8000hitのカウンターリクエストで差し上げた創作です。
赤いキャンディ・青いキャンディ 「ゼフェルぅ、これ、どうしたの?」 土の曜日、大陸視察帰りに館に遊びにきていたアンジェリークに見つかってしまったのは……お菓子の山。 ゼフェルは、不機嫌を顔に書いて、アンジェリークを振り返った。 「……」 いけない事を聞いたのかな? しまった、とういう表情よりも、好奇心を強く表す恋人の顔をみて、ゼフェルはさらに顔をしかめた。 「……もらった……」 仏頂面をさらにゆがめて、ゼフェルは苦々しく呟いた。 「……? 誰に……って……まさか!?」 おっちょこちょいで早合点の気のある恋人が、誤解をするだろう事は、分かっていた。 ゼフェルは溜息をついて、肩を落す。 これ以上、アンジェリークの誤解が膨張しないうちに、早口で言いきる。 「ディアの試作品の菓子だとよ!」 女王補佐官ディァの趣味のひとつにお菓子作りがある。 普段ならば、それらのお菓子は守護聖達や女王候補生らを招いて、お茶会を催すのだろうが、それらが全てゼフェル行きとはどういう事だろうか。 穿った考えに、アンジェリークは更に表情を歪めてしまった。 しかも、考え込みながら、ぶつぶつと呟き出した言葉は……。 「……ディア様って、ショタコンだったのかしら……。でも、それなら、どっちかと言うとマルセル様で……って、事は……やっぱり、ゼフェルの生足がいけないのね!?」 結論が出た? 「ゼフェル! 長ズボンはいてよ、長ズボンっ! やっぱり、17歳でスパッツはきは、だめなのよ! 犯罪だわっ! ハイティーン以上でそんなのはけるのは、ダンサーかスポーツ選手かB'zの稲葉くらいなんだからっ!(<かなり個人的偏見)」 ずばり言いきったアンジェリークに悪意があろうはずがない。 「……ともかく、オレが甘めぇもん苦手なの知ってるくせに、押しつけやがったんだよ。実験台じゃあるめぇし!」 あっさりとアンジェリークの言葉を聞き流したゼフェル、大人? 非常に不機嫌極まりない顔で、ゼフェルはそっぽを向いた。 「なんで、また?」 「知るかよ!」 じぃぃっとゼフェルを見つめて、そこに嘘偽り隠し事がないのを悟ったアンジェリークは、しばらく考え込んだ後、にっこり笑った。 「ん〜、考えてもしょうがないしぃ……ま、いっか♪ せっかくこんなにあるんだから、食べましょ!」 能天気である。 と、いうか、深く考え込む事を、彼女の単純な思考が拒否した結果かもしれない。 ごそごそと簡易ラッピングされたお菓子を漁って、アンジェリークはうっとりと表情を緩める。 お菓子作りも大好きだが、それ以上にお菓子を食べる事が大好きなアンジェリークにとって、美味そうなお菓子に囲まれて、これ以上の至福はないのかもしれない。 「はああっ……ディア様って、やっぱり、お菓子作りお上手だわぁ。こんなに、綺麗で美味しそうなのが試作品だなんて……」 吐息を吐き出して、アンジェリークは一際可愛くラッピングされた包みをといて、中から取り出したキツネ色に焼けて甘い香りで誘惑するクッキーを、細めた瞳で見つめてから口に放り込んだ。 ゼフェルは、鼻腔をくすぐる甘ったるい香りに顔を顰めながも、ひたすら嬉しそうなアンジェリークを見て、たまにはこういうのもいいかも、などと、口もとを弛ませた。 おいしそうな香りに負けず劣らず、想像できる味は美味である、はず……だった……。 「……!!!?」 クッキーを噛み砕いていたアンジェリークの動きが不意に止まり、緑の大きな瞳は、顔から零れ落ちそうなほどに見開かれた。 「……? おい、アンジェ?」 様子の変なアンジェリークに、ゼフェルは慌てる。 まさか、続く言葉が「おいしい」だったりしたら、しばらくこいつとは口をきいてやらねぇ。 と、彼が思うくらいに、アンジェリークの様子は異常だったのだ。 「……!!!!」 しばらくして、固まったアンジェリークが口元を押さえて、じたばたと動き出した。 その手は……何を探しているのか……。 「……みっ、水ぅ!!! ゼフェル!! お水、ちょうだい!!! お水!!!」 