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[鳥貝大学1年の冬]

Anniversary20th【1】


 早朝、枕元の携帯に着信。
 鳥貝のものではなく、百合子のものだ。
 バイブレーションで音はないけれど、鳥貝は敏感に反応して目を覚ます。
 そういえば、そろそろ朝食の時間だと、ぼんやり思って自分の携帯を見ると、6時少し前。鳥貝の携帯がアラームを奏でる直前だ。
 それから、昨晩から何度となく百合子の携帯に着信が来ていたけれど、それを百合子が敢えて無視している風なのを咎めた事を思い出す。
「百合子さん、」
 まだぐっすり眠っている百合子を揺り動かす。
 幸せそうに眠る顔にはほだされないでもないけれど、着信無視はいただけない。
 同じ人かどうかは分からないけれど、何度も来ている着信を無視するのは良くない・・・鳥貝らしい考えである。
 携帯の振動は止まる。
「百合子さん、起きて下さい。いい加減、携帯に出て下さい。折角かけてきてるのに、失礼ですよ!」
 目覚めない百合子の頬をうにうに抓ってみる。
「・・・春海、」
 薄く目が開く。そして、閉じる。
「百合子さん!?」
 二度寝する気の百合子を叱りつける。
「・・・起きる。から・・・キスして・・・、」
 目を閉ざしてぼんやりした声で云う、ほぼいつも通りの言葉。
 だから、いつも通りに軽く息を吐いて、口づける。
 朝の柔らかいキスに、百合子はやっと目を開く。
「・・・もっと、春海といちゃついてたいのに・・・、」 
「着信、ちゃんと確認してくださいね。それから、わたしは朝食の準備があるので、」
 上半身を起こして布団から出ようとする鳥貝の腰に腕を絡める。
「朝飯くらい、勝手に食わせとけばいいじゃん。下ごしらえ済みなんだろ?」
「ダメです。ちゃんと用意しないと・・・って、百合子さん、また着信が、」
 携帯が振動する。
 けれど、百合子は一向にそれに出る気配はない。
「百合子さん、」 
 鳥貝が手を伸ばして携帯を取り、百合子に押しつけようとするけれど、百合子はわざと受け取らない。
 さすがに人の携帯に出るわけにはいかない。けれど、鳥貝は、思い切って(鳥貝にしては)、二つ折りの携帯を開けて受信ボタンを押して、百合子の耳元に・・・、
「やっと出た!! 千里、いい加減にしろ!!」
 怒声が響いた。男性の声だ。鳥貝には聞き覚えがない。
 百合子は、携帯を受け取らず、鳥貝に持たせたまま溜息をついた。
「昨日から何度かけたと思ってるんだ! どうせ、留守電も聞いてないだろ!? おれはな、これでも、」
「うるさいよ。折角彼女とベッドの中でぬくぬくしているのに、邪魔すんな。」
「・・・。おまえなぁ・・・、おれは始発に乗って来てるってのに・・・、」
「・・・春海、ちょっと待てって、」
「・・・。おい、」
 百合子の言葉は当然、電話の向こうの相手にではなく、腕の中の鳥貝に向かってのそれ。
 鳥貝は百合子に携帯を押しつけるのは諦め、百合子の顔のそばに携帯を置くと、その手を逃れて布団の外に出ようと企む、それを阻止する声。
「・・・離してください。百合子さんは、電話に出て、」
「まだいいだろ? さっさと終わらせるから、もう少し・・・いや、朝イチで愛し合おう、」
「ばかっ!」
 ペチンと百合子の額を叩く。
 鳥貝は小声ではあるけれど、最近の携帯機能を舐める事なかれ。相手にはっきりとそれらの会話と音は聞こえている。
「千里・・・おれも邪魔したくはないけどなっ! あのな、今日くらいは人の話を最後まで・・・、」
「春海〜、」
「ひゃ、も、ばかっ!」
 キスの音と、衣擦れの音と・・・。
 いちゃつく声だけが返ってくるむなしさに、電話の相手は自ら電話を切った。


