※この二次創作小説についてとオリジナルキャラ紹介
>>こちら
| [鳥貝大学2年の初夏] 2年と・・・それから【2】 それからしばらくは、その程度の関係が続いた。 お休みの日にはデートに出かけた。買い物や映画、美術館とか博物館。彼女好みの展覧会。もちろん、図書館で勉強も。 最初の頃こそ両親に隠れての付き合いだったけれど、夏休みに入る頃にはそれぞれに親に話した。幸い、彼女の父もぼくの親も仕事柄お互いの事を何となく知っていたようで、悪い噂のない相手の家に信頼を覚えて、交際についてとやかく云う事はなかったから、互いの家にも時々遊びに行くようになっていった。 関係は・・・軽いキスまで。 極めて健全な高校生カップルだった。 ・・・さすがに、ぼくは、それだけではもやもやしたものが残る年頃の男だったけれど・・・純真な彼女に簡単に言いだせるわけがない。 友人たちの話だと、女の子の方がそういう知識が豊富で、ある友人などは彼女の方から求めてきた、らしい。羨ましい限りだが、春海ちゃんに限って、それはあり得ない・・・だから、もう少し彼女の心が成長してから、と思っていた。彼女に本気だったから、彼女に嫌われたくなくて、らしくなく及び腰だったのは確かで。 やっと少しだけ進展して大人のキスになれたのも、付き合ってから1年近く経った頃。 亀の歩みの付き合いだ、とは思ったけれど、それでも、彼女と一緒にいるのが楽しかったから、いい。 そういえば、2年の文化祭前だっただろうか。買い出しから帰ってきた女子たちがやけに騒いでいた。曰く「すんごいカッコイイ人がいた」と。どこの人だろうとか、ここらの人じゃないよね、とか、芸能人!?とか。男のぼくからしたら興味がないにもほどがある話題だけれど、女子である春海ちゃんも・・・興味を持たなかったようなのは、幸いだった。そもそも彼女は、外見だけで人を判断する価値基準は持っていない。もっとも、ぼくの事は見た目も好きだと云ってくれているから、そこはそれ。 3年生になった。本格的に受験に身を入れなければならない。 クラス編成は進学内容によって別れた。国立理系組となったぼくらは、クラス数が1つという事で初めて同じクラスになった。 模試の数もどんどん増える。 それだけでなく、ぼくと春海ちゃんは春から同じ塾に通い出した。隣の市にある大手予備校だ。いくら地元の進学校とはいえ、公立高校の授業だけでは、都会の難関大学の受験に追いつけない。情報もノウハウも遙かに優れた塾の方が受験対策には向いているからだ。 入塾時に受けた模試で、ふたりの合格判定はC。微妙な所で、夏の集中講座が終わるまでにA判定を受けるのが目標となった。 しかし・・・。 恋愛と受験の同時進行はぼくにはなかなか苦しかった。 表面的には充実しているように見えていただろうし、彼女もそう信じていただろうと思う。 でも、ぼくの中での葛藤は、日に日に大きくなっていく・・・彼女と一緒にいるほどに。 ゴールデンウィーク中の事だ。 その日は塾に行かず、ぼくの家で勉強する事になった。時々どちらかの家で勉強する事はあるけれど、どちらの家にするかの選択は、その時々の家人の都合による。 やはり、家人がわいわいいる家で勉強するのは困難だからだ。だから、8割方が春海ちゃんの家だったのだが。 両親とだけ暮らす春海ちゃんの家とは違い、祖父母・両親・兄と暮らすぼくの家には大抵誰かがいるから、春海ちゃんを呼べる事はまずない。 その日はまずないはずの吉日だった。 「親父と兄貴は仕事、祖父母と母は旅行。」 春海ちゃんの家よりも築浅の我が家は、工務店を営む一家らしい体裁を保っていて、彼女の家に見劣りしないくらい広い。