真っ赤になった顔、うるんだ瞳。 何が起こったのか、よく分からなかったが……アンジェリークの求めるままに、手元にあった、飲みかけのミネラルウォーターのボトルを差し出した。 ひったくるようにペットボトルを手に取ったアンジェリーク。ごくっごくっと、すごい勢いで水を飲み下し、あっという間にボトルを空にした。 「……おっ、おい……」 呆気に取られるゼフェルに向かって、アンジェリークは大きく息をつく。 「どうしたんだ?」 へにゃへにゃと床に座り込むアンジェリークの正面に回り込むと……泣きながらアンジェリークが訴えてきた。 「……うううっ……辛ぁい……」 「はぁ?」 「辛いのぉ、この、クッキー……」 ずいっと、クッキーをゼフェルの鼻先に持ってくる。 小麦粉とバターの織り成す香ばしくも甘い香りに、ゼフェルは顔を顰めて後ずさるけれど、アンジェリークは容赦なくそれをゼフェルの口にねじ込んだ。 ――この女は……!! と、一瞬むっかぁとするゼフェルだったけれど、そのクッキーが舌先に当る刺激は……。 「……うめぇ……」 ぴりぴりとした心地よい辛味が舌を刺激して……ゼフェルは思わずそのクッキーを噛み砕いていた。 「……はうぅぅ……辛いぃ……」 舌を出して、はぁはぁと犬のように呼吸をするアンジェリークを横目に、ゼフェルは唐辛子を練り込んだ二枚目のクッキーに手を伸ばす。 なるほど、ディアがこれらお菓子の試作品をゼフェルに贈った理由が分かった。 いつも、甘いものが苦手だからと(それだけが理由でもないのは明白だが)、ディア主催のお茶会に参加しないゼフェルに対する気遣いだろうか。 まるで優しい女教師のような女王補佐官の気遣いに、ゼフェルはふっと息をついた。 折角の好意だから受け取っておこう、と、素直に思った、のだが……。 「ねぇぇ? これって、もしかして、中に入ってるの、お味噌? いやぁん、こっちはウニだわ、ウニ! 高級品よ、さすが、女王補佐官、ごーかい!! ええっ、これってもしかして、ああん、ドリアンなんか練り込んであるわぁ!! くさぁい。ねっ、ほらほらっ、佃煮もあるわよぅ! あら、アンチョビー? さらに、うっそぉ、食用イモムシ??? ディア様ってば、ちゃっれんじゃ〜!!!」 ……単なるイヤガラセ? はしゃぐアンジェリークは、次々とお菓子を解体している。 食欲も感謝の気持ちも、遠い彼方に消え去った。 「……あいつぅ……オレは、ぜってー、あいつの開いた茶会なんぞ行かねぇかんなっ……」 で、さらに心に誓わずにはいられないゼフェルだった。 ちなみに、彼の脇では、アンジェリークがはしゃぎながら更なる発掘に情熱を傾けている。楽しそうである。 「あ、でもでも、このキャンディはふつーっぽいわね」 拳大の瓶に入っているのは、極めて小粒の球形キャンディ。赤と青のそれらが混在している様は、とても可愛らしく見える。 キャップを開けて、アンジェリークは赤いキャンディを一粒、指に摘む。 「かわいいぃ」 じっと見つめた後、躊躇いがちにそのキャンディを舐めてみる。 これまでのお菓子がお菓子だけに、一応警戒しているのだろう。 が、今度は、どうも成功品だったらしく、満足そうににっこり笑ったアンジェリークは、それを、思い切り口の中に放り込んだ。 ――赤いキャンディ一粒。 アンジェリークは、幸せそうに微笑んでいた。 ゼフェルは……そんな彼女を、呆れ顔で見つめる。 それは、日の暮れ掛かった夕方の事。 その日、アンジェリークはここの所の習慣のように、ゼフェルの館に宿泊する事になる。 ふたりで、若い汗を流そうというのだが……スカッシュでなくてね(笑)。 ――翌朝、ゼフェルは、自分の大絶叫で目を覚ました。 「うっ、うわあああっ!?」 ゼフェルの寝室から響く声に、館の者たちは慌ててそちらに向かう。 いつも、可愛らしい金の髪の女王候補が宿泊するときは、暗黙の了解のように、主に呼ばれない限り、そちらには近づかないようにしていたのだが、そのただならぬ叫びを黙殺はできなかった。 