「百合子はまだ寝てる?」
 鳥貝が階下に降りると、食堂には多飛本と白熊がいて、のんびりとコーヒーを飲んでいた。
「目は覚ましてますけど、まだだらだらとしてると思いますよ。朝食、すぐに作りますね。」
 台所でエプロンをかけて動き始めた鳥貝を見ながら、ふたりは溜息をついた。
 その様子に鳥貝は気づかない。
「・・・テコでも動かない。」
「多分な。折角の休日だから、鳥貝に一日くっついてるつもりだろうな。」
「ぼくも無粋なことはしたくないよ、でもね、」
「・・・同感。」
 ふたりは顔を見合わせて、同じような考えを持っている自分たちを察し、多飛本から鳥貝に声をかけた。


「百合子さん! どういうつもりですかっ!!」
 朝食の準備を途中で切り上げた・・・切り上げざるを得なかった鳥貝が、まだベッドの上でごろごろしていた百合子を怒鳴りつけた。
 朝食は多飛本と白熊が鳥貝に交代して作っている。
「ん〜・・・何が?」
 枕に顔を埋めて、腑抜けた返事をよこす百合子に、さすがの鳥貝もいらっとする。
 何もかも分かっていてのこの態度だから余計に。
「わたしもうっかりしてましたけど、今日って成人式じゃないですか!? 百合子さん参加しないと! すぐに起きて準備して、ご自宅に戻って下さいっ!」
 そう、今日は年明け2回目の月曜日。
 そして、20歳の百合子にとっては、成人の日・・・成人式の式典が地元であるはずで・・・。
 先ほど台所で多飛本と白熊に云われて気づいた鳥貝だった。
 百合子から布団をはぎ取り、昨晩のままの裸姿にどきりとして視線を逸らせながらも鳥貝は再度怒鳴る。
「式典、11時始まりですって? まだ余裕で間に合いますから、起きて、準備してくださいっ!」
「・・・めんどー。別にどうでもいいし。それより・・・、」
 起き上がると、不意に鳥貝の腕を引き寄せ、抱きしめる。
「ちょっと!」
「今日はふたりともお休みなんだから、春海といちゃついてる。」
 ちゅっちゅっと頭に耳元にキスが落とされる。
 勿論、そんな事で簡単に籠絡させられる鳥貝ではない。なにぶん、その程度のこと、もうすぐ一年の付き合いになる鳥貝には免疫ができてきている。
「だーめーでーす。」
 ぐいと百合子を押しやって、正面から睨み付ける。
「一生に一度の事ですっ! それに、古いお友達も集まってくるのでしょう? 会うなら今日ですよ!!」
 先ほどの電話も旧友からのものだったと鳥貝は察していた。
「特に会いたくもない。おれは、春海さえいれば・・・、」
「なんでそう極端なんですかっ! わたしは、時々放っておいてもらった方がいいくらいなんです!」
 百合子がべたべたしすぎる事によって、鳥貝は女友達と出かける時間が極端に少ない。ショッピングやランチとか、女性同士でないと楽しめない事も多い。
 鳥貝の言葉に、百合子はふぅと溜息。
「・・・おまえに触れられない時間が長いほど、次の諸々が激しくなるけど、それでも?」
「・・・っ! そっ、そういう事を云わないでくださいっ!」
 ごくごくいつもの言い争いだけれど、今日はそれを長引かせるわけにはいかない。
 時間は待ってくれない。
 どうやら、百合子の友人たちから百合子の式典への出席を促すように依頼されていたらしい多飛本と白熊が、言い争うふたりの元までやってきた。
「百合子、いい加減にしろよ。」
 頭を抱えて多飛本。
 自宅が百合子の家に近い分、百合子の幼い頃の友人を把握している。
「春海ちゃんを困らせてどうするんだ。」
 苦笑いの白熊。
 中・高と同じ学校に通っていて、百合子の同郷の同級生とは知己である。
「別に、出席は義務でもないだろ。じゃあ、出る必要もないし。」
「またそんな事・・・、」
 鳥貝の言葉に、携帯の着メロが重なる。オルゴールの音色だ。
 テーブルの上に置かれた鳥貝の携帯からのそれ。百合子が相手を悟って止めに入る前に、鳥貝は携帯に出て、そして。
 「はい、はい、」等の遣り取りをしばらく続けた後に。
「お母様からです。スーツと案内状は用意してあるから、って。出るのも出ないのも自由だと思うけれど、けじめはつけた方がいいわよね、と。」
 百合子が携帯に出ないのをハナから理解していたらしい母は、鳥貝の携帯に直接かけてきたようだ。
「・・・自由だろ。じゃあ・・・、」
「出て下さいっ!」
 ふたたび云い争いが始まりそうなふたりに、多飛本が肩をすくめて提案する。
「百合子は今日一日鳥貝と一緒いたいわけだ。それじゃあ・・・鳥貝も連れて行けば?」
「はい?」
 鳥貝は首を傾げ、百合子は手を打った。
 成人式への出席を強く勧めていた鳥貝が断れるわけがない。
 そして、関係がないハズの鳥貝が何故かK市の成人式に向かう事となったりして・・・。