田舎特有の広さの敷地には、母屋と離れがあり、離れには祖父母の居室があった。敷地の各所には家業による資材などが積まれている。母屋を建て替える際にここだけはと残した古めかしい倉に、大きな倉庫もある。6人家族には十分すぎるほどの広さだった。 互いの部屋にはもう何度も足を踏み入れている。それでも、やはり他人の部屋だから慣れるまでに少々時間がかかる。 春海ちゃんも最初こそ居心地悪そうにしていたけれど、すぐにテーブルの上に広げた問題集に集中し始める。 相変わらずすごい集中力だ。 3年一学期の中間考査では、全体的に彼女の方が順位が良かった。模試でも彼女の方が偏差値が上だ。さすがに悔しい。負けてはいられないかな。 でもね。 夏の気候に近づいた今日の春海ちゃんの服装は薄手のカットソーと膝までのキュロットスカート。 去年の夏も思ったけれど、彼女の発育はわりといい。いや、発育なんて、オヤジくさい言い回しだけれど・・・でも、本当にそう思う。 セクハラ発言になるから聞いた事はないし、聞いても男のぼくではぴんとこないかもしれないけれど、胸なんか平均より大きい方なんじゃないかと思う。 集中して勉強を続ける彼女を見ながら、ついついそんな事を考えてしまう。・・・自覚して、自戒しているのだけれど、最近こうして考えてしまう頻度が増えてきた。 このままじゃ、勉強どころじゃない。 実は・・・だから今日こそは、と思って、用意もしていたりしたのだけれど、問題はどうやってそういう雰囲気に持っていくかだ。 そういう事に鈍い春海ちゃんはちょっとやそっとじゃ気付いてくれない。 頭の中でどうやってそこまで至るかを想像してみる・・・すぐにそれは妄想になる・・・キケンだ。これじゃあ、発情期のケダモノと変わらない。下半身に熱い物が集中してくるのを、どうにか紛らわさないと。 「ねぇ、ここの公式ってさ・・・、」 不意に彼女が顔を上げて問いかけてきて。 視線は問題集の上にあって、それをぼくの方に向けて身を乗り出してくる。 甘い香りが鼻孔をくすぐった。 たまらない。妄想と相まって、どうしようもなくなる。 ぼくの沈黙を不審に思ったらしい春海ちゃんが顔を上げて見上げてきた。目を丸くして、唇をかすかに開けた、不思議そうな顔だ。・・・そのあどけない表情が、ぼくは好きだった。 衝動を堪えるために顔をしかめていたのかもしれない、春海ちゃんが心配そうな顔になった。 「気分悪い? 顔色があまり良くない。」 そう言いながら、手を伸ばしてくる。ぼくの額へと。 彼女の淡い体温がぼくの額に密着する。彼女の香りが濃厚になる。 「熱、少しあるかも・・・、」 言いながら額から手を引く、視界から消えそうになるそれを、ぼくは掴んだ。 「春海ちゃん、」 「ん? ね、体温計ってみて。熱があるようなら、休んだ方が・・・、」 「あのね、春海ちゃん、」 語気を強める。 鈍い彼女には、はっきり云わないと分からない。 「ぼくは、君が好きなんだ、」 「え、はぁ・・・?」 突然云われる意味が分からないみたいだ。春海ちゃんは驚いて目を丸くしている。 「だからね、好きな君にキスをしたくなるし、」 云いながら顔を近づけて軽いキスをする。 彼女は突然の事に戸惑って驚いて、心の準備もないままだったから、きゅっと強く瞼を閉ざしてしまっていた。 「・・・それ以上の事だって、したくなる、」 ゆっくりと腕を解放する。 彼女は恐る恐る目を開けて、困惑した表情でぼくを見る。 さすがに意味は分かっているだろう。 目が泳ぎ気味だ。 おそらく彼女は、今の今までそういう事を考えさえしていなかったに違いない。 ぼくは真剣に彼女を見つめて、彼女の反応を探る。 