を膝の上で背中から抱きしめた。 「・・・どうした?」 ぬるいお湯にぼんやり浸かっていたり、妙に反応の薄い鳥貝に違和感を覚えている。 鳥貝は、背中の百合子にもたれかかりながら、息をつく。 「・・・うん、ちょっと・・・眠れなくなっちゃって、」 「起こしてくれればよかったのに。」 「百合子さん、熟睡していたでしょう? 起こせません。」 くすっと笑って云う。 鳥貝が中ノ瀬と色々している間、まったく目覚めなかった百合子を思い出し、少しだけ非難したい気持もあった。でも、それを出さないようにして云った。 「おまえとした後と、一緒にいる時だけだよ。こんなに良く眠れるの。おまえがすげぇ気持ちイイから。」 鳥貝の身体を抱きしめて、幸せそうに云う。 幸せを感じてくれている百合子に、余計なことを云えるわけがない。 「百合子さん・・・、」 背中の百合子の存在を強く感じて呼びかける。 「ん?」 優しく問い返してくれる。 それが、嬉しくて、愛しくて、たまらない。 「大好きです、」 心からそう思う。 返事の代わりに笑う吐息が漏れ、再び強く抱きしめて首筋に唇の熱を感じる。 「・・・随分長いことつかっていたのか? 肌がふやけてるぞ?」 鳥貝の掌に触れながらの問いかけに、鳥貝は小さく笑う。 「ん・・・ぼんやりしていたら、いつの間にか・・・、」 自分の手を握る百合子の手を握りかえして、ゆっくりお湯の上に導く。 鳥貝より大きな手。形の整った長い指と爪。手を見ただけで、それが百合子だと分かる。 大好きな人の、大好きな手。 百合子は鳥貝の為すがままに手を預けている。 力のこもらない百合子の手を、鳥貝はしばらく撫でたり、指を開いたりして遊んで、それから、自分の手を組み合わせて繋いでみる。 「・・・春海の指も、長いよな。器用な手だ。」 今まで為すがままだった百合子の手に力がこもり、組み合わさった鳥貝の手を自分の方に引き寄せて、手の甲に口づける。 「春海は、指先まで、かわいい。」 鳥貝の指を口に含む。 「や・・・、」 それだけで、ぞくりと身体が震える。心地良い快感だ。中ノ瀬にされて感じた快感とは、まるっきり違う。 百合子になら、何をされても幸せなのに。 鳥貝はゆっくりと百合子の手をふりほどいて、身体を反転させた。 百合子と向かい合わせで座る。 百合子が幸せそうに笑っているから、鳥貝も笑う。 それから、最初は甘えるように百合子に口づけて・・・優しく応えてくれる彼を感じてから、深く、唇を重ねた。 中ノ瀬とした感触を全部、忘れさせて欲しかった。だから、いつも以上に激しく、百合子を貪った。 「・・・っ、春海、すげ・・・、」 百合子から鳥貝の頭を押さえて唇を離し、呻くように呟いた。 「おまえ、まさか・・・、」 疑惑の声に、ひやりとする。もしかして気づかれていたのかも知れないと。 けれど、実際は・・・。 「あのワイン、飲んだのか?」 あのワイン・・・つまり、百合子曰く特別な・・・媚薬入りのそれだ。 鳥貝は、うっとり微笑んで頷く。嘘をつく。 「喉、乾いてたから・・・、」 そして、再び百合子の唇を求め、お湯の中百合子自身を探り当ててそれを擦り上げる。 「・・・っ! ・・・ちょ!」 百合子の身体が震え、再び無理矢理唇を離される。 「だめ、春海。」 めっ、と、優しく叱ってくる。 鳥貝は拗ねたように頬を膨らませてみる。 「散々おまえの中に出したから・・・もうヤバイって。今また出したら、次の分が残らない。まだ3日あるのに! ・・・でも、・・・欲しいのか?」 「ん・・・、」 鳥貝は素直に頷いて、百合子の身体を抱きしめた。 百合子が吐息で笑う。 「おまえがそんな風に云うなんて初めてだし、おれだって・・・枯れるまでやりたいけど・・・、他ので我慢できるか?」 「・・・百合子さんを、感じたいんです。百合子さんがしてくれるなら、いい・・・、」 潤んだ瞳で百合子を見上げる。 そんな鳥貝は、百合子にはどうしようもなく可愛く見える。 「分かった。」 百合子は笑って、鳥貝にキスをした。 それから・・・百合子の指で、唇で、舌で、鳥貝は何度も何度も達して、中ノ瀬にされたおぞましい記憶を百合子で塗り替えた。 百合子に愛される度に、自分が浄化されていく気がした。 けれど、中ノ瀬の事を考えないでおこうと意識する度に、男の事が嫌悪と共に浮かんできて、鳥貝はいたたまれなかった。 だから、K沢での別荘滞在中、鳥貝は普段ではあり得ないくらい、百合子を求めた。 