怪傑!魔女っ子ちぃちゃん!


 萩野千尋。

 普段は、当年とって十歳の、どこにでもいるごく普通の何の変哲もないごく当たり前の平凡な少女です。

 ですが、ある日、魔法使いのおばあちゃんに授けてもらった、秘密道具、魔女っ子スティック『らぶらぶぷりちーバトン』を使えば、あら不思議、正義の死者使者魔女っ子ちぃちゃんに変身するのです!


 今日も今日とて、魔女っ子ちぃちゃん、困っている人達を助けながら、世界の平和を守っています!




 シクシク……

 シクシクシク……

 どこからかすすり泣きの声がします。

 不思議に思った千尋は、耳をそばだてながら、声のするほうに歩いていきました。

「そこで泣いているのは、だぁれ?」

 廊下の角を曲がったところに、うずくまる影がありました。

 千尋の数倍大きな体つきをした、赤地に「坊」と書かれた腹掛け姿の赤ん坊です。

「まぁ、どうしたの?」

 千尋は慌てて赤ん坊にかけよって、涙の理由を尋ねます。

「おまえ、だれだ?」

「私は、千尋よ。どうして泣いているの? 理由を聞かせてくれない?」

 優しく千尋が問いかけると、赤ん坊は、細い目を真っ赤にして、ひっきりなしに嗚咽を繰り返しながら、言うのです。

「坊……太りすぎだってばーばのおねぇさんに言われたんだ。でも、坊、そんなに太りすぎなのかな? 坊、太ってないよね……?」

 えぐっ。えぐっ。

 顔中を涙で濡らしながら泣く坊という名の赤ん坊があんまり可愛そうで、千尋はにっこり笑って、元気付けるように言いました。

「大丈夫よ! 私に、任せといて!」

 さぁ、魔女っ子ちぃちゃんの出番です!!

 けれど、魔女っ子ちぃちゃん、魔法のスティックを貰った魔女との約束で、決してその正体を人に知られてはなりません。
 もし、正体を知られてしまうと、ちぃちゃんはここ『油屋』にはいられなくなるのです!

 たかたかたか、と、小走りで、人気のない場所まで移動して、普段はペンダントの形をしている魔女っ子スティック『らぶらぶぷりちーバトン』を取り出します。

 ハートの形をしたペンダントに右手をそっと置くと、ペンダントが淡い光を放ち、その光は次第に千尋の手の中に集まり、凝り……魔女っ子スティック『らぶらぶぷりちーバトン』が千尋の右手に出現しました。

 『らぶらぶぷりちーバトン』を両手に持ち、頭上に高くかかげ、千尋は秘密の呪文を唱えます。

 マハリクマハリタ……じゃなくて、テクマクマヤコン……でもない魔女っ子呪文。
カオナシカネナシボウハカミナシハクハナナシデリンハテキナシチヒロチチナシオチモナシ、ぷりぷりぷりちーちぃちゃん大変身!!

 呪文を唱え始めると、千尋は淡い絹のような光に包まれました。

 淡い光の中で、千尋の纏っていた衣服は全て解けるように消え去り、一旦生まれたままの姿になった千尋の身体に、周囲の光が集まって来て、魔法を発動するのに有利になる(に違いない)新たな衣服が装着されました。

 ピンク色のリボンやレースやフリルやをベースにした、全体的に布地の少ない衣装に変身です。
 いつの間にか、意味があるのかないのか分からないイヤリングや髪飾りなんかのアクセサリーもくっついています。

「良い子と正義の味方、魔女っ子ちぃちゃん参上! おしら様に変わって、お仕置きよ!」 

 お決まりの科白を誰にともなく言い放ち、ちぃちゃんは坊の元に急ぎました。

 坊は、箱詰めクッキーを次々と頬張りながら、ちぃちゃんを見あげました。

「あ、ちひ……」

 魔女っ子ちぃちゃん、正体は、決して知られてはいけません。
 ちぃちゃんの手に握られた『らぶらぶぷりちーバトン』が空を切って坊の頭に滑り落ちましたが、きっと手が滑ったのでしょう。

「私は魔女っ子ちぃちゃん! 千尋から聞いてきたわ! あなた、太っている事を気にしているのね? 私に、任せて!」

 にっこり笑ったちぃちゃん、『らぶらぶぷりちーバトン』を振りかざし、華麗に舞いながら呪文を唱えます。

オシラダイコンオオトリヒヨコユバーバナンダカユニセフタイシ!

 眩いばかりの七色の光りが『らぶらぶぷりちーバトン』から迸り、ぱあっと周囲に飛び散りました。

「さぁ、これでもう、あなたは太ってなんかいないわ!」

 ちぃちゃんはニコニコ笑顔ですが、坊には何一つとして変わったところはありませんでした。

「???」

 きょとんとする坊に、うふふと意味ありげに笑ったちぃちゃん。

「お礼なんていらないから。 私? 私の正体は、ひ・み・つ。それじゃ、またねっ!!」

 坊の悩みを解決したちぃちゃんは、軽やかにその場を走り去りました。

「坊……なにも変わってないぞ……?」

 いえいえ、魔法使いちぃちゃんは正義の味方!
 困っている人を、必ず助けます!!

「ああ、こんな所にいらっしゃいましたか、坊ちゃま!! 奥様がお探しですよ!」

 坊を探し回っていたらしい父役が、歓喜の声を上げます。
 が……その姿、アマガエルがトノサマガエルになったかのようです。

 めをぱちくりさせている坊の前を、慌しくナメクジ女たちが往復します。
 が……その姿、ナメクジと言うよりジャバザハット(byスター○ォーズ)のようです。

 そうです、これは、魔女っ子ちぃちゃんの魔法のおかげなのです!!

 これで、きっと、もう二度と、坊は太りすぎ、なんて言われないでしょう!

 ありがとう、魔女っ子ちぃちゃん!!!
 今日も、難事件を光速解決だね!!



「これ以上、怖いもの、みたくないぞ……そうだ、もう一度魔女っ子ちぃちゃんを……」

「久しぶりにボイラー室を出てきたが……なんか、腕が疲れたな。太ったかな?」
 あっ……。

「ああ、今日はちょっと食いすぎたかな…………って、なんだ、湯婆婆の息子かよ。なんで、こんなトコにいんだ?」<
 ああっ……。

「どうしたのだろう、妙に身体が重い。それにしても、この忙しい時に、千尋はどこに行ったのだろう。私は、この後湯婆婆様に召喚されているというのに……厄介事でないといいのだが……」
 あああああああああああああ…………………………。


 頑張れ、魔女っ子ちぃちゃん!
 東奔西走、良い子の為に、世界の平和を守るのだ!!

〜幕〜



大活躍の魔女っ子ちぃちゃんでした。

ほんとーに意味なし。
思い付いただけ。


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