実際はそこまで冷静ではなかったのだけれど。 彼女は困惑を通り越して混乱しているらしく、手元のシャーペンをいじり回しながら、俯いてしまった。 耳まで赤い。 「・・・っ、あの、でもっ、」 うわずった声。 ・・・そんな彼女の様子が可愛くてたまらなくて、思わずぷっと吹き出してしまう。 ああ、だめだ。 さっきの言葉はかなり追い詰められた末の本気のものだったのに、それを覆したくなるくらい、彼女が可愛くて愛しい。 ぼくの笑いに気付いた彼女は顔を上げる。しばらく唖然とした表情だったのを、笑いを堪えるぼくを見て表情を困惑のそれに変えた。 「Nくん、冗談だったの?」 珍しく少しだけ責めるような口調。 「ごめんね。・・・集中切れたし、ぼくはお茶と御菓子でも用意してくるから、」 本当は辛くなってきたからそれを宥めるための離席。 彼女は席を立ったぼくの背中に静かな声で云う。 「ごめんね、まだそういう事は早いから、」 ぼくは振り返らず笑う。 そういう答えが帰ってくるのは、ほとんど予想済みだった。 でも・・・諦めきれるわけはない。 ・・・再チャレンジしたのは、夏休み中。 今度は彼女の家でだった。 彼女のお母さんは専業主婦で大体家にいるけれど、その日は珍しく出かけていた。町内の婦人会の旅行らしかった。 昭和初期建造の彼女の家は広く、古く、しっかりした造りをしていた。 彼女の部屋は、その家の2階。ひとり娘だけあって、丸ごと。でも、実際使っているのは8畳の一室がほとんどで、他の部屋は物置になっている。 「兄弟のいない生活は、ぼくにはうらやましいけれどね、」 横柄で横暴な兄の態度を思い出して苦笑する。今は地元のS大学で建築を学んでいて、卒業と同時に家業に入る予定。普段から弟を顎で使おうとするような兄だけれど、基本的に家族想いである。 「わたしは、お兄ちゃんがいたらどれだけ楽しかったろうな、って思う時があるよ。妹でもいいな。・・・お互いないものねだりだね、」 赤本を横にして、手を止めた合間の息抜きに、そんな事を話す。 受験はじわじわと迫ってきていて、一月後の模試でA判定、悪くともB判定は欲しい所の状況だ。 彼女はA判定獲得に必死に生真面目に勉強を続けている。前回の模試でもA判定だったのを覆されないよう努力しているというか。ぼくは情けないかなB判定だったけれど、まだ何とかなるはずだ。 けれど、そんな中でぼくは時々、受験勉強に専念できなくなる。・・・彼女の事を考えている時。 キスして、抱きしめて。それだけで終わり。 その関係が時々辛くて。 彼女は「受験が終わったら、ね?」と何度かニュアンスを変えて諭すように云った。 分かっている。ぼくも彼女のように受験に集中するべきなんだと。でも、己の心と体の葛藤に加え、友人達の経験談を聞くごとに、焦燥感が募るのだ。 この焦る気持ちが解消されれば、もう少し勉強に集中できるのではないかとも思う。 だから、彼女の肩をそっと引き寄せて柔らかいキスをした。 彼女も拒まない。 唇を離すと頬を淡く染めて、優しい笑みで見つめてきてくれている。 彼女の首筋に手を伸ばす、柔らかい首筋から肩に触れる。男のぼくとは全く違った質感の肌触りだ。見えている部分だけでもこんなに気持ちの良い肌は、見えていない部分はどれほど心地が良いのだろうか。 例えば胸、腹部、太股。 触れたい、感じたいと思う。彼女の全部を。 ぼくの手が服の上から彼女の胸に触れると、彼女はびくりとして体を離してしまった。 表情は困惑。瞳は怖れ。 「・・・やっぱり、無理、だよね?」 どうにか苦笑を作って云うと、彼女は「ごめんなさい、」と、俯いてしまった。 空気が重くなる。 ぼくのせいだな。 こうなるのは分かっていたのに。 