外出しても、片時も百合子と離れるのが嫌で・・・百合子がいなくなった途端に、中ノ瀬の事を思い出しそうで・・・あるいは、どこからか中ノ瀬が現れそうで、常に百合子にくっついて歩いた。 「春海、なんか、甘えっ子スイッチが入りっぱなし? どうしたんだよ、」 「・・・いいんです。知ってる人誰もいないし、恥ずかしくないから。・・・鬱陶しいですか?」 「いや、全然。むしろ、夢じゃないかと時々疑ってる。それとも、狐にばかされてる? ・・・ホンモノの春海だよな?」 「ホンモノです。帰ったら、いっぱい・・・確かめて下さい。」 繋いだ手にきゅっと力を入れて、頬を染めて鳥貝は云う。 そんな事を往来で云う事も、普段には有りえなくて・・・百合子は少し首を傾げた後、それでも笑った。 鳥貝自身の云うように、K沢でふたりきりだからこそ、彼女が遠慮なく甘えてくれているのだと、そう解釈して。 別荘に滞在している間、むやみに開放的になった鳥貝と腰が抜けるかと思うまで愛し合い、楽しんだ。 どこで百合子が求めても、鳥貝はほとんど拒まなかった。むしろ、突然自分から求めてくることすらあった。 お風呂では勿論、例えば台所で、例えばソファに座っている時に、あるいは廊下で、玄関ポーチで・・・一度だけ、戯れに肌寒いウッドデッキに出て外を眺めていた時に、鳥貝が後ろから抱きついてきてそのまま・・・という事もあったけれど、さすがに風邪を引きそうだから、すぐに部屋の中に戻った。・・・寒くさえなければ、そのまま外でしても鳥貝は嫌がる事もなかっただろう。それに関しては少しだけ、勿体ない事をした気分になっている百合子だった。 結果、鳥貝の誕生日旅行は、百合子が当初考えていたよりもずっと密度の濃い数日となった。 こんなに長時間こんなに密着して二人きりで過ごすのは初めてで、百合子はかつてない至福を感じ、数年先の未来、ふたりが一緒に暮らすようになったら、の想像をこの時に重ね合わせて、それから先しばらく不気味なくらいにご機嫌だった。 こうして、百合子は様子がおかしい鳥貝に気づいていながらも、それを深く追求しなかった。鳥貝の事を疑う事なく、彼女を自分だけのものだと信じ、彼女が他の男とどうこうなるなんて考えることもなく・・・。 だから、これから少し先の未来、鳥貝は百合子に云えない秘密を抱え込むようになる。あるいは、ふたりの関係に変化をもたらすような。 鳥貝は、後悔していた。 あの場で、脅されていたとしても、百合子を起こすべきだったのだと。 だって、百合子につき続けなければいけない嘘が、その後ずっと胸に痛かったから。 だから、百合子を求めた。それは自分自身が不安に怯えていたからなのも確かにあるけれど、百合子に申し訳ないと思っていたからこそ、いつもなら拒否する百合子の要求のほとんど全てに応えた。 百合子があの事実を知らない限り、百合子はきっと中ノ瀬の縁を切ることはなく、またいつか、鳥貝は中ノ瀬に会わないではいられないだろうと、朧気に考えていた。 それは、恐怖で嫌悪。けれど、不快な事に、完全な拒絶の感情でもない事を、鳥貝は自覚していた。 あの中ノ瀬という男は、淫猥なちょっかいさえかけられなければ、きっと嫌いにはなれない人だと、思うようになった。 その認識は、あの男が鳥貝を時々見ていた優しい眼差しや、している事の乱暴さに対して、鳥貝の扱いが優しかった事。そういう些細なところから来ている。 鳥貝は自分のこの感情の変化は、きっと、中ノ瀬という男を少しなりとも理解できてきた為だと分析していた。元々、何を考えているか分からない男で、他人の下心を推し量るのが苦手な鳥貝にとっては、特に鬼門の男だった。だから、もっとあの男を知る事ができるのならば、あの男の心の内を知ることが出来たのであれば、あの男に対してもっと別な感情・・・例えば、百合子や寮の男たちが中ノ瀬に示す好意的な感情を持てるようになるのかもしれないと、思うようになった。 勿論、百合子や寮の男たちが中ノ瀬に対して好意的感情を持つと同時に、あの男の性質を理解した上での警戒心も持っている事も鳥貝は知っている。 だから、自分が彼らのようにもう少し大人な考えを持てるようになれば、あの男が自分に示す淫猥なちょっかいを上手く交わせるようになり、もっと自然な接し方ができるようになるのかもしれないと、そう思った。 鳥貝のその分析は、もう少し先、暑い季節に結果を得られる事となる。 おわり |