「ゼフェル様!?」 で、執事始め、数人の使用人たちが見たゼフェル絶叫の原因は……。 「おはよーございますぅ。にゃ? どぅして、みんな、ここにいるのぅ?」 まだ眠そうに目をこすりながらベットの上にぼうっと座り込んで、いささか舌っ足らずな口調をしているのは……無邪気に輝く翡翠の瞳が印象的な、柔らかな金の髪を持つ少女……いや、幼女、だった。 「ゼ、ゼフェル様!? これは……!!!」 使用人たちの顔が極限まで青くなっている。 まさか、という表情から、ゼフェルは、非常に腹立たしい誤解を読み取って、顔を真っ赤にした。 「オレは、ロリコンじゃねぇぇぇ!!」 ぶかぶかのキャミソールを身につけただけでほとんど半裸の愛らしい幼女と、ほぼ全裸の状態で添い寝するゼフェル……。 ロリコンであると言われても仕方ないほど状況証拠が揃っている。 “鋼の守護聖、乱心! 女王候補に振られて遂にキレた? 幼女自宅に連れ込み、猥褻行為!!” 今日の聖地ゴシップのネタは決定したかに思えた。 一部の使用人は、本気で転職を考えたほどだ。 「ぜふぇるぅ? どうしたの?」 翡翠の瞳でじぃっとゼフェルを見上げる幼女。 その面影は、間違いようもなく、彼の、恋人の、もの。 そう、昨夜、飽きる事無く肌を重ねた愛しい恋人のもの。 て、事は……。 アンジェリーク、一晩にして妊娠出産! ……ではなくて……。 「なんで、突然、ガキになっちまったんだ!? アンジェリーク!!!」 「ふぇ?」 きょとんとするアンジェリークの肩を掴んで、揺さぶると、彼女自身、きょとんとしていたものの……自分の声や視線なんかの異様さに気づいて、少しずつ状況を理解していった。 「え?」 まずは、まっすぐ前のゼフェルを見る。いつもなら彼の肩あたりに来るはずの視線が、腰あたりになっている。 「え?」 それから手を見る。ぷにぷにとしたふくよかな手は、まるで子猫の肉球のように柔らかそうだ。 「……ええっ!?」 最後に、自分の体を見下ろす。それでなくても薄めで気にしていた胸が……。 「……ぺったんこ!?」 ショックの方向性が違うような気もするが、そこにいたってやっと自分の状況を正確に把握できたようだ。 「どっ……ど、どういうことぉ!」 が、自分がどうかなってしまったのはわかっても、どうしたらいいかまでは分からない。 当のアンジェリークだけでなく、ゼフェルまで呆然とするそのさなかで、もっとも冷静に口を開いたのは、使用人たちだった。 その内容は……。 「とりあえず、補佐官様にご相談なさってはいかがですか?」 少なくとも、それが一番解決に近い行動に思われた。 で、こそこそっとちびアンジェリークを連れ出して、向かった女王補佐官の執務室。アンジェリークを見ての第一声は。 「あら? いつの間に子供を作ったのかしら、アンジェリークってば?」 とぼけた事を口乗せた補佐官に、悪気は……ないだろう。 が、ひたすら真剣なゼフェルから事情を聞いてもころころ笑う補佐官に、本当に悪気がなかったのかどうかは、謎である。 「ほほほほ……そうですか、なるほど。朝起きたら、子供になっていたとそう言うのですわね。あらあら……それにしても、どうしてアンジェリークはゼフェルの館に泊まったのかしら?」 瞳を細めた優しげ〜な笑顔。けれど、その瞳には油断ならない光が宿っていたりした。 バレてる……! おそらく……何を言い訳しても、無駄だろう。 脂汗を流しながら、ふたりは、押し黙るしかなかった。 「……まぁ、いいでしょう。わたくしも、野暮な事は言いたくありませんわ。若いふたりが何をしていようと、おばさんには関係ないことですものね」 おばさんと自称するディア……の、言葉を、二人は否定しなかった。 否定しないふたりに、補佐官ディアの形のいい眉がぴくぴくっと震えたような気がしたが……気のせいという事にしておこう。 「ともかく……何かこうなるこころあたりはないのですか、ゼフェル、アンジェリーク?」 「そんなもん、あったらこんなトコに来やしねぇ!」 