彼女に気付かれない程度の浅い溜息をついてから、ぼくはわざと明るい声を出す。 「うん、それじゃあ、受験勉強に身を入れようか。・・・で、あと一月後の模試の結果がA判定なら、膝枕くらいは許してくれるよね? それを餌に頑張るから、」 合格後にさせてくれるんだよね、と云いたかったけれど、それではあまりに品がなさすぎる。彼女に嫌われたくないから、そういう言葉に留めた。 彼女がほっとした顔をしたから「もう一度、キスしていい?」とキスだけせがんだのちに、勉強を再開した。 ・・・ぼくは己の内情を押し殺すのに必死にならないといけなかった。 浮気しようと思えばできたかもしれない。 自分がもてる事も自覚しているし、器用である自信もあったから、バレないような相手なんて簡単に探せた。例えば部活で知り合った他校生とか、近所の学年違いの他校の子とか、あるいは、兄の大学の友人と称する女性なら尚良い。 でも、彼女を裏切りたくなかった。 綺麗な彼女に触れる前に、汚れたくはなかった。 だから、我慢するしかないと、そう思って、己の葛藤を鎮めるばかりの日々だった。 ・・・だから、と、いうのは云い訳になり得るのだろうか、分からないけれど・・・。 それからの模試でぼくがTK大のA判定を得る事はなかった。良くてB判定、大抵C判定だった。 もしもTK大を受験して落ちることがあれば、滑り止めに受ける予定の地元の私立大学しか道はない。うちの親の方針で、県外の大学はTK大しか受験させてはくれないからだ。地元の私立大には行きたくない。正直、ロクな大学ではないのだから。それくらいなら、兄と同じ国立のS大学の方が遙かにいい・・・と、考えてしまう。 センター試験の結果が出るまで、まだ、分からないけれど・・・。 センター試験の結果は、芳しくなかった。 試験後に彼女と解答を示し合わせた。 これまでの模試でほとんどA判定ばかりの彼女の方が正しいとすれば、ぼくはめちゃくちゃな結果だったかもしれない。 TK大は無理だ。 青くなった顔でぼくはそう判断してしまった。 無理だと分かっているものを、無理に受験したくない。それくらいなら、S大学に志望を移した方がいい。S大学なら常にA判定だった。 願書提出までの猶予は少ししかない。 決めなければならない。 けれど、TK大を諦めたら彼女との関係はどうなるのか。 センター試験後、ぼくは悶々とした末に、彼女と会った。国立入試までに、一日くらい息抜きをしようと、ぼくから誘った。彼女は落ち込み気味のぼくを気遣って、簡単に応じてくれた。 映画を観て、食事をして、ケーキを買ってぼくの家に向かう。 今日は世間一般には平日で、家にいるのは祖母だけだ。祖母はぼくに余計な干渉はしてこない。 ぼくの部屋で、ぼくから切り出した。彼女が、何を云えばいいのかととても居心地が悪そうにしていたからだ。 「ぼくは、TK大には受からないと思う。だからね、志望を変更する。S大学なら大丈夫だと思うんだ。あと2ヶ月もないけれど、赤本とにらめっこすれば対策は講じられるはず。TK大より遙かにハードルが低いしね、」 TK大を目指す彼女は、ぼくに何を云っていいのか戸惑っている。まさか、自分の夢だった大学を、ぼくの為に簡単に諦めるわけがない。というか、もしそう云われたら、ぼくがみじめすぎる。 彼女が口を開く前に、再び口を開く。 「だからね、きみがTK大に受かったら、遠距離恋愛になるけれど・・・きみは構わない?」 「そんなの、もちろんだよ。第一、わたしが受かるとも限らないし・・・、」 自分を過大評価しない彼女としては真剣な言葉なのだろうけれど、受験に関してナーバスになっているぼくにその謙遜は癪に触った。 