 
 時間に余裕を持たせて百合子の家についた。
 百合子が着替えている間、鳥貝は庭でターシャと戯れる。
 百合子家の家人は、祝日に自宅でまったり、という事にはあまり興味がないらしい。
 父は病院、珍しく手の空いた母は千早と共に冬サーフィン、祖母は連休を利用しての温泉旅行だそうな。
 ターシャにボールを投げてやると、どこにやってもちゃんと持ってくる。あるいは、高いフライで投げると、それをそのまま口でキャッチする。意地悪にボールを投げたマネをしても、賢いターシャは引っかからず、ボールを隠した鳥貝の背後に回る。
 去年まで大型犬は苦手だったけれど、賢くて自分によく懐いたターシャの事は大好きになった。
「じゃ、ターシャ今度は・・・、」
 ボールを胸の前に構えて、どこに投げようかと思案する。ターシャは鳥貝から少し離れた位置で、お利口に座って鳥貝の動きを見ているが、不意に、顔を別方向に向けたと思えば。
「春海ー、」 
 テラスから百合子が顔を覗かせた。
 スーツ姿だ。
 青みがかった濃いグレーのダブルのジャケットを着た百合子は格好いい・・・けれど、どことなく夜の町の男も連想させて、鳥貝は苦笑した。
「スーツなんて入学式以来だ。堅苦しいよな・・・、」 
「じゃ、羽織袴にしますか?」
「うん? そうだな、折角だし。確かおやじのが・・・、」
「って、冗談ですってば!」
 百合子がくすくす笑い、鳥貝もそれにつられる。
「会場まで、行くだろ?」
「・・・やっぱりそうきますか。・・・でも、場違いだし、」
「別に関係ないよ。おれがそばにいて欲しいだけ。・・・昔のダチ、紹介してやる。」
 百合子の多飛本たち以外の友人。
 いる事はいるらしいし、そういう話も聞いたことがある。けれど、会ったことはなかった。
 好奇心が刺激される。
「・・・会場には入りませんけど、側までなら・・・、」
 戸締まりをして、出かける。
 途中、浜辺に寄ってなお美と千早に声をかけてから、ふたりは手を繋いで電車に乗り込み・・・そこからして、不穏な気配を感じる鳥貝だった。