「……まったく、分からないですぅ」 かっかするゼフェルに半泣きになるアンジェリーク。 しばらく考え込んだディアは、頬に手を当てて、深いため息をついた。 「突然若返る薬、ですか……わたくしに心当たりはなくはないですが、まさか、アンジェリークがあれを口にするなんて、考えられませんものね……」 意味深長な言葉に思われた。 「それは何だ!?」 「それはなんです!?」 2人同時の言葉に、ディアは深い溜息をついた。 「ええ、けれど、あれは門外不出のお薬ですから……」 「だから、それは何だって!」 ばんっ、とテーブルを叩くゼフェルの剣幕にほううっと更に深い溜息をついたディアは、しぶしぶ、という呈で口を開いた。 「そう、あれは随分昔、陛下とわたくしが女王候補だった頃ですから宇宙歴にしてみれば○○○年前の事でしょうか……」 (おい、3桁だぜ、3桁! まさかまさかとは思ってたが、こいつってすっげぇ……) (ぜふぇるぅ、しつれいよぅ! だって、ディアさま、おとしのわりにぜんぜんおわかくみえるものぅ) (おめぇだって、容赦ねーじゃん) ふたりのひそひそ話の間に割ってはいるように、ふいに、補佐官の証でもある錫丈が倒れかかってきた。 「あら、ごめんなさいね。手がすべっちゃったわ」 にっこり笑うディアに、脂汗を禁じえないふたりだった。 それは、ともかく……。 「それで、その当時の陛下はとても好奇心が旺盛でお優しい方でしたの。執務の合間に垣間見た外界で、偶然、両親をなくして、幼い弟一人を抱えて途方にくれる少女を見つけて、ひどく同情しまして……そのお薬をお作りになったのですわ」 「ガキになる薬をか? なんで、また……」 「いいえ、子供になれるだけではなくて、いろいろなものになれるのですわ」 「は?」 「少女の名前はメ○モと申しましたかしら……実に上手く薬を使いこなしていましたけれど……少女が薬を必要としなくなった後、この薬のレシピは、前陛下の手によって、門外不出とされたのですわ。少女のように心の綺麗なものばかりとは限りませんし、ね」 ふうっと息をついた補佐官は、アンジェリークをじっと見て首をかしげた。 「でも、まさか、あの薬をあなたが手に入れられるわけがありませんし……」 じじぃっとアンジェリークを見てから俯いき、何事かを考え出した補佐官は、ふいに、ポツリと呟いた。 「赤いキャンディ、青いキャンディ、ご存知ありません?」 「えっ!?」 ふいに、何を言い出すのか戸惑うものの、かなり核心を突いた言葉に、ふたりは身を乗り出して、同時に叫んだ。 「知ってる!! それだ(よ)、それ!」 途端に、補佐官は、ため息をついて頭を抱えた。 「ああ、もしかして、昨日のお菓子にまぎれてたんですわね……」 呆れ顔に近い補佐官のリアクションだったが、彼女が何に対して呆れているのかは分からなかった。 「なんで、そんなモンがまぎれてたんだ?」 ゼフェルの極めて真っ当な質問に、ディアは応えず、ふたりの顔をじっと見て、にっこりと笑った。 「青いキャンディ一粒。これが元にもどる方法ですわ」 言って、ふたりをほっとさせ後、さらに笑顔に力をこめてい口を開いた。 「あれは大事なものですから、必ずっ! 使用後は返却してくださいね。もちろん、誰にも内密に」 なんだか、異様に力がこもっている。 やはり、門外不出の流出は、醜聞となるのだろうか。 頷きながらも、興味津々の表情を隠せないふたりに、ディアは多いかぶせるように続ける。 「わたくし、若い人たちの恋愛には、寛大ですから」 はっきりと脅しである。 さすが、宇宙を統べる女王陛下の片腕! ここまで言われては、ふたりとも硬く口をつぐんで、帰るしかなかった。 とりあえず、はっきりとした解決方法が見つかったわけだし。 「あおいキャンディひとつぶよね?」 ――青いキャンディ一粒。 門外不出のお薬は、アンジェリークの口の中で、甘い味を広げながら小さくなって、消えた。 しばらくふたりは、そのままじぃっと待ってみるが、なかなか彼女の肉体に変化は訪れない。 待つ事10分、20分、30分……そして1時間。 