意地悪な気持ちになった。 隣に座った彼女を引き寄せて唐突にキスをする。 いつもの優しいキスじゃない。いつもよりも感情的なキス。 最初はともかく、途中から彼女は抵抗し始めた。 彼女が抵抗してもキスを止めない。 高校生の男女の体格差で、女の子が男のぼくに敵うわけがない。 一旦唇を離す。力んでいた彼女の力が抜ける。 その隙に彼女をカーペットの上に押し倒して、彼女を押さえ付けるように再び唇を重ねた。 声を封じて、視界を封じて、ぼくは彼女の胸に触れる。 柔らかく、しっかりした手応えを感じる。 やっぱり見た目よりも大きい。 彼女は最初は控えめに頭を振って抵抗し、それから足と手を使って体をよじってどうにか逃げようと頑張った。ぼくを叩くとか、舌を噛むとか、そういう方向には考えられないらしい。 彼女の胸の外郭を確かめるようにそっと触れた後、掌全体でそこを包み込んだ。 初めて触れる彼女の胸。これまでの人生で触れたことのないその感触がたまらなくて、何度か激しく揉んでしまう。 驚きに彼女の体が陸に上がった魚のように動いた。 「・・・っ!」 ふさがれた口で必死に何かを訴えようとする。けれど、舌さえも捕らわれていて言葉は出てこられない。 ただ・・・唾液とは違う塩辛い味がして、ぼくは唇を離した。 思考の中枢が痺れているように、ぼんやりする。 ぼくの体の下で、春海ちゃんは泣いていた。 ・・・彼女が泣くのを見るのは初めてだった。・・・そして、これが最後。 「・・・っ、どうしてっ、」 嗚咽に詰まって言葉は出てこない。 「ごめん、」 初めて見る彼女の泣き顔に虚を突かれる。反射的に謝罪をしていた。 何もかもが一気に鎮静化して、頭に登っていた血も下がりきる。 彼女の上からどいて、表情を引き締めた後、床に頭をついた。 「ごめん、春海ちゃん! 色々・・・色々と、考え込みすぎて、溜まってて・・・、ちょっとオカシクなってた。ごめん、本当に・・・、」 床に頭を着いたままだから彼女がどうでるか分からなかったけれど、気配は感じた。 体を起こして、それから・・・。 ぼくの頭に触れてくる暖かい手。押しつけられた柔らかい感触とかすかな重みは、多分彼女の顔。 声が直接響いてきた。 「わたしは、ちょっと驚いただけだから。でもね・・・そういう事、やっぱりわたしにはまだ無理みたいだから。もう少し待って欲しい。受験が終わって、結果が出て・・・それから、心を落ち着けようと思うから。・・・ごめんね、」 彼女の生ぬるい優しさが、辛いと思った。 彼女の事が好きだ。でも・・・彼女のこういう所は嫌いかもしれない、とも思う。 思えばぼくたちは付き合ってきた2年近くの間に、喧嘩をした事がない。ぼくは短気な方ではないし、彼女は怒らない。それは、穏やかで優しい関係だと思っていた。でも。 彼女の温もりを押し上げるように顔を上げる。 どうにか笑顔を取り繕う。 「・・・ありがとう、」 目の前の彼女の慈愛に満ちた笑顔は、まだどこかに困惑を残していた。 ぼくは想いを押し殺す。ずっと彼女が好きだったから、彼女を傷つけたくはないから。 「あのさ、お互い受験が終わるまで、デートは止めとこう。何度か学校には向かうだろ、その時にまたお茶くらいしてけばいい。それに、電話は時々するからさ、」 ぼくは裏などないというように、殊更爽やかに云う。 彼女は少しだけ何かひっかかったように小首を傾げたけれど、すぐに頷いた。 「お互い、頑張ろうね。」 「でも、無理して体調は崩さないようにね?」 ふんわり笑う彼女は、ぼくが恋し続けた彼女だった。 可愛い彼女にキスしたかった。 でも、しなかった。 彼女からは、求めてくれない。 つづく |