 当然。
 電車の中も成人式に向かうだろう人が沢山いた。晴れ着姿の年若い男女だ。
 男性はスーツ姿。女性は振り袖。
 鳥貝だって女の子。華やかな振り袖には見とれてしまう。
 そういえば、子供の頃母の振り袖を見せて貰っていつか着てみたいと思った記憶が蘇る。
「・・・春海って、着物も似合いそうだよな。来年、振り袖着ていくのか?」
 そう思っていた矢先の言葉に、鳥貝は笑った。
「多分。母の振り袖があるんです。着物の柄でも流行はあるみたいですけど、形は同じだし、わたしと母はそれほど体型違わないから、それを着ていくつもり。」
「振り袖、何色?」
「地色は青緑です。金糸銀糸で花の模様が入っていて、絞りっていうのかな、部分的にあしらわれていて・・・母の若い頃はまだ資産も残っていたようだし、ひとり娘だったから豪華なの買って貰ったらしいですよ。結構派手かも。」
 思いだして云う。
「・・・じゃあ、今年の正月に着れば良かったのに。見たかった。」
「すっかり忘れてました。・・・来年は着ますから、見て下さいね?」
 年の初めに来年の約束をする。
 この先ずっと百合子といてくれるつもりはあるらしい。
 鳥貝の無意識の心の内を悟って、百合子は機嫌良く笑った。
 時に、鳥貝は電車に乗ってしばらくしてから、何となく不穏な空気を感じていた。
 そういうのを読むのが苦手な鳥貝でも、ソレと気づく程。
 つまり、自分たちに向けられる視線。
 主にそれは晴れ着を着た女性達からのもの。
 その理由は・・・会場について判明する。

 駅についたのを見計らったように、百合子の携帯に着信があった。
 今朝もかかってきていた男らしい。
「多飛本さんから聞いたけど、やっと観念したって?」
「彼女同伴でな。」
「話はそれとなく聞いてるけど、おまえが入れ込むなんて、どんだけ可愛い子だ。」
「そりゃ、筆舌に尽くしがたいほどに・・・、ってっ、」 
 鳥貝が顔を赤くして百合子の腕を抓った。往来でそういう事を云うのは止めて欲しい。
 それから、電話向こうのCという男と落ち合う約束をする。
 百合子曰く、Cとは小学校の同級生で、同じ町内に住んでいた。百合子が市外の私立に進んだため、中・高は違ったけれど、それとなく付き合いはあったとの事。現在Cは京都の大学に籍を置いている。
 ・・・同時に、百合子は云う。Cは近くに住んでいたから、夏目の事も知っていたし、同じ中・高に進んだ縁もあって、夏目とはそれなりに親しかった。自分の彼女が夏目の妹だとはまだ話していないけれど・・・それを云うも云わないも鳥貝次第だ、と。
 夏目が生まれて育ったK市。そういえば、夏目もここの成人式に出席したのだろう。そして、この地にはきっと、夏目の知人も多いに違いない。
 