はああっと深い溜息をついたふたりは……がっくりと肩を落すよりなかった。 「ディアのやつ……」 低くうめいて、ぎりっと唇をかみ締めたゼフェルは、キャンディの瓶を取って、それを床に叩きつけようとするが……アンジェリークが小さな体でそれを押し留めた。 「だめっ! ディアさまが、いいかげんなこと、いうわけがないよぅ! あした、また、このキャンディもって、ディアさまのとこ、いけばいいよ、ね?」 いつも以上に大きく見える瞳を、うるうるっと潤ませたアンジェリークは……この上なくかわいかった――普段、感じるのとは別の感覚で……。 で、ゼフェル、脱力して、その場に座り込むしかなく……一緒のようにペタンと座り込んで首をかしげて覗き込んでくるアンジェリークの稚い様子に……更に脱力するのだった。 アンジェリークは、かわいい。 とぉっても、かわいい!! はなぢが出るくらいに、かわいい、がっ……今、彼女は、せいぜい6,7歳の幼女。 ――うがあああああっ!!! これじゃ、昨日の続きどころじゃねぇぇぇ!!!! アンジェリークの事は好きだ、愛してる、けど、けどっ……ガキ相手じゃ○○○(ピー)はできねぇぇぇ!!!! 若い少年の苦悩ここにあり。 うにゃ、と、更に首をかしげるアンジェリークを見て、欲情が抱けるわけがない。 ひたすら脱力するゼフェルは、苦悩する心を抑え込んで、くしゃりと髪をかきあげて、呟いた。 「もう寝る、か?」 こくん、と頷くアンジェリークの可愛らしさに、冷や汗がつっとこめかみを流れた。 ――ああ、可愛いすぎるぜっ、アンジェリークぅぅ!!! 拳を握り締めずにはいられなかった。 とりあえず、穏やかな眠りについたふたり。 けれど……アンジェリークは、ゼフェルがどうにか深い眠りに落ちていった後、こっそりと起き出して、等身大の鏡の前に立った。 戻る気配のない自分の肉体に、ふうっと小さく息を吐く。 ゼフェルが、かなり我慢をしているのが分かった。 同じベッドで一緒に眠る恋人たち……けれど……愛の営み(笑)は為される事なく……。 薄暗い部屋に浮かんで見えるキャンディの瓶に近づいて、再び青いキャンディを一粒取り出す。 もしかして、さっきは焦りすぎていて、噛んでしまったのがいけなかったのかもしれない。 無駄な足掻きだと分かってはいても、アンジェリークは……そのキャンディを再び口に含んだ。 ――青いキャンディ二粒。 ゆっくりと、小さくなるまで、時間をかけて舐めて、薄暗い部屋に数十分。 けれど……肉体には何の変化も現れない。 「……やっぱり、ダメ、なんだわ……」 半泣きにならずにはいられなかった。 でも、そこはそれ、芯の強いアンジェリークは、ぐぐっと拳を握り締め……………諦めた。 「深く考えても仕方ないか……なるようになるわよね、うん!」 芯が強いってっゆーより、単に能天気なだけのようだった。 翌朝、自分がとんでもない事態になっているなんて微塵も考えず、アンジェリークは眠りにつくことにした。 とんでもない事態……そう、アンジェリークにとって、辛い一日が、この時、決定されたのだった。 「うっ、うわあああっ!?」 大絶叫in鋼の守護聖寝室、再び。 昨日に続いて、今日まで!? 寝室に駆けつけた使用人たちは、けれど……今度は、すごすごと引き下がる事となった。 「え? ええ? 何? どうしたの?」 ゼフェルの隣で寝ぼけ眼をしてるのは……。 波打つ金糸の髪、澄んだグリーンの瞳とそこにおちる長い睫の影……象牙のように白い肌。ゼフェルのものであろう白いTシャツは、体にぴったりとはりつて、その豊かな肉体をより強調しているようだ。 寝起きのしどけない姿の美女が、主である鋼の守護聖に寄り添っているからには……見てみぬ振りを決め込んで、そそくさとそこを退場しないわけにはいかなかった。 「アンジェ、アンジェ、リーク??」 「え? なぁに? は、え?」 きょとんとするアンジェリーク。 が、なんとなく、異常に気付く。 「あ、れ」 驚愕をあらわにするゼフェルを見て、自分の視線の位置が戻っている事を確認し。 