「千里! おまえ、相変わらず目立つな。」
 会場のホール側の道で声をかけられた。
 声と話し方からしてこれがCだと鳥貝にもすぐに分かった。
 Cの視線が自分に移ったことを感じて、鳥貝は会釈する。
「・・・で、君が彼女。普通に可愛い。」
「普通じゃない。格別に、だ・・・って、」
 また惚気ようとする百合子の腕を抓ると、Cは快活に笑った。京都のK大学で陸上競技をしているそうだ。
「ああ、なるほど。千里が入れ込んでるのは本当みたいだ。・・・今朝、邪魔して悪かったね?」
 可笑しそうな声で云われた言葉の後半に、鳥貝はすぐさま赤くなる。
 今朝、ふたりがいちゃついている所をこの人に聞かれていたのだと思い出す。
「こっ、こちらこそ、失礼しました、」
 慌てる鳥貝の反応に、Cはまた笑う。
「やー、千里には不釣り合いな、純朴な子だ。」
 鳥貝が気にする確信をつく言葉に、鳥貝は少しだけ息を飲む。もちろん、今更それで落ち込んだりはしないけれど。
「おれは爛れているとでも云いたげだな?」
「夏目さんを心配させていた性癖があったからね。真っ当になったんだな、と喜んでいるんだよ、おれは。」
 ちらりと鳥貝を見る。
 百合子の性癖について、突っ込まない方が良いかもしれない、という意志が見て取れ、鳥貝は微笑む。
 おおらかでいて、気遣いができるし、悪気のない人だとCに対する評価を下す。
「百合子さんの過去は、知ってます。じゃなきゃ、付き合っていけませんから。兄さんも百合子さんの事を心配していたから、わたしがここにいるのかもしれません。」
「・・・?」
 鳥貝の言葉の意味を把握しきれないCは小首を傾げて鳥貝をじっと見た後、百合子に向き直った。
「・・・兄、って、安羅さんか時屋さんあたりの妹・・・にしては、似てないけど・・・、」
 百合子と鳥貝は視線を合わせて笑い合った後、百合子が鳥貝の頭にぽんと手を置いて云う。
「夏目の妹だ。」
「・・・うそだろ。夏目さんに妹なんて、」
「赤んボの頃に里子に出されてた。巡り巡って、今、おれの側にいてくれる。・・・多分、夏目の導きで。」
 しばらくぽかんとして、じっと鳥貝を見つめた後、Cは表情を改めて小さく笑った。
「そうか。だから、おまえは、」
「もう云うのも疲れたけた言葉だけど、こいつが夏目の妹だからって付き合ってるわけじゃないからな?」
「わたしは、兄さんの事忘れられなくて泣いてる百合子さんがかわいそうだから、情にほだされたんですけど、」 
 鳥貝の茶化すような言葉に、百合子は笑って鳥貝の身体を引き寄せ、抱きしめる。往来でいちゃつくのが苦手な鳥貝は、思い切りよく抵抗する。
 いつものじゃれあいだ。
 Cはそんなふたりを見てほっと息をつく。
 百合子の表情が明るい。以前、百合子と最後に会ったのは、昨年の正月明けだっただろうか。夏目の一周忌を前にしても、百合子の表情は暗く、悲しみから浮上できてはいなかった。一年経っても、夏目の話題に触れる事は、百合子を悲しみの淵に追いやった。
 その後、夏頃に携帯で連絡をした時、すごい可愛い子と付き合っている、と明るい声で嬉しそうに惚気ていた言葉を思い出す。
 夏目の事を自然と話せるようになった百合子を見て、Cは百合子が彼女によって完全に立ち直れたのだと、そう確信した。
「千里、やっと男より女の方がいいと理解してくれたか。」
 Cの冗談めかした言葉に、百合子はにやっ笑う。
「男女関係なく、こいつだから、イイんだ。こいつが男でも、中身が同じなら好きになってた。」
「肉体の方はどっちでもいいのか、おまえ? 女の子のが柔らかくて気持ちイイだろ?」
「ヤるなら男の方が楽だけどな。でも、確かに春海の身体は、気持ちイイ。抱き心地もいいし、抱いてるとすげぇ安心する。相性がいいんだろうな、中の感触も・・・、って、っ!!」
 鳥貝が百合子の手に噛みついていた。
 これも、まぁいつものじゃれあい。
「・・・子犬みたいだな、その子・・・、」
 ふたりのじゃれ合いは、Cにはとても微笑ましく映った。
 百合子とは長い付き合いで、幼なじみと云える。親友である多飛本たちとの関係からしたら、薄い付き合いかもしれないけれど、幼い頃からの百合子を知っている。夏目との関係を知っている。親友の男達より客観的に百合子という人物が見られる立場だ。
 だから、百合子がこうして成人式の場に現れたのが、とてもよい傾向だと思う。夏目という誰より頼りになる存在の側で甘えていた子供が、庇護される立場からする立場になった、大人になったのだと実感した。
「ま、じゃれあいもほどほどにしろよ。おまえに会いたがってるヤツらもいるから、行こうぜ。」
 Cは笑ってふたりを会場前、多くの新成人達がたむろし、久しぶりの再会で、四方山話に花を咲かせている場所まで導いたのだが。



つづく