「あ!」 手もちゃんといつもの手だ。 「ふっ……えええええっ!? おっきぃ……」 で、体を見下ろして、自分の体の異常に気付いた。 胸が、でかかった! 思わず、自分の両手で鷲津つかんでみて……柔らかくて気持ちいい、なんて呟いて、その質感が夢でないのを実感する。 胸だけでなく、腰から脚のラインも、妙にまろやかなラインを描いていて……色っぽいと、自分でも思ってしまう。 ――愛しい男性に愛され続けた、妙齢の女性の肉体。 と、いうイメージが浮かんで、アンジェリークは顔を真っ赤にした。 ――後何年かしたら、私、こういうふうになれるのかなぁ……。ゼフェルと結婚して、子供が出来たりしたら……。 ――って、何、考えてんのぅ、私!! で、そうして、ひとりで色々と自分の世界に入り込んでいるうちに……気付けば、ゼフェルの手が肩に伸びてきていて……。 「アンジェリークぅぅ!!!」 がばっと、襲いかかられた。 「きゃあっ!?」 昨日から心の奥で熱くなり続けていた情欲が、ここに来て噴火したらしい。 10年前の姿ではロリコンでしかないが、10年後の姿ならば問題なし!!!! 野生の本能むきだしで、ゼフェルはアンジェリークに襲いかかった。 朝日が、眩しかった。 「今日もいい天気だ」 使用人のひとりが、自分の職場に戻りながら、抜けるような青空を見て呟いた。 ここは、聖殿の一画。限られたものしか入場を許可されない、神聖な場所。 そこに、ふたりの女性の姿があった。 「陛下! もしかして、わざとあのキャンディをまぎれ込ませませんでした? 陛下お手製のお菓子、聖殿の者が誰も食べたがらないからって……甘味系に無関心のゼフェルに押しつけた裏には、あのキャンディの事があったんですのね!?」 「ディアはどうして私に対してはそう怒りっぽいのかしら……。アンジェリークの事を知った上で、ちょっと試してみただけじゃないの。ちゃんと、効き目があるかどうか。そうか、でも、まだまだ甘かったわね。変化するのに一晩掛かるなんて」 「陛下!!」 「だって、ディア、考えてもごらんなさい。私たちが、元の世界に戻ったら、すでに過去の遺物なのよ? 年齢も年齢だし……。あのキャンディは、救いの神だとは思わない?」 「……」 「効き目の早さはこれから調整するとして……あのキャンディを食べるだけで、大人にも、子供にも……別の生き物にもなれるのよ? ね、ディア?」 「……次は、さしずめロザリアですか?」 「分かってるじゃない、ディア」 溜息をつく補佐官も、結局は、女王陛下の言葉の誘惑には勝てなかった。 「さぁて、ついでに今度は、健康第一、山菜ケーキなんてどうかしら? 人参やほうれん草があるなら、大丈夫よね」 ついでに、お菓子作りの腕前も披露したがる陛下に、ディアは冷や汗をながした。 ――宇宙の危機はどこに!? いや、そのまえに、自分の足元から固めるべきだろう、女王陛下。 ――聖地の危機、迫る! 聖地の平和は、しばらく、訪れが遅れそうである。 鋼の守護聖の館でも、ね。 「いやああん、ゼフェルぅぅ! も、やめてぇん!」 「こんな機会、滅多にねーんだ! キャンディも返さなきゃなんねーし、今日一日くらい、思う存分ヤらせろ!」 「はううっ……ゼフェルの、ばかあああっ!!!」 青いキャンディ、赤いキャンディのレシピが、あくまで、女王陛下に口伝でのみ伝えられる理由は、ここにあり。 青いキャンディ、赤いキャンディ。 聖地に混乱を残しつつ、そのレシピは、永遠に封印される事になるだろう。 〜END〜
カウンター8000をゲットしてくださいましたエユ様の <言い訳・反省> 13禁にしたかったのですが・・・・・この程度になってしまいました。 でも、一応あほ話しなんで、ご勘弁下さい。 某名作漫画からパクらせてもらっとりますが、 果して・・・・・・赤いキャンディで子供になるんだったか、自信がないです。 うろ覚えでこんなん書くなよ〜。と、自主突っ込み。 ちなみに、ご存知の方、教